武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第18回「修学旅行リピーター」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
京都出身の著者が京都取材。
修学旅行の主要ルートを頼りに
有名観光地に、いざ参らん!

 先日、母校で講演会を行うことになったため、宇治の実家に帰った。コロナの影響もあり、京都に行ったのは随分と久しぶりだった。

 今回の帰省の私の目的は二つ! 一つは勿論、講演会。そしてもう一つは緊急事態宣言中に出来なかった京都取材を行うことだった。実は去年ぐらいから京都を舞台にした小説を考えていたのだけれど、行ったことがない場所が多すぎて色々と四苦八苦していたのだ。よくよく考えると、「響け!ユーフォニアム」シリーズも漫画「花は咲く、修羅の如く」も、どちらも京都を舞台にしている。これから書く新作小説の為に多めに京都の観光地を取材しておけば、今後他のシリーズ作品を書く時にも資料が役に立つはず! そう考えた私は、早速京都の有名な観光地をピックアップし始めた。

 今回の私の取材テーマは「京都に来る修学旅行生はどこに行く?」だった。前にもこのエッセイで書いたが、京都府民は修学旅行で京都に行かない! なので全国からやって来る修学旅行生たちがどこに行くのかさっぱり見当がつかないのだ。仕方がないので、検索エンジンで「京都 修学旅行 ルート」で検索を掛けてみた。するとさすが観光都市なだけあり、たくさんのモデルコースが表示された。

 候補地はどこがいいかな~と色々検索していると、清水寺、北野天満宮、下鴨神社、金閣寺、二条城、天龍時、平安神宮、伏見稲荷大社、八坂神社……と無限に湧いて来るのである。おいおいおい、京都って凄いな!? と、この年になって自分が如何に恵まれた環境で育ったかを知る。子供の頃は当たり前すぎてありがたみが分からなかったな……。小学生の時に遠足で行った奈良の東大寺のことはしっかり覚えているのに。

 今回、私に許された取材時間は三日間。その内の一日は講演会があったので、実質二日半くらいしかない。この制限時間内で無理のない修学旅行プランを立てる! と、気持ちは既に引率の学校の先生である。連れて行くのは生徒ではなく自分なのに、それでもかなりワクワクした。

 

 そしてついに、移動時間や開館時間の兼ね合いなどを計算した完璧なルートが完成した。全てをここに書くと未来の小説のネタバレになるためある程度は伏せるが、最終日に伏見稲荷大社に登ることだけはマストで決めていた。私はこれまで、伏見稲荷大社には何度も行ったことがある。しかしながら、一番上まで登ったことはなかったのだ。

 伏見稲荷大社は言わずと知れた大人気観光スポットだ。京都市伏見区にある神社で、稲荷山の麓に本殿がある。周囲には土産物屋や屋台なんかもあって、如何にも観光地という雰囲気を漂わせている。有名なのはなんといってもずらりと並ぶ千本鳥居だろう。真っ赤な鳥居が隙間なく山に並ぶ光景は圧巻である。

 この伏見稲荷大社、拝観時間を調べると二十四時間と書かれている。つまり、夜でも見て回ることが出来るのだ。その時点でなんとなく他の神社とは違う気配を感じるのだが、気軽な気持ちで本殿を見に行き、そのまま鳥居を目印に石階段を歩いていくととんでもない事実に気付く。歩いても歩いても、道が延々と続いているのである! 


「響け!ユーフォニアム」を語る

*武田綾乃の新刊情報*
\第42回吉川英治文学新人賞受賞/
愛されなくても別に『愛されなくても別に』
(講談社)

 
どうぞ愛をお叫びください『どうぞ愛をお叫びください』
(新潮社)

刊行記念インタビューはこちら
 

「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。2021年『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』などがある。

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