今月のイチオシ本【歴史・時代小説】末國善己

『コルトM1847羽衣』
月村了衛
文藝春秋 本体1,700円+税

 月村了衛は、組織に切り捨てられた男の復讐を描く『コルトM1851残月』で大藪春彦賞を受賞した。物語に繋がりはないが、〈コルト〉シリーズの第二弾となる本書は、ノワールだった前作とは一転、正統派の伝奇小説となっている。

〈機龍警察〉シリーズのライザ・ラードナーや、『ガンルージュ』の秋来律子、渋矢美晴といった"戦闘美女"を生み出してきた著者だけに、「羽衣」の二つ名を持つ女侠客のお炎も実に魅力的に描かれている。六連発のコルトM1847ウォーカーをひっさげ敵と戦うお炎は、往年の任侠映画が好きなら、拳銃と小太刀が得意な〈緋牡丹博徒〉シリーズのヒロイン矢野竜子と重なるかもしれない。

 物語は単純明解。佐渡に乗り込んだお炎が、姿を消した恋人の薩摩藩士・青峰信三郎を救い出すため、謎の邪教集団「オドロ様」と凄まじい戦いを始める。

 お炎が、女軽業師のおみん、支援してくれる豪商が送ってくれた裏仕事のプロたちを味方にすれば、「オドロ様」は実質的に支配している金山の労働者と奉行所の武士を動員してお炎を殺しにかかる。さらに謎めいた第三勢力の存在も明らかになり、先の読めない展開が続く。

 お炎のガンファイトから迷路のような鉱山内での追走劇、幾つもの集団が様々な武器を使って乱戦を繰り広げるクライマックスまで多彩なアクションが連続するのに加え、「オドロ様」の正体や信三郎との関係を調べる謎解き、登場人物の過去の因縁、お炎と信三郎の恋の行方もからむので、まさに娯楽時代小説のあらゆる要素が詰め込まれている。六つの弾倉に一つずつ火薬と弾丸を入れていくパーカッション式リボルバーのM1847の弾込めには時間がかかり、それがサスペンスを盛り上げているのも間違いない。

 物語が進むと、幕府の財政を支えている佐渡金山が、労働者を使い捨てにし、「オドロ様」が厳しい生活を送る労働者の怨念を糧に成長したことも分かってくる。山田風太郎や半村良らは伝奇的なアイディアの中に社会批判を織り込んでいたが、現代と重なる労働問題を描いた本作も、その系譜に属しているのである。

 

(「STORY BOX」2018年4月号掲載)

(文/末國善己)