▽▷△超短編!大どんでん返しSpecial▼▶︎▲ 芦花公園「幽霊屋敷」

第12話
芦花公園
「幽霊屋敷」
はい、来ました、ゆがみんオカルトちゃんねる。
今日のゲストは林檎坂46のゆみみ。豪華ですね〜。
おっ、霊能者の霧島葉子も来てくれた。
中野で一番有名な心霊スポットということですからね、気合も入ります。なんでも、引っ越してきた住人が、次々と謎の死を遂げる家だとか。ちなみに、ここ五年は新しい入居者はいないようですね。
おっと、ゆみみ、顔が真っ青だよ? 霊感とかあったりして。
玄関の鍵は壊されてるね。早速入って……おお、靴が揃えられてる。何人分? 十人くらいいない?
俺は靴脱ぐけど、君たちは土足でいいよ。埃塗れだし、何か刺さったりしたら危ないでしょ。
霧島さん、なんか見つけた? 二階?
じゃあちょっと早いけど、上がっちゃおうか。
ん、何だろうあの音。奥の和室かな?
ああ、襖が、開いたり、閉じたり。何度も繰り返しているね。
お婆さんがいます。
ん? 首?
うわ、ほんとだ。首が逆についてる。うわ、それで前、見えてるの?
はいはい、怒ってますね。お婆さんを刺激しないように。霧島さん、ゆっくりね、ゆっくり降りましょう。
一階に戻ってきました。
どうします? まあ、そうですね、せっかく来たんだから、やはり噂の居間に。
ここでね、五年前、後藤さん一家五人、お父さん、お母さん、娘一人息子二人、折り重なって死んでいたとか。外傷はなかったそうですが、何故かこの部屋は、洗っても洗っても血痕が浮き出てきて、消えないんだって。
それではお邪魔します。
うわ、いるいる。います。ゆみみ、見えない? やっぱり霊感はないのかな。
五人全員、君のこと見てますけど。
霧島さん、どうしたの? ああ、お祓いするんですね。
はい、静かにしています。
霧島さんはその辺のインチキ霊能者じゃなくて、割と本気で解決できる人らしいので、俺は尊敬してます。それでは、お祓いに集中しましょう。
……。
……。
ええと、これで終わりなんですかね。
確かに様子は変わりましたけど。
長女の成美ちゃんが大声で叫んでいるし、男の子二人はお口の中が真っ黒ですけど。
ううん、苦しそうですね。三人もお子さんがいると、お父さんと、お母さんは、大変ですね。お金も無くなるし。だから事故物件なんかに住まなきゃいけなくなっちゃったし、それでもお金が無くなって、一家心中する羽目になっちゃったんでしょうか。
危ない? 一刻も早く離れた方がいい?
はい、そうかもしれません。
じゃあ、倒れちゃったゆみみは置いといて、退散しますか?
しないんですね、霧島さん。皆はとっくに逃げちゃったのに。さすが、立派です。
でも、玄関にも沢山いるし、ちょっと出るの難しくないですか?
ああ、お風呂場ですね。はい、行ってみましょう。
あー、ダメですね。ここもいます。
グロいのちょっと苦手です、申し訳ないですけど、おじさんがスープ状になったのとかはちょっと。
そもそも、床を這ってる女の人は誰なんですか? 霧島さん、足、気を付けて!
あ、お婆さんが降りてきちゃった。
うるさくしたから、ますます怒ってます。
顔は逆についてるから、想像ですけど。
集まってきちゃいましたね。
でも、皆、思い思いに、好きなことをしてるだけなんですよ。
幽霊って、死んでも、ルーティンワークっていうのかな、自分がやってたことを、ずっと繰り返しているだけなんですよね。
後藤さん一家はガス心中当日のドタバタ。
佐藤さんは娘さんに階段から突き落とされたときのまま。
中島さんはお風呂で手首切って寝ちゃったからだし……ごめんなさい、床の女性は把握してない。
人が死んだら皆集まって、お葬式。玄関で靴を揃えるのも常識でしょ?
あ、この辺で終わりですか、お疲れ様です。
出て行かせることはできませんでした、ってひどいじゃないですか。
ここは元から俺の家でーす笑
芦花公園(ろか・こうえん)
東京都生まれ。2020年、カクヨムにて発表した「ほねがらみ─某所怪談レポート─」がTwitterで話題となり書籍化が決定。21年、同作を改題した『ほねがらみ』でデビュー。第二作に『異端の祝祭』。古今東西のホラー映画・ホラー小説を偏愛する。
〈「STORY BOX」2022年2月号掲載〉