ニュース

採れたて本!【国内ミステリ】
 例えば芦沢央の『許されようとは思いません』や『汚れた手をそこで拭かない』、阿津川辰海の『透明人間は密室に潜む』、曽根圭介の『腸詰小僧 曽根圭介短編集』、矢樹純の『夫の骨』や『妻は忘れない』等々、ミステリ界ではここ数年、高水準なノン・シリーズ短篇集が幾つも上梓されている。中でも、どんでん返しの冴えという点で白眉なのが結
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第202回
 モデル図では管のマイナス極からプラス極へとDNAの移動する様子を表す矢印が描かれ、プラス極の到達点を拡大した図には左右に二本、鋭い三角の突起が描かれ、プラス極に近い方に「7型」、もう一つには「12型」と書かれていた。「短い塩基のくり返し数が多いほどDNAは長くなり、重くなります。くり返し数が少ないほどDNAは短くなり
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年7月×日 言葉が増え始めた娘が、「ゲラ」という単語を覚えた。……という話はいったん脇に置いて、今日は子どもの睡眠について書いてみたいと思う。今から2年近く前、娘が生後7か月頃のこと。私の祖母と母が、自宅に遊びにきた。女4代揃って女子会(?)をしていると、ずり這いをして床を動き回っていた娘がぐずり始めた。お腹…
源流の人 第24回 ◇ オカズデザイン (料理とグラフィックデザインのチーム)
食材の持ち味を見つめ、器を見つめシンプルかつ普遍的な料理を追求 創る者らと語り合い、切磋琢磨し小説や映像世界に深みを与えていく 評判が評判を呼び、おいしさを提供する道へ。人と土地との縁を大事にしてきたふたりの滋味深い生き方とは。一九六〇年代の沖縄・山原地域で育った少女・暢子を主人公にした、NHK連続テレビ小説「ちむどん
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
おなかは急に痛くなるもの 先日、胃腸炎になった。大の大人が腹を擦りながら四日間ほどベッドで寝込む状況というのは非常にテンションが下がるものだったので、こうなったらエッセイのネタにしてやる! と己を奮い立たせることにした。ちなみに大人になってから胃腸炎になったのは二年ぶり五回目だった。新鋭強豪校の甲子園出場くらいの頻度…
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 吉見書店 竜南店 柳下博幸さん
「終活」それは、人生の終わりを迎えるための活動である。自らが死を意識して、その最期をどう迎えるか。様々な準備やそこに向けたそれぞれの人生の総括を意味する。死を意識するのが数十年先の人もいれば、残り数日の人もいる。人間の数だけ違うそれぞれの人生を顧みる大事な期間。今はまだそのときが訪れていないあなたも、本作を読んでその瞬
はらだみずき『太陽と月 サッカー・ドリーム』
『太陽と月』が自信作である理由 小説家は、自分にしか書けない作品を手がけたいと願うものです。そしてときに、「この話を書きなさい」と小説の神様に耳打ちされたような心持ちを抱くのです(あくまで僕の場合ですが)。自分の人生においてフックとなる体験は、ああ、このストーリーを書くためだったのか、と後になって思い至ります。新刊の『
採れたて本!【歴史・時代小説】
 菅原道真は、今も〝学問の神〟として信仰されているだけに、漢詩文集『菅家文草』の編纂や、多くの後進を育てた私塾・菅家廊下などが注目されがちだ。これに対し『あるじなしとて』は、政治家としての道真に着目した異色作である。八八六年。文人官吏として順調に出世していた道真は、突然、讃岐の国司に任じられる。地方の国司を数年ほど務め『塞王の楯』で直木賞を受賞した今村翔吾の受賞後第一作は、池波正太郎、司馬遼太郎、火坂雅志らが取り上げた人気の戦国武将・真田幸村を描いている。関ヶ原の戦いに勝利し豊臣家を滅ぼす機会を狙う徳川家康のもとに、二度も煮え湯を飲まされた真田昌幸の息子・幸村が大坂城に入ったとの報告が届く。長男の信之は家康に仕え、第二次上田合戦で徳
手嶋龍一『武漢コンフィデンシャル』
秘色の物語を紡いで 『武漢コンフィデンシャル』の装丁も鈴木成一デザイン室が手がけてくださった。鈴木さんはいつも決まって「まずゲラを拝読してから――」と言い、作品を読み終わるまで引き受けてくれるのか分からない。著者にとって、この人が最初の関門なのである。本作は長江流域に広がる要衝、武漢が主な舞台である。近代中国の黎明を告
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第201回
 休憩後、一人目の証人尋問が始まった。足立南署刑事課鑑識係に所属する女性警察官だった。綿貫の遺体遺棄現場で煙草の吸い殻を採取し、証拠として保管して報告書を作成した。蟇目は、その一連の手続きが国家公安委員会規則である犯罪捜査規範に則(のっと)った適正なものであったことを証言させた。尋問の途中では綿貫から出血した血がついた
ハクマン第88回
「小栗くん童貞だったことある?」これはあまりにも童貞の気持ちがわかっていない、小栗旬に対して発せられた名言である。確かに小栗旬ともなれば生まれた時から童貞じゃなかった可能性は十分にある。しかし、我々は皆生まれる時に女性器を通過しているのだ。しかも、体の一部を入ったかと思ったら出す、どっちつかずな態度を取り続けた上に「や
ブレイディみかこ『両手にトカレフ』
希望の強度 エッセイ集『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』が国民的ベストセラーとなったブレイディみかこが、初小説を発表した。依存症の母をケアし弟の面倒も見る一四歳の少女・ミアの物語は、「子供の貧困」に象徴される現代社会の見えざる現実を映し出す。 自分の家族にかこつけて書くことは止めよう 英国ブライトンに暮らす
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 成田本店 みなと高台店 櫻井美怜さん
 あんな女いなければいいのに、と思ったことはないだろうか。私はある。一番仲がいいと思っていた友達が、自分以外の子と仲良くしているのを見た時。彼氏の携帯に元カノの連絡先が残っているのを知った時。自分が大切にしている人や場所が奪われそうになった時、私の中に潜んでいたどろりとした感情が鎌首をもたげてくる。今村夏子の最新作には
長月天音『ほどなく、お別れです 思い出の箱』
変わるものと、変わらないもの 東京の外れに暮らす私は、時々無性に東京スカイツリーが恋しくなる。いてもたってもいられなくなり、つい足を運んでしまう。展望デッキまで上ることもあれば、下から見上げて満足するだけのこともある。スカイツリー周辺が舞台の『ほどなく、お別れです』の執筆中は、近隣を歩き回って作中の人物の気持ちを想像す
推してけ! 推してけ!」第22回 ◆『さんず』(降田天・著)
評者=石井光太(ノンフィクション作家) 自死が織りなす残酷で滑稽な人間劇場 もしあなたが自ら命を絶つとするならば、いかなる理由によるものだろうか。耐え難い苦痛から逃れたいから? わが身に起きた不条理を世に知らしめたいから? 誰かに復讐を果たしたいから? 人間は命を授かった時から生きることへの本能を身につけている。だが、
◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第16回
第17話 16日目のパリジェンヌ 昨日暗礁に乗り上げかけた仕事上の問題は、午前中のうちにあっさり解決してしまった。企画に関わる私以外の人々が一斉に私の肩を持ってくれたのだ。最後には、件の責任者のさらに上の人間まで巻き込んでくれたという話だった。思わぬ大事になったな、と肝を冷やしたが、助けてもらえたことは本当にありがたく
作家を作った言葉〔第7回〕小佐野彈
 歌人としてデビューし、その後小説も書くようになったきっかけ──つまり僕の文筆家としての原点が、俵万智さんの第三歌集『チョコレート革命』であることは、これまでにさまざまな媒体で話しまくってきたし、書きまくってきた。でも、どれだけ言葉を尽くしても語り切れないほど、この一冊の本が僕の人生に及ぼした影響は大きい。俵万智さんの
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第200回
 ヒトの遺伝子……99.9%は共通 「じゃあどうするのか。残りの〇・一パーセントの中で、とくに個人間で違いがわかりやすいごくごーく一部の特定の部位に注目し、そこだけをピックアップして調べる。その注目する特定の部分──ターゲットになる部分のことを『ローカス』って呼ぶわけだ。はいもう一度」剣持はまたディスプレイにローカスの