藤谷 治

◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第9回
「それは恐らく、真面目な話なんでしょうけれど、でもごめんなさい、笑っちゃう」  そう言いながらアンティヌッティは笑みを浮かべた。しかしそれは決して嘲弄しているようではなかった。 「約束をしたんです」や
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第3回
   気がつくと鈴木正太郎(すずきしょうたろう)は、またしても雑踏の中にいた。  昨日のことはすべてがぼんやりしていた。詰襟を着た東京の学生さんや、西洋人の女が乗せてくれた大きな船のことを忘れたわけで
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第2回
 とうとう半ば常軌を逸したニコデモは、船着き場に積み上げられた大きな木箱の上によじ登り、たったひとつ残された小僧の形見を歌い始めた。    花よ、花咲けよ、花は花咲くもんだなし。 ・・・・・・・・・・
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第1回
   昔むかしの大昔、日本が戦争に勝っていたころ、ある裕福な家に、一人の男の子が生まれた。両親はこの子をニコデモと名付けた。父母ともにキリスト教徒であったので、聖書にあらわれる名前から採ったのだった。
藤谷 治さん『燃えよ、あんず』
「小説の中にいっぱい小説を詰め込む、ということをやってみたかったんです」  と、藤谷治さんは言う。新作『燃えよ、あんず』についてだ。 「それにはどうすればいいかということで、自分の持っている話から、久
藤谷治さん
 音楽一家のもとで育ち、チェロの腕前には自信のあった"僕"、津島サトル。しかし東京芸術大学附属高校の受験に失敗し、新生学園大学付属高校の音楽科に進学。普通科は女子のみ、音楽科も男子はたったの6人。挫折
藤谷治さん
高頭……刊行前のプルーフ本で『世界でいちばん美しい』を拝読しました。この小説は「けむり」というタイトルでいつかは書きたいと、藤谷さんが構想に十年をかけられた物語だと伺いました。 藤谷……『おがたQ、と
fujitani_san
 島崎哲には親友がいる。雪踏文彦、通称せった君。小学生の頃、勉強ができなくて周囲から馬鹿にされていたせった君だが、島崎がピアノを弾く姿を見ただけで同じ曲を弾いてみせて周囲を驚かせる。そう、彼はとてつも