武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第23回「大人な時間の使い方」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
二十三歳で出合った、
「大人になったなぁ」と
体感する趣味。それは……

 実弥島さんといえばテイルズ オブ ジ アビス! このゲームの発売は二〇〇五年で、私が中学生の時だった。主人公のルークの「俺は悪くねぇっ!」という有名な台詞が一部の生徒の間で流行し、「テストで赤点だったんだって?」「俺は悪くねぇっ!」のような会話が度々聞かれた。また、ゲームの主題歌であったBUMP OF CHIKINの『カルマ』がめちゃくちゃ流行った。ゲームにあまり興味のない人でもアビスのことはぼんやりと認識していたので、当時の若者への影響力は非常に高かったのだろう。少なくとも、私の周囲ではそうだった。

 そういうわけで、初めて実弥島さんとお会いする時は非常に緊張していた。そしてその会場となったのは、新宿にあるパークハイアット東京だった。

 初めてピークラウンジに足を踏み入れた時、世の中にはこんなにも素敵な場所があるんだ……! と感動した。ホテルの上階にあるにもかかわらず緑が豊かで、まるで屋内庭園のような印象を受けた。ここのアフタヌーンティーの特徴はフィンガーフードが出て来るところで、ティースタンドに載った品を食べている間もスタッフの方が定期的にちょっとした食べ物を運んできてくれる。エンドレス美味状態なのである。本当に至れり尽くせりで、昔の貴族はこういう生活をしてたのかな……と思いを馳せたりした。

 そうした美味しい食事のおかげか、実弥島さんとのお話は非常に和やかに進んだ。窓から見える新宿の素敵な街並み、楽しい会話、穏やかに流れる時間……。これが大人の嗜みってやつか! と二十三歳の武田は思った。なんとスマートな時間の使い方だろうか。

 

 それ以降、私はすっかりアフタヌーンティーにハマってしまったのである。そこら辺のカフェでお茶をするのに比べると高くつくが、夜に居酒屋で友達と飲むよりは安い。しかも昼間に集合して夕方前には解散するので、翌日に疲れが残らない。

 大人になると各人の予定の組み方も千差万別なので、短い時間で楽しい気分を共有できる空間というのはありがたい。量より質、という表現は少し違うかもしれないが、学生時代のように長い時間を友人と共に過ごすのが難しくなった分、一瞬一瞬を大切に過ごしたいと思うようになった。

 ここ数年はコロナのせいで友人とお茶会をする機会がめっきり減ってしまったが、それでも最近になってようやく少人数の友人とであればお茶が出来るようになってきた。美味しいものを皆で食べられるような日常が早く戻ってきてほしい。

 


「響け!ユーフォニアム」を語る

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刊行記念インタビューはこちら
 

「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。2021年『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』などがある。

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