武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第27回「おなかは急に痛くなるもの」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
昔からお腹が丈夫。
でも、胃腸炎にはなるときはなる!
大抵心当たりがあるもので…。

 二〇二二年は武田綾乃デビュー史上最も忙しい年で、色んなジャンルの仕事がとにかくめちゃくちゃ入っている(大変ありがたいことである)。私もあたふたしているがマネージャーもあたふたしていて、二人でどうしたもんかとスケジュール表と睨めっこしていた。そこにプライベートでのイベントが重なった(結婚式の準備)のと、夏がきて外気温が急上昇したことのトリプルパンチでダウンした。

 ベッドで寝ていると熱は一日で引いたのだが、とにかくずーーーっとお腹が痛い。病院に行くのも一苦労で、できるだけ胃を刺激しないように水を飲むことも我慢していた。

 ようやく診断してもらうと、お医者さんに「コロナのことばかり皆さん気にされますが、最近はお腹の風邪も流行ってるんですよ」と言われた。そりゃ他の病気だって当然流行ってるよな……としみじみ思った。

 待合スペースには私と同じように腹痛で苦しんでいる様子の子供がいて、目が合うと何故か力強く頷かれた。同志だと思われたのかもしれない。この子が物心ついた時には皆がマスクすることが当たり前になっていたのだと思うと、早くコロナが落ち着いてくれることを願わずにはいられなかった。

 

 その後、三日ほど寝てすっかり元気になった私は、早速出前でカツ丼を注文した。揚げ物は身体に悪いと頭では分かっている。……が、脂質で構成された食べ物というものはなんでこんなに美味しいのか。美味しいものを我慢する人生を送るくらいなら太ってもいい! をモットーに生きているので、結局サイドメニューでフライドポテトもつけた。カロリーを感じられて最高だった。

 

 若い頃は手あたり次第に仕事を入れてもプライベートの時間を犠牲にしたらなんとかなった。しかしアラサーになると、そうした無理がきかなくなってくる。

 頑張ってくれている自分の身体をもう少し労わってやらなければ。そう思い、駅前にあるスタイリッシュな外観のお店でグリーンスムージーを買って飲んだ。草原を濾過したみたいな、野生的な味だった。

 口の中いっぱいに広がる草の風味を噛み締めながら、私は不健康になってもいいからコーラを飲もうと心に決めた。

 


「響け!ユーフォニアム」を語る

*武田綾乃の新刊情報*
 
\注目の新刊!/
世界が青くなったら
『世界が青くなったら』
(文藝春秋)

 
\第42回吉川英治文学新人賞受賞/
愛されなくても別に『愛されなくても別に』
(講談社)

 
どうぞ愛をお叫びください『どうぞ愛をお叫びください』
(新潮社)

刊行記念インタビューはこちら
 

「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。2021年『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』などがある。

週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド vol.53 吉見書店竜南店 柳下博幸さん
源流の人 第24回 ◇ オカズデザイン (料理とグラフィックデザインのチーム)