連載小説

上流階級 第13回
 今日は雨なのでランニングにも行かず、家で英語のスカイプレッスンをしていたという桝家は、静緒がバッグの中から物件の資料を出すと、驚いた顔をした。 「ほんとに家買うんですか?」 「いい物件があればね」
上流階級 第12回
「あんたが店で働いてるところ、よくこっそり見に行ったけど、お客さんにぺこぺこしてるのよう見たわ」 「いやあ、それはまあ、こういう仕事だったらさ」 「お母さんもスーパーでよくぺこぺこするけど、それはおか
上流階級その3
  「すごいところまで行きましたね」  事情を聞いて助太刀を頼んだ桝家は、やや呆(あき)れたような声で顔からシートパックを剥がした。 「この後に及んで引けないですね、それ」 「引けないし、たぶん自分で
上流階級その3
「そういえば、私がもっと若い頃は、いまより音楽番組がもっとたくさんあった気がします。いつのまにかなくなりましたけど」  CDの売り上げがミリオンセールスを記録することもなくなり、皆 youtube で
上流階級その3
 結局、またしても実家に帰り損ねた。   いつものことだと母は笑って流してくれたけれど、こう帰る帰る詐欺が続くと、単なる親不孝を通り越して信頼関係に支障が出ているのではという気がする。 (ああ、働いて
上流階級3
 次の日は、コーヒーを飲む時間もなく、朝から電話にメールにと対応に明け暮れた。 「わかりました。本日必ず伺いますので。大丈夫です。……はい。失礼します」  電話を切って思わずため息をつく。こんな日に限
上流階級3
 せっかく本店に来たからということで、芦屋川店には入っていないブランドにも立ち寄った。静緒と同じマンションに住む百合子(ゆりこ)・L・マークウェバーに頼まれた、ルイ・ヴィトンの新作のパーカーとキャップ
上流階級3
 NIMAさんにご紹介したのは、元町本店のすぐ側にある老舗の弁護士事務所Rで、オーナー弁護士の一人であるT先生が代理人を引き受けてくださることになった。  アシスタントにはIT関連に詳しい若手のM先生
上流階級3
 弁護士にもいろいろある。本当にいろいろある。 「いや、一般人としては、国家試験通った人はみんなできる人で、ましてや司法試験なんて難関を突破した人はスーパーマンだって思うじゃない? でも実際はピンキリ
上流階級3
  NIMAさんは、あれこれ聞いてこず、黙って必要なだけ情報を渡してくれる静緒を気に入ったらしい。徐々に自分のことを話してくれるようになった。 「昔いじめられっ子でねー。中学で不登校になって家で絵ばか
上流階級3
「塾でも、K大付属豊中中は難しいから、ランクを落として付属茨木中はいかがですかっていうのよ。私はまあ、結局最終的にK大に入れるならいいか、と思っていたんだけど」 「なにか問題が?」 「お姑さんが、反対
上流階級3
   美容整形外科に来た。  芦屋にある、待合室はすべて個室、そこにある椅子もすべて猫足という、ある意味ブランディングのしっかりしたオール自費診療クリニックである。 「こちらがバッカルファットですね」
(前編のあらすじ)深明寺坂で交通事故が起きた。運転手は焼き鳥の串を喉に刺し死亡。唯一の目撃者は小学生の良太で、事故直後、車の屋根越しに人影を見たという。良太の様子に不審を覚えた兄の福太と学太は、事故の
 2  天井のスピーカーから、午後五時を告げるチャイムが流れた。みひろは抱えていた段ボール箱を別の段ボール箱の上に載せた。息をついて手の埃(ほこり)を払い、室内を見回す。  今朝「今後のことは、また知
   1 「電話を切って部屋に戻って下さい。五分後に人が来ます」  機械的にゆっくりと、中森翼(なかもりつばさ)は告げた。阿久津慎(あくつしん)は訊(たず)ねた。 「どういう意味だ?」 「すみません。
深明寺商店街
  「なんだ、この唐揚げ。めちゃくちゃ旨え」  弁当箱の蓋を開けるなり、貴重な唐揚げの一つが横からかっ攫われた。  声を上げる間もなかった。それどころか、盗っ人が放った一言に、格技場で昼飯中だった剣道
    14 「どういうことですか!?」  声を上げ、みひろが席を立つと豆田は眉を寄せて背中を向けた。その前に回り込み、みひろはさらに訊ねた。 「室長に何があったんですか? 教えて下さい」 「僕にも、
 12  足を止め、みひろはアパートを見上げた。周囲は薄暗く、二階の左から二番目の窓には明かりが点っていた。   建物の脇の階段を上がり、等間隔でドアが並んだ通路を進んだ。目当てのドアの前で足を止め、