武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第10回「特別の作り方」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
今回は、名著『星の王子さま』のお話。
「特別になりたい」という自意識が、
この作品のおかげで変わっていって……。

  

 ――おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)

 

 初めてこの文章に触れたのは、確か小学生の高学年の頃だった。フランス人飛行士であり作家でもあったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの名作小説『星の王子さま』の一節だ。

 今回はこの『星の王子さま』にまつわる思い出話について書きたいと思う。

 

 小学生の時、私には学校の図書室に仲の良い司書の先生がいた。面白い本を勧めてくれたり、新しい本が入荷したら教えてくれたり。「先生が好きな本ってなんなん?」そう聞いた私に、「『星の王子さま』かなぁ」と先生は答えた。大人で物知りな先生が好きだというのだから、よっぽどすごい本なのだろう。そう思った私は早速その本を借りることにした。

『星の王子様』は1943年にアメリカで出版された。挿絵はサン=テグジュペリ自身が描いたもので、素朴というか、なんとも味のある絵をしている。

 

 あらすじはこんな感じだ。

 飛行士である「ぼく」は、不幸にもサハラ砂漠に不時着してしまう。一週間分の水しかなく、周囲には人の気配もない。不安でいっぱいだった「ぼく」は、翌日に不思議な少年と出会う。彼はとある小惑星からやって来た王子さまで、地球に辿り着くまでに様々な星を巡っていた。

「ぼく」が飛行機修理に勤しむ傍らで、王子さまはたくさんのことを話してくれた。

 王子さまの住んでいた小さな星には、一輪の赤いバラと、星を割いてしまうほど巨大になるバオバブの木の芽があった。王子さまは赤いバラを大事にお世話していたのだが、バラと喧嘩してしまい、他の星を見てまわる旅に出ることにしたのだ。他の星には変わった大人が住んでおり、王子さまは彼らと様々な話をした。そして、七番目にやって来たのが地球だった。


「響け!ユーフォニアム」を語る

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「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『愛されなくても別に』がある。

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