ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第11回

ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第11回
「年末進行」「お盆進行」という言葉がある。
〆切が格段に速くなり、
俺たち歩合給が生死の縁を彷徨うのだ。

特に子どものいる家は気をつけた方がよい。ハリウッド映画でも動機が「子どもの復讐」の奴は格段に強いし、慈悲がない。
私のように季節が変わったことにも気づかず、5月に「気温的に10月か?」という感覚になっている地球からもフリーになっている奴もいるが、会社員と同じように、土日が重要な者もいるのだ。
そういう人に軽々しく運動会シーズンとかに「月曜の朝イチでいいですよ」などと言うと「96時間」が始まってしまう恐れがある。
しかし、連休進行は、ただ月給の奴らの都合で作家が酷い目に遭わせられているというわけではない。むしろ我々はそれに従う理由がある。

何故なら連休進行は出版社側の都合というよりは、印刷会社側の都合という面が大きい。
最終的に雑誌を印刷する会社が休むと決めたなら、その過程はそれに合わせて動くしかない。

大体漫画雑誌製作において、一番迷惑を被っているのは印刷会社なのだ。
作家は原稿が終わった時点で、仕事が終わりだが、印刷会社はそこから仕事が始まる。つまり作家の原稿が遅れれば遅れるほど、仕事を始めることすらできず、永遠に帰れない。
だから漫画家漫画には、担当が印刷会社の前で歯で指を詰めているシーンがよくあるのだ。

その我々が平素大変ご迷惑をおかけしている印刷会社様がお休みになられる、というなら文句は言えないのである。

しかし、今は印刷所が関係ないWEB連載も多いので連休進行の形も変わってきた。

どう変わったかというと、連休中も普通に原稿が掲載され、普通に連休中に〆切があるという状態になった。
もはや「GW中どうします? 1回休みます?」とも聞いてこないので、こちらもいつも通り原稿を出すしかない。
そして連休中に、こちらが原稿を出すと、ごく普通に担当から返信が来ることもある。

連休進行は辛い、しかし、仕事を前倒ししてでも、お互い休む時は休んだ方がよいのではないかとも思う。

ハクマン

(つづく)
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カレー沢薫(かれーざわ・かおる)

漫画家、エッセイスト。漫画『クレムリン』でデビュー。 エッセイ作品に『負ける技術』『ブスの本懐』(太田出版)など多数。