武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第22回「友達百人できないな~」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
人間関係って難しい。
昔から人見知りだったという
著者にとって「友達」とは?

 最近、耳から離れない歌がある。「一年生になったら~、一年生になったら~」というあの歌だ。中身をざっくりと説明すると、「小学一年生になったら友達が百人できるかな~。できたらアレコレやりたいな~」という妄想を歌った童謡で、子供の頃はよく学校の授業なんかで歌わされた。

 この歌の影響なのか、幼い頃は友達って百人くらい作らないといけないのか!? と思い込んでいた。しかし冷静になって考えると、この百人というのは「たくさん」という言葉の比喩だろう。友達たくさんできるかな~、と小学生に入る前の子供が想像して歌っているのだ。なんて可愛い歌なのだろうか! しかし捻くれた小学生だった私は「そんなに簡単に友達が作れるわけあるか、ケッ」などと思っていた。昔から、友達作りは得意な方ではない。かなりの人見知りだし、緊張しいだ。

 しかし、小学四年生の時に転校することが決まり、そんな悠長なことは言ってられなくなった。なんせ、ゼロからのスタートだ。誰がどんな人間かも分からないまま、新しい人間関係を構築せねばならない。これは勇気を出すしかない! と思い切って近くの席の子に話し掛けると、意外と皆気さくに話してくれた。なるほど。最初から相手を毛嫌いしている人はあまりいないのかもな、などと思ったりした。

 だけどこれも難しい問題で、小学生の時だったからギリギリ成立したのかもしれない。中学生、高校生になるにつれて人間関係は複雑になるし、仲良くなる基準も変わる。大勢の人とずーっと一緒にいるのは苦しいし、その中で順位をつけられたりしたらさらに息苦しいのは当たり前だ。

 

 思い返すと、学校が『楽しい』という感情だけで構成されていたことなんて一日たりとも無かった。勿論、楽しいことも多い。だけどそれ以上に、苦しいことだって多い。ストレスの根源は人間関係だと思う。でも、苦しさを紛らわせてくれるものも、人間関係だったりするんだよな~。

 特に、私は小学校・中学校は普通の地元の公立校だったので、人間のごった煮という感じだった。色々なジャンルの人間がいて、色々な考え方を持つ人間がいて。そりゃあ上手くやるなんて難しいよ、と今となっては思うが、学生時代はもっと鋭い感覚を持っていたように思う。なんというか……ここで生き残るんだ、という感覚。学校に通っていたならどの子も多かれ少なかれ、感じたことがあるだろう。皆が自分の立ち位置の確保に必死だったし、狭い教室の中にはそれぞれの生存戦略がひしめいていた。

 私が持っていた戦略の中で最も効果的だったのは、やはり部活だ。小学生の時は金管バンド部の友達と、中学生の時は吹奏楽部の友達と一緒にいることが多かった。ウチの中学の吹奏楽部はかなり大所帯で部員が百名を超えていたので、クラス替えをしても必ず何人かは仲のいい友達と同じクラスになった。顔見知りが必ずクラスにいるというのは、子供心に心強かった。

 中学時代の吹奏楽部の低音パートのメンバーはこの年になっても親交がある。チューバ、ユーフォ、コントラバスの、私を含めて同じ学年だった五人だ。コロナ前までは一年に一度会うのが恒例となっていて、大体は飲み会だった。なんだかんだ縁が続いているから、『響け!ユーフォニアム』の主人公である久美子たちも大人になっても友達であり続けるんだろうな、と漠然と思っている。

 


「響け!ユーフォニアム」を語る

*武田綾乃の新刊情報*
\第42回吉川英治文学新人賞受賞/
愛されなくても別に『愛されなくても別に』
(講談社)

 
どうぞ愛をお叫びください『どうぞ愛をお叫びください』
(新潮社)

刊行記念インタビューはこちら
 

「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。2021年『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』などがある。

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