ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第11回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第11回
「年末進行」「お盆進行」という言葉がある。
〆切が格段に速くなり、
俺たち歩合給が生死の縁を彷徨うのだ。

しかし、原稿を前倒しで描いた分、作家側も不安定給の不定休の分際で人並みに連休を過ごせるのではないかと、思われるかもしれないが、それは少し違う。

ヒントは今この原稿を5月7日に書いている、という点だ、勘のいいガキはとっくに気づいているだろう。つまり、GW進行が終わったあと「次の〆切は5月7日です」と言われているケースが多いのである。現にこれ以外にも今日が〆切の原稿が2、3本ある。
連休明け初日が〆切、これが意味するところは「連休中原稿をやれ」ということだ。
つまり、ノーバランスジョブたちが、世間並の連休をエンジョイしようとしたら連休明けの原稿まで前倒しする必要があり、作家の方が物理的に前に倒れて顔のバランスまで悪くするか、後ろに倒れて後頭部強打で死ぬかの二択になる。

これと似た現象に「月曜に出してくれればいいですよ」がある。

それを言うのが火曜とかならいいのだが、金曜だったりするのだ。つまり「土日にやれ」ということである。
ワーキングフリーたちは、確かに休もうと思えばいつでも休みに出来るのだが、そのせいで逆に世間から「土日休む必要がない」と思われている節がある。

確かに、私のような、ほぼ「単体のフリーランス」というアメーバみたいな無職相手にならそれでいい。
だが多細胞の奴、つまり家族持ちを相手にする時は気をつけた方がよい。
作家という仕事自体は確かに、土日祝日関係ないかもしれないが、その家族、特に子どもには大いに関係あるのである。

私の専門学校時代の先生はフリーでデザイナーをやっている。
彼女は、クリスマスにクライアントの担当からデータが送られてくるのを待っていた。
家では子どもたちがクリスマスパーティを楽しみにしている。一刻も早く終わらせて帰りたい。
しかし、データは一向に送られてこない。何故なら、担当はその時家族とクリスマスパーティをしていたからだ。

このように、フリーの奴は土日祝日、その他世間のイベントに無関係な人間だと思い込むと、一生恨みを買うことになる。

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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。