武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第26回「おめめの天敵」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
視力が下がって以来
眼鏡を掛け続けてきた著者、
コンタクトレンズに再挑戦!?

 コンタクトレンズがこわい。

 これは非常に切実な悩みである。コンタクトレンズがとにかくこわいのだ。だって、目を触ってる! コンタクトレンズをつけるという行為は、先端恐怖症の私にはとてもじゃないが耐え難いものなのである。

 正直に言うと、私はコンタクトレンズから逃げて来た。大学の卒業式も裸眼。雑誌の取材も裸眼。出版社の受賞パーティーですら、裸眼。両目0.2のぼやけた視力で、これまで大事な場に参加してきた。

 しかしながら、そろそろ私もコンタクトレンズから逃げられなくなってきた。というのも、結婚式があるからだ。流石にゲストの顔を識別できないのはまずい……。というわけでこれを書いている今日、私は泣く泣く眼科に行ってコンタクトレンズの処方箋をもらいに行ったのである。

 

 私とコンタクトレンズの直接の出合いは小学三年生の頃までさかのぼる。いつも眼鏡を掛けていた友人が、急にコンタクトデビューをしたのだ。「怖くなかった?」と聞いた私に、「慣れたら全然平気!」と彼女は心強い台詞を言った。だけどその二週間後にコンタクトレンズをつけたまま眠ってしまったらしく、レンズが眼球の裏に入ったー! と大騒ぎしていた。

 眼球の裏にコンタクトレンズが入るということは、私の目のどこかにレンズが入るポケットがあるのか!? そう思って今までずっと怯えていたのだが、このエッセイを書くためにネットで調べたところ、どうやらそのような事実はないらしい。子供の頃から信じていたのだが、単なる都市伝説だったようだ。

 

 さて、小学生の頃の私といえば、両目の視力は1.5。眼鏡なんてものとは無縁で、むしろ眼鏡を掛けている人を羨ましく思っていた。だって、眼鏡ってカッコイイ! 掛けていると頭が良さそうに見えるし、何本かフレームを買っておけばファッションの一部として扱うこともできる。自分の意思で選択できる身体的パーツ、それが私にとっての眼鏡だった。

 しかし中学生になったあたりから、とんでもないスピードで視力が落ち始めた。原因は明らかだ。――パソコンである。

 ゲームボーイや64を何時間やろうとも全く問題なかった視力が、パソコンを使い始めたあたりからみるみるうちに低下した。

 母親は慌てて私を眼鏡屋さんへ連れて行った。「コンタクトレンズか眼鏡かどっちがいい?」と聞かれ、私は速攻で眼鏡と答えた。それから大人になった今に至るまで、ずっと眼鏡を掛けている。私は眼鏡が好きなのだ。


「響け!ユーフォニアム」を語る

*武田綾乃の新刊情報*
 
\注目の新刊!/
世界が青くなったら
『世界が青くなったら』
(文藝春秋)

 
\第42回吉川英治文学新人賞受賞/
愛されなくても別に『愛されなくても別に』
(講談社)

 
どうぞ愛をお叫びください『どうぞ愛をお叫びください』
(新潮社)

刊行記念インタビューはこちら
 

「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。2021年『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』などがある。

千葉ともこさん『戴天』
辻堂ゆめ「辻堂ホームズ子育て事件簿」第16回