武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第9回「正常性バイアスうどん」

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
大学の美術サークルで行った夏合宿。
幹事に就いた武田さんでしたが、
二日目の夜、ミステリーのような事件が⁉︎

 正常性バイアスという心理学用語がある。自分にとって都合の悪い情報を軽視したり、何か予想外のことが起きた時にあくまで日常生活の延長上の出来事だと思い込もうとしたりする人間の特性のことだ。私はこのバイアスが働きやすいタイプなのだけれど、その中でも一つ印象的な出来事がある。

 大学生時代に美術サークルで夏合宿に行った時の話だ。私の所属していた美術サークルは幽霊部員も含めて百名ほどの人間がおり、二泊三日の夏合宿に参加するのはその半分ほどだった。五十名あまりを引率するというのは非常に面倒なため、夏合宿幹事という役職は皆からハズレとみなされていた。

 三回生になった時、私はその役職に就くこととなった。夏を乗り越えたら一気に楽になるから! という先輩の口車に乗った結果でもある。元々、予定を管理することはそこまで嫌いじゃなかったから、この役職は意外と私に向いていた。旅行代理店で計画を作成してもらい、見積もりを出す。そして、複数の素案をサークルの総会で紹介し、旅行先を投票で選択するのだ。私はどうしても石川県にある金沢21世紀美術館に行きたかったので、石川県の旅行プランだけめちゃくちゃ気合を入れて作った。その結果、見事旅行先に石川県が選ばれることとなった。 

 

 大学生の合宿での食事というのは、予算とのせめぎ合いだ。大人になって身に染みて感じたが、旅館の食事というものはグレードを上げようと思えばいくらでも上げられる。しかしながら、グレードを下げるのは非常に大変なのだ。


「響け!ユーフォニアム」を語る

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「おはようおかえり 京は猫日和」アーカイヴ

武田綾乃(たけだ・あやの)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」(宝島社文庫)でデビュー。2作目となる「響け!ユーフォニアム」シリーズが累計159万部の大ヒットとなる。他の著書に『石黒くんに春は来ない』『青い春を数えて』『その日、朱音は空を飛んだ』『君と漕ぐ ながとろ高校カヌー部』『どうぞ愛をお叫びください』『愛されなくても別に』がある。

第14回「上流階級 富久丸百貨店外商部 其の三」高殿 円
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第125回