今月のイチオシ本【警察小説】

『紅のアンデッド 法医昆虫学捜査官』
川瀬七緒
講談社 本体1,500円+税

 法医昆虫学捜査官・赤堀涼子の活躍を描く傑作シリーズの第六作である。

 警視庁の新たな試みとして専門学者を捜査に加えることとなり、採用されたのが、犯罪現場にいた昆虫の分析研究を通じて真相に迫る法医昆虫学者の赤堀。第五作『潮騒のアニマ』まではあくまで試験採用だったが、今回、科学捜査研究所の再編成により犯罪心理学、技術開発部と併せて捜査分析支援センターが設立され、赤堀も晴れて正式採用となった。

 ドラマでいえば、シーズン2に突入したわけで、これからこのシリーズを読む人にはまさに絶好の機会。もちろん既作が未読でも、ネタ割れの心配なしだ。

 六月頭、杉並区荻窪の住宅街の一軒家で左手小指が三本と大量の血痕、そして派手に争ったような形跡が発見される。警視庁捜査一課の岩楯祐也警部補と相棒の鰐川宗吾が捜査に当たるが、死体は発見されておらず、一ヶ月がたっても、殺人なのか強盗なのかすらもわかっていなかった。被害者と見られるのは家主の遠山夫妻と謎の訪問者。だがその客の素性はもとより、遠山夫妻の素顔さえ判然としないありさまだったが、岩楯たちは地道な聞き込みを続けていた。

 どうやら遠山にはDV疑惑があり、近隣との付き合いにも問題があったようだ。やがて隣家の老婆の証言から、遠山が神奈川県の病院でアルコール依存の治療を受けていたことがわかる。その頃、赤堀も三本の指の損傷具合が微妙に違うことに不審をおぼえていたが、その理由を突き止められないでいた……。

 序盤はやや重いものの、やがて赤堀の同僚のプロファイラー・広澤春美が二〇年以上前にも似た手口の未解決事件があることを突き止め、話がうねり出す。今までは赤堀と岩楯たちがタッグを組んできたが、本書の目玉は彼らに新たな仲間が出来ること。広澤と技術開発担当の波多野光晴も赤堀に劣らぬ個性派だが、強い味方になりそうだ。むろん赤堀自身の秘密が明かされたり、食にまつわる黒い内幕話がちりばめられるなど、本シリーズ独自のサービスもてんこ盛り。

 昆虫が苦手な人もぜひチャレンジを。

 

〈「STORY BOX」2018年7月号掲載〉

(文/香山二三郎)