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2013年10月号 【113】

 なんか、巨大な蜘蛛を見たせいで、眼球が爆発しそうになったそうですね──。久しぶりに会った人に、いきなりこんなことを言われた。もともとの話は、こうだ。

@ 夜中に家に帰ったら、ざっと見ても直径二十センチ、いや三十センチくらいはありそうな巨大な脚の長い蜘蛛が外壁に貼りついていて不気味だった。手で追い払ったら、体に似合わぬ俊敏さで対角線上に壁を這って、あっという間に見えなくなった。

A 目の下の腫瘍を切開して取った。気圧の変化の関係などがあるので、その後に予定していた、飛行機に乗っての海外出張を医者から止められた。無理に乗ると、手術した箇所が痛み出し、場合によっては内部で損傷を起こすかもしれない。

 このふたつの話を同時にしたため、うろ覚えで聞いていた人が、別の人に話して、尾ひれが付いたというよくある話のように思えるが、ここでポイントとして話したかったのは、@のほうである。かなり気味の悪い体験で、確か『遠野物語』かなにかで、巨大な蜘蛛を見た人が後日、命を落としたような話を読んだことがある。こうした奇怪な話に、ひとは因果関係というか、なにか「収まりどころ」を求めてしまう。

 実際、先日も、こんな話を人から聞いた。少し前まで付き合っていた女性のマンションの前をある日の昼過ぎに通ったら、突然お腹が痛くなり、道ばたに倒れ込みそうになった。悪いとは思ったが、昼間は彼女は働きに出て不在なはずなので、まだその時持っていた合い鍵を使って部屋に入った。なんとか用を足してトイレからは出たものの、体が硬直したように動かなくなり、その場で横になって体調が戻るのをしばらく待った。しかし、意識はさらに朦朧となり、そのあいだに自分のまわりを十数人くらいの見知らぬ人たちが何やら話しながらガヤガヤと歩き回っているような感覚に囚われた。夕方になって、やっと体調はもとに戻ったが、先ほどの人たちがなんだったのかは、全くもってまったくわからない。この話をしてくれた人は、ひどいふり方をしてしまったから、バチが当たったのかもしれない……といったオチを半笑いで話していた。

 こういう、よくわからない不思議な話を、小説家の人たちは、どんな風に料理するんだろうか。

( II )

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