◎編集者コラム◎

『鉄道リドル』佐藤青南


tetsudo

 

 いすみ鉄道、ご存知でしょうか。千葉の南房総を走るローカル線です。車窓からののどかな風景や沿線に咲く花々、あとはムーミン列車が走ることでもおなじみです。

 本作でこの鉄道に乗車するのは、三人のイケメン(しかも、医大生とカリスマIT社長と世界的ヴァイオリニストだよ)。列車に乗るたびに、事件に巻き込まれる男たちのドタバタ旅を描く新感覚・鉄道ミステリーです。

 遠足に向かう幼稚園児の集団、地元の高校で起きた幽霊騒動、BL好きのご婦人は目の前で倒れて要介抱! ろくなことが起こらないけれど、三人は旅を続けます。なぜなら、彼らは鉄道オタク。医大生でファッション誌のスナップページにも登場しちゃうおしゃれさんの昌午と、タクシー代わりにヘリコプターを使うカリスマIT社長の巽は「乗り鉄」。世界中で公演を控えながら合間をぬって電車に乗るために帰国するヴァイオリニストの星川は「撮り鉄」。それぞれの旅の楽しみ方や、(ほんとは仲良くしたそうな)敵対心なども、鉄道の好きな方にもそうでない方にも共感していただける「読みどころ」のひとつ。

 著者の佐藤青南さんは「行動心理捜査官・楯岡絵麻」(宝島文庫)や「白バイガール」(実業之日本社文庫)などのシリーズや、書店員さんとタッグを組んで書き上げた『たぶん、出会わなければよかった嘘つきな君に』(祥伝社文庫)など、スリリングでスピード感のあるミステリーに定評のある作家さんです。本作も、鉄道モノだけにスピード感満点! 佐藤さんファンのみなさんにもおすすめします。

「きらら」での連載から二年弱。新たなストーリーを加え、全編ほぼ書き下ろしのような改稿を重ねていただいた結果、軽やかながらぐっと濃密な物語になりました。

 実際に現地を訪れ、列車に乗り、周辺を歩くという綿密な取材を重ねただけに、車窓からの風景や地元の美味しいものや名所などの描写はとてもリアル。きっと「いすみ鉄道に乗りたい」という気持ちになると思います。というかいま、わたしがなっています。

 わたしはまだいすみ鉄道に乗っていません。連載終了後、文庫化から引き継がせていただいた作品なので、取材はご一緒できませんでした。でも! そんなわたしがいま、いすみ鉄道に乗りたくなっているので、ぜひこの「行きたい」感をみなさまにも味わっていただきたいのです。文庫なので旅のお供にも最適なサイズです。

 いすみ鉄道に乗ったら、大多喜で降りて「とんかつ」を食べます。

 

ーー『鉄道リドル』担当者より

 

itsuwari

『鉄道リドル いすみ鉄道で妖精の森に迷いこむ』
佐藤青南