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大島真寿美『たとえば、葡萄』
どこからだって扉はひらく 小説とはふしぎなもので、うまれる時にはうまれてしまう。ここ数年、江戸時代の道頓堀界隈に脳内トリップしつづけ、あちらの世界に搦めとられ、あまりにも、あまりにも、どっぷりと浸りきっていたものだから、もう、江戸時代の小説しか書けなくなっちゃったかも? と危惧していたりもしたのですが、『結 妹背山婦女
作家を作った言葉〔第9回〕冲方 丁
 本稿を思案するに当たり色々とデビュー前のことを思い出そうとしたが、作家を志す上で必要とした言葉はなく、自然とそうしていたとしか言えない。が、実際に作家となる上で今も指針とする言葉はある。神話学者ジョゼフ・キャンベルの「あなたの至福に従いなさい」だ。至福とは、自分によってのみ見出される自分自身の究極的な「何か」だ。経済
田島芽瑠の読メル幸せ
9月になりました 上京して初めて感じる東京の秋。どのくらいで涼しくなっていくのかドキドキしながら過ごしています。今はまだ稽古が始まっていないのですが、9月は次に出演させていただく舞台『ドラマチックハイスクール』のお稽古で埋まっているので今からワクワクしています。この記事が公開された頃は必死に頑張っている頃だと思うので未
大どんでん返し第22回
第22話 直島 翔「試験問題」 ホテル・ニューオークラの秘密の会議室に足を踏み入れるなり、円遊亭歌介は首をすくめた。師匠の罵声が飛んできたからだ。「十分も遅れるやつがあるか!」「いえね、歌楽師匠、ボディーチェックが厳しいんですよ。この部屋に通されるまで体中触られて、高座のネタ帳まで取り上げられちまったんでさあ」歌楽はあ
◎編集者コラム◎ 『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井点線
 香取慎吾さん主演で9月23日から公開される映画『犬も食わねどチャーリーは笑う』を小説化したのがこの作品です。「夫婦って何だろう?」とさまざまな夫婦のカタチを映画のテーマに考えた市井昌秀監督が、約2年の歳月をかけて、脚本を完成させました。脚本を書き始める段階で香取さんの主演が決まり、市井監督は、「平凡な日常を生きる香取
# BOOK LOVER*第9回* 上田慎一郎
 二十歳の頃、この本に出会った。岡本太郎の名言をまとめた一冊である。「怖かったら怖いほど、逆にそこに飛び込むんだ」「ぼくは絶対に成功しないことを目的にしている」「人生は積みへらしだ」「ぼくは、しあわせ反対論者なんだ」常識外れの言葉たち。しかし、人生の本質を突きつけられた気がした。高校二年の夏、手作りイカダで琵琶湖の横断
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第208回
「その二つの事件が、どんな風に科警研の退職に影響したんですか?」「よくぞ訊いてくれました」園山がにっこり笑う。「科警研ってね、全国の都道府県の科捜研の研究員たちが研修に集まる、科捜研より上位の組織なんですよ。DNA型鑑定の資格も、科警研の研修を受けないともらえないんです。言ってみれば日本の科学捜査の最高峰、総本山。あれ
◎編集者コラム◎ 『海とジイ』藤岡陽子
 藤岡陽子さんのデビュー当時の作品『海路』という作品がとても好きでした。そのお話を藤岡さんとしているときに伺うと、その後何年も経つけれど文庫化の予定がない、とのこと。それとは別に、藤岡さんから「是非読んでほしい原稿です」と渡していただいた、文芸誌に掲載された素晴らしい短編。共通するのは、お爺さんが主人公であることと、舞
ゲスト/永井玲衣さん◇書店員が気になった本!の著者と本のテーマについて語りまくって日々のモヤモヤを解きほぐしながらこれからの生き方と社会について考える対談◇第16回
 子どもの頃は些細なことに「なんで?」と疑問を投げかけていたけれど、いつの頃からか「そういうものだから」と分かったふりをして自ら世界を小さくしてはいないだろうか。永井玲衣さんは、ライフワークとして行っている哲学対話を「他の人と一緒にままならなさをまっとうに苦しむ場」だという。世界をよく見るために哲学するとはどういうこと
ハクマン第91回
先日久しぶりにS学舘から漫画の新刊が出た。この媒体もS学舘なので伏せる必要はないのだが、S学舘のSがシットのSを表しているのはあまりにも有名なので一応伏せさせてもらった。編集に指摘される前から、コンプラを意識するのが令和のデキる作家である。ちなみにシットはもちろんファッキソガッデムシットのシットだ。開始から学びの宝庫…
◎編集者コラム◎ 『私たちは25歳で死んでしまう』砂川雨路
『私たちは25歳で死んでしまう』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作の編集作業を担当しました、A田と申します。本コラムを執筆している2022年の8月末現在、東京は急に気温がぐんと下がりましたが、振り返ると、この夏の暑さは異常だったのではないでしょうか。 東京都心の年間の猛暑日(最高気温35度以上)日
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん TSUTAYA 中万々店 山中由貴さん
 もうなにも読まなくていい。すべてが霞む。しばらくはそっとしておいて。本書を閉じたあとの率直な気持ちは、ただ、そうとしか言いあらわせない。「あたしは無法者のダッチェス・デイ・ラドリー」。彼女の震える声がきこえる。怖気づいて、さびしくて、不安で、怒って──、それでも守るものがあるから、13歳のダッチェスは逃げない。30年
源流の人 第25回 ◇ 藤間爽子 (日本舞踊家、俳優)
唯一無二の存在感 気鋭の俳優は日本舞踊の若き家元として脚光 たおやかに、ときに激情を秘めて多様な表現空間を自由に舞い踊る 華やかな舞台は稽古の積み重ねがあってこそ。三代目の心奥に秘めた確かな決意とこれから。俳優・二宮和也の演じる主人公・鳴沢温人が社長を務める会社に勤務し、彼の家で起きた誘拐事件の謎を解くべく尽くす温和な
◎編集者コラム◎ 『1794』ニクラス・ナット・オ・ダーグ 訳/ヘレンハルメ美穂
 フランス革命期のスウェーデンと聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?名作『ベルサイユのばら』のフェルゼンでしょうか。宝塚ファンの方なら、フェルゼンのボスの〝ロココの文化王〟ことグスタフ三世をイメージされるかもしれませんね。そんな時代を描きながらも、美しく華麗なこれらの世界とは正反対の、街も人々もひたすら暗くて汚い当時
◉話題作、読んで観る?◉ 第53回「百花」
 これまでに『告白』『君の名は。』など数多くのヒット映画を放ってきた川村元気プロデューサーが、監督として自身の小説を初めて映画化した。母親と息子との記憶をめぐる愛憎劇となっている。レコード会社に勤める泉(菅田将暉)は、シングルマザーである百合子(原田美枝子)に育てられた。久しぶりに実家に戻ると、百合子の様子がおかしい。
◎編集者コラム◎ 『本を守ろうとする猫の話』夏川草介
 2017年に刊行された夏川草介氏の『本を守ろうとする猫の話』が、刊行から五年半の歳月を経て、いよいよ文庫化されました。本書は海外でも高い評価を受け、これまでにブルガリア、ブラジル、中国、チェコ、ドイツ、デンマーク、カタロニア、スペイン、フィンランド、アメリカ、フランス、イギリス、ギリシア、クロアチア、ハンガリー、イン
採れたて本!【デビュー】
 日本ファンタジーノベル大賞は、もともとジャンル・ファンタジー(いかにもファンタジーらしいファンタジー)のための賞ではなかったが、中断をはさんで2017年にリニューアルされてから5回目を迎えた今も、事情は変わらない。選考委員の恩田陸いわく、「ファンタジーはあくまでも手段であって、目的ではない」。というわけで、「日本ファ
畑野智美『若葉荘の暮らし』
コロナ禍で夢見た暮らし 一昨年の二月、私は世界が変わる音を聞いた気がした。知人との別れ際に「感染症がはやっているから気をつけて」と言い合ったものの、ことの大きさを理解していなかった。ただ、なぜか、そこを境目に元には戻れなくなることを感じていた。数日後、世の中の状況は急激に変わっていく。外出を控えるように言われ、楽しみに