今月のイチオシ本 【ミステリー小説】宇田川拓也

『少女を殺す100の方法』
白井智之
光文社 本体1,700円+税

 いやはや『少女を殺す100の方法』とは、なんとも凄いタイトルをつけたものである。著者の白井智之は、惜しくも受賞は逃したものの横溝賞史上最大の問題作として話題を集めたデビュー作『人間の顔は食べづらい』以降一貫して、アンモラルな世界観、グロテスクな描写、奇矯な人物たち、ひとを食ったような黒いユーモアが混然としたなかに高度なロジックを構築する作風が特徴の若手本格ミステリ作家だ。本作は五つの物語を収めた著者初となる作品集で、一話につきおおよそ二十人の少女が死を迎えることから"100の方法"と題されている。  

 鍵の掛かった教室内で生徒二十人が殺された鏖殺事件について、意外な人物が"犯人"も愕然とする真相を解き明かす「少女教室」。なぜか巨大なミキサーに落とされ、絶体絶命の少女たちが繰り広げる決死のサバイバルと犯人探しを描いた「少女ミキサー」。無名の新人ミステリ作家が書いたアイドル志望の少女たちの死を巡る犯人当て小説に仕組まれた、ミステリの基本ルール"ノックスの十戒"を遵守しつつのアンフェアに仰け反る「『少女』殺人事件」。いずれもこれまでの作品同様、著者らしい異形の本格ミステリとして期待を裏切らないが、とくに注目すべきは残りの二編だ。

 消息を絶った男が娘に遺した凄惨極まりない内容のビデオレター「少女ビデオ 公開版」。八月十六日の朝になると少女たちが降り注ぐ集落が舞台の「少女が町に降ってくる」。やはりどちらも人間性をとことん否定するような絶望的で陰惨な描写や展開を多分に含んでいるのだが、これまでの作品と異なるのは、結末のシニカルなテイストを封印している点だ。

 どんなに歪で常人の価値観からは大きく外れていたとしても願わずにはいられない切なる情愛の念、地獄の底のような状況下に置かれても猛々しいほどに奮い立つ強靱な生命力が、ラストで力強くまっすぐに立ち上がる様には高揚を覚えてしまったほどである。もしかしたらこの一冊がターニングポイントとなって、今後著者の新たな魅力が大きく華開くのではないかと期待せずにはいられない。

 

(「STORY BOX」2018年3月号掲載)

(文/宇田川拓也)