鈴木るりか『太陽はひとりぼっち』

どんなに痛めつけられても、生きるしかない。


「太陽は、いつもひとりぼっちだ」

 この台詞は、小さい頃から耳にしていた。

「えーっ、ひとりで行くのいやだなあ」「ひとりだったら、どうしよう?」

 そんな事を口にしたとき、必ず母からこう返ってきたのだ。

 太陽はひとりぼっち。この言葉は、私の心の深いところにずっとあった。これがアラン・ドロン主演の古い映画のタイトルだと知ったのは、この小説を書き終わってからだった。

 当初は『相も変わらず』という作品名で、その言葉通り、田中母娘と周囲の人々の相も変わらぬその後の日常を描いたものだったが、終盤、ある登場人物が「太陽は、いつもひとりぼっちだ」と言う場面が出てきて、これが実にしっくりとこの小説に嵌っていたので変更した。いつも作品名で苦労する私にしては、珍しくすんなりと決まった。今では、これ以上ぴったりのものはないと思えるくらい自分でも気に入っている。

 この小説の作品名が決まると、あとの二作も「太陽」に引っ張られるようにして、書き上げることができた。『さよなら、田中さん』で、「その後が気になる」と多くの読者に言っていただいた三上くんの現在を描いた『神様ヘルプ』、意外な人気で隠れファンを得た木戸先生の過去が明らかになる『オーマイブラザー』、どちらも太陽が小説に印象深い陰影を与えてくれた。

 人は太陽がなければ生きていられない。地球に一番近い恒星。大地に恵みを与え、どんな人にも隔てなく光を降り注ぐ。けれどあんなに輝いていても、太陽はいつもひとりぼっちだ。六千度の孤独。

 一番近くにいて、わかり合えていると思っていたのに、すべてを知ることは所詮不可能なのだろうか、家族であっても。時に、他人よりも遠く感じられてしまうこともある家族。

 三作書き上げたあとに浮かび上がってきた、もうひとつのテーマは家族だった。葬り去った過去からの使者にかき乱される田中母娘、家族から離れたことによって、家族を客観視できるまでに成長した三上くん、木戸先生の人生に大きく影響を与えた兄の現在は?

 何もない人などいない。どんなに痛めつけられても、生きるしかない。

 読み終わったあと、そんなことを少しでも感じてもらえたら、嬉しい。

鈴木るりか(すずき・るりか)

2003年、東京都生まれ。小学4年、5年、6年時に3年連続で、小学館主催の『12歳の文学賞』大賞を受賞。17年10月、14歳の誕生日に『さよなら、田中さん』でデビュー。10万部を超えるベストセラーに。韓国や台湾でも翻訳される。18年10月、地方の中学を舞台にした2作目の連作短編集『14歳、明日の時間割』を刊行。現在、都内私立女子高校一年生在学中。

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