◎編集者コラム◎

『死ぬがよく候〈二〉 影』坂岡 真


死ぬがよく候2編集中
虚空に向かって剣を揮う主人公。一体なにを斬ろうとしているのか? 読んでいただければ分かります。閃く、高杉千明先生の絵筆!


 お待たせしました! 『死ぬがよく候』シリーズ、2か月連続刊行第2弾『影』が、ついに発売です。

 先月発売された第1弾の『月』は、おかげさまで発売直後に大重版が決定。ファンのみなさまに心より感謝申し上げます。

 さて、この絶好調シリーズを支えている主人公・伊坂八郎兵衛は、一体どんな人物なのかと申しますと、人情に厚く、義理に堅い、弱きを助け、強きを挫く、ど真ん中ストレート、いわゆる正義の味方です。一、二巻を読む限り、どちらかといえば、飛び込み型ではなく、巻き込まれ型の好男子といえましょう。

 映画「ダイ・ハード」「コラテラル」などを観てからというもの、かねがね「情が強い男は、巻き込まれ型の人生を送るけれど、異性にモテる」と想像していたのですが、八郎兵衛はまさにドンピシャ。

 町や街道を普通に歩いているだけで、やたらめったらチンピラに絡まれるわ、ゴロツキに眼を飛ばされるわで、疫病神に憑りつかれているとしか思えません。

 そして、どういうわけか、見目麗しい女性がたくさん寄ってきます。しかも、難儀を抱える方ばかり!?

 不思議と女性の心をとらえて離さない八郎兵衛、その気になる風貌は、角ばった顎に、一本に繋がった眉。太い鷲鼻と、への字に曲がった口などと、これがまた全然モテそうにない。とうていイケメンとはいいがたいのに、モテまくるそのココロとは──?

 おそらくきっと、八郎兵衛が常に赤心を抱いているからなのでしょう。

 黒く染まった悪人はその赤心が憎い、純白であり続ける女性はその赤心が愛おしい。

 でもしかし、なぜだか、うまく愛を育てられない気がします。ひょっとしたら、本命の女性とは結ばれない運命をもつのが、この手の主人公なのかもしれません。

 そんな切ない八郎兵衛は、さる事情で江戸を出奔。北国街道を下り、加賀金沢に入ると、武家の妻女から、「主人の利き腕を折ってほしい」と頭を下げられます。

 御前試合を控えている、小太刀の達人である夫を、「絶対に勝たせるわけにはいかない」と、目の前で涙を拭われながら……。

 いくら色気の匂い立つような女性の頼みでも、見も知らない他人の腕を折るなんて、なかなかできるものではありませんが、さすがは江戸を荒らした盗賊から「南町の虎」と恐れられた元隠密廻り同心。一目では解決困難とも思える依頼を見事落着に導きます。

 幸か不幸か、ただならぬ星を背負っている主人公の人情裁きと立身流の剣捌きを、ぜひご覧ください。決して損はさせませんから。

──『死ぬがよく候〈二〉 影』担当者より