◎編集者コラム◎ 『脱藩さむらい 切り花』金子成人

◎編集者コラム◎

『脱藩さむらい 切り花』金子成人


脱藩侍

 累計四十万部を突破した金子成人さんの大人気シリーズ「付添い屋・六平太」とは打って変わって、ハードボイルドな新シリーズ「脱藩さむらい」も、この第四巻『脱藩さむらい 切り花』でついに最終巻となりました。読み続けて下さった読者の皆様には、厚く御礼申し上げます。

 舞台は石見国浜岡。藩奉行所の同心頭・香坂又十郎と妻・万寿栄の平穏な暮らしはある日を境に一変する。謀反を企て脱藩した義弟・兵藤数馬を打てと藩命が下ったのだ。抗うことなど許されず、断腸の思いで数馬を斬った又十郎。これにてお役御免になるかと思いきや、藩の身勝手な事情で脱藩扱いとされてしまう。さらに江戸屋敷の目付・嶋尾久作からの汚れ仕事を押し付けれらる日々──。故郷に戻りたい、妻に会いたいと願う又十郎であったが、無情にも次々と困難が立ちはだかるのであった。

 最終巻でもある今作は、今まで明かされることのなかった浜岡藩の陰謀や、又十郎最後の戦いが描かれ、最後までハラハラドキドキする展開に! 妻を想い、故郷に戻るため一人戦う又十郎は、まさに理想の旦那像! 一体どこにこんな人がいるのですか?と現実逃避したくなるほどの男っぷりも、第四巻ともなれば一段と磨きがかかります!

 そしてなんと、帯には歴史学者であり、静岡大学名誉教授の小和田哲男先生が推薦コメントを掲載させていただきました! NHK大河ドラマ「麒麟がくる」の時代考証をされるなど大活躍の小和田先生。ご多忙の中、ありがとうございました!

 辛く悲しい一人の男の運命が描かれる中にも、夫婦の愛や、互いを助け合う江戸の人々、相手を想う人間の暖かさが隅々まであふれた一冊となっております。大河時代小説感涙のクライマックス! 又十郎最後の戦いを見守りいただけたらうれしいです。

 ついこの間、金子成人さんから次回作「付添い屋・六平太」のプロットが届き、早速打合せをしましょう!とスケージュールを組むも、東京アラート発動。身の安全が第一ということで、最近大活躍のZoomを使い、序盤ソワソワしつつも「なんとかなるものですね~」と言いつつ無事打合せを終えました。金子さんは変わらずにこやかでお優しく、且つダンディで、画面ごしでしたが元気なご様子でいらっしゃいました。次回作、「付添い屋・六平太」の新刊もどうぞ、お楽しみに。

──『脱藩さむらい 切り花』担当者より

脱藩さむらい切り花

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