武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第6回「憧れの電気ブラン」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
森見作品に登場する酒、
「偽電気ブラン」に
魅せられた著者が、浅草へ!

 偽電気ブランをご存じだろうか。森見登美彦さんの小説『夜は短し歩けよ乙女』に登場する架空の酒である。私はそもそも電気ブランを知らなかったので、初めて小説を読んだ時には偽のつかない電気ブランも架空の飲み物だと勘違いをしていた。そしてその後、なにやら電気ブランという酒は本当に存在するらしいと知り、何だかよく分からないが美味しそう! と未知の飲み物への期待に胸を膨らませていた。高校生の頃の話だ。それから実際に電気ブランを口にするまでに、五年ほどの月日を要した。今回はそれにまつわる思い出話について書くことにする。

 

 私が大学生の頃、京都の大学に通う文学部学生の大半は森見登美彦さんの影響を受けていた。……多分。少なくとも周りの人間は非常に影響を受けており、鞍馬天狗を見に行こう、猫ラーメンを食べに行こう、ええじゃないかええじゃないか、などとよく軽口を叩いていた。あれ、もしかして私の周りだけが特殊な会話をしていたのか? と思い返す内に不安になってきたが、とりあえず私の大学生活と森見登美彦さんの作品は切り離せない。

 私が初めて読んだ森見さんの作品は『太陽の塔』だった。高校生の時だ。手に取ったきっかけは、書店で平積みされていたからだ。京都大学の男子学生である「私」がかつて自分を振った恋人「水尾さん」を研究するために追い掛ける、ファンタジー要素の含まれた青春小説だ。題名の通り、太陽の塔も登場する。

 あの時、表紙を見て迷いなく買った理由は、私が幼い頃から太陽の塔が好きだからだった。


「響け!ユーフォニアム」を語る

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「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『愛されなくても別に』がある。

河治和香『ニッポンチ! 国芳一門明治浮世絵草紙』
辛酸なめ子「電車のおじさん」第21回