武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第3回「金閣寺コンプレックス」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第3回「金閣寺コンプレックス」
金閣寺に行ったことがない!?
地元出身の著者による、
京都観光地案内!

〈金閣寺〉

 生まれてから今まで、金閣寺に行ったことがない。パンフレットの写真は何度も見たことがあるし、教科書に載っていた足利義満の顔を忘れたことはないし、三島由紀夫の書いた小説を繰り返し読む学生時代を送っていた。それでも、私は金閣寺に行ったことがない。金閣寺の正式名称が鹿苑寺というのだとも、このエッセイを書いている時に知った。

 そもそもどうして私は金閣寺に行ったことがないのか。それを自分なりに分析すると、いつでも行けるという傲慢さが招いた事態なのではないかと思う。私の出身地は京都府の宇治市だ。京都は縦に長い形をしていて、丹後・丹波・京都市・山城の四つに区分される。宇治市は京都府の下の方にある、山城地域にある。京都市の中心部である四条にも京阪電車を使えば三十分程で着く。

 京都といえば修学旅行の定番だが、当然のことながら京都府民は修学旅行で京都には行かない。小学生の頃の遠足の行き先も、京都ではなく奈良だった。となると、京都にある定番の観光地に行く機会はほとんどなくなる。観光客でめちゃくちゃ混んでそう~、という印象が強すぎて、休日に遊びに行くのもなんとなく敬遠してしまっていた。だけど関西以外の人と話すと「京都に住んでるの? 私も前に旅行で金閣寺に行ったのよ」なんて言われてしまう。話の腰を折るのもなんだかなぁと思って、私も話を合わせて相槌を打つ。「良いところですよね」なんて知ったかぶりをしながらも、心のどこかでは謎の焦りを感じている。この状態を、私は勝手に『金閣寺コンプレックス』と呼んでいた。

 だが、そんな私にも転機が訪れる。大学進学だ。私が大学で出会った友人たちは、関西出身でない子も多かった。特に名古屋出身のTちゃんは京都が大好きで、休日になると様々な場所を探索していた。私はそれについて行く形で京都の観光地に足を運ぶこととなった。

次回更新予定日
2020-09-30

「響け!ユーフォニアム」を語る

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「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)
1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』がある。
本の妖精 夫久山徳三郎 Book.73
佐藤 優「危機の読書」〈第3回〉私はいかに危機を乗り越えたか