武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第30回「ゼクシィって意外と実物を見たことない」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
結婚式の準備。
いざやってみると、
初めて知ることばかりで…。

 九月某日、結婚式をした。

 入籍自体は昨年の十二月末だったのだが、コロナの状況がどうなるか分からなかったのと仕事のスケジュールに鑑み、少し間を空けて九月に設定した。ところが、いざ蓋を開けてみると2022年の夏はコロナが大流行。間を空けた意味とは……!(それでも九月にはある程度落ち着いてくれたので良かったが)

 

 正直なことをいうと、昔からウエディングドレスに憧れるタイプではなかった。結婚式はあげなくてもいいと思っていたし、もしもいつか結婚したらウエディングフォトか、もしくはこぢんまりと親族だけで食事会程度のものでいいなと思っていた。

 しかしいざ結婚してみると、相手は結婚式をしたいタイプだった。私は結婚式をしなくてもいいと思ってはいたが、したくないわけではなかったので、「小説のネタにもなりそうだし、いっちょやるか!」と早速結婚式場を探しに行くことにした。

 私は一度やると決めたらめちゃくちゃ張り切るタイプなのである。

 

 ところで皆さんは、ゼクシィを買ったことはあるだろうか。一説によると、結婚したいと相手に匂わせる時に使う伝説のアイテム。それがゼクシィである。

 結婚=ゼクシィという図式が一体いつから我々の意識に刷り込まれているのかは分からないが、少なくとも私は本屋さんでゼクシィを見たことがなかった。多分、探したことがなかったせいだ。

 プロポーズの後、すぐさま検索した言葉が『ゼクシィ』だった。ネットによると、コンビニで売られているらしい。えぇ!? そんな身近なところに! と思い、家の裏のコンビニに行くと、確かにゼクシィが置かれていた。その表紙が放つキラキラウフフなハッピーオーラは他の本に紛れていてもすぐに識別できた。

 驚くべきはその分厚さである。辞書くらいの厚みがあり、完全に鈍器だ。さらにいうと、値段が300円だった。この厚さで!? オマケもついているのに!!?? 一体何がどうなってるんだ……。

 家に帰って早速中を開くと、中には関東の結婚式場の情報がぎっしりと詰まっていた。婚約指輪に結婚指輪に結婚式場に新婚旅行。ハッピーワードが目白押しの紹介ページ、さらには結婚が決まってからの行動予定表、エトセトラ、エトセトラ。

 分かった! ゼクシィって結婚が決まってからのチュートリアルブックなんだ! とそこで気付いた。世の中の人々が一体どこで入籍に至るまでの道のりを学んだのか謎だったのだが、その全てはゼクシィに詰まってたんだな。は~、納得!

 確かに、両家顔合わせなんて言葉、独身の時には使うことを想像したことすらなかった。経験しないと分からないことってあるもんだ。とても便利だったので、もしもこの先結婚の予定がある人がいたら一冊はゼクシィを買ってみることをオススメする。

 


「響け!ユーフォニアム」を語る

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刊行記念インタビューはこちら
 

「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。2021年『愛されなくても別に』で第42回吉川英治文学新人賞を受賞。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『世界が青くなったら』などがある。

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