最近のおすすめ警察関係もの
◎『南柯の夢』椹野道流著(講談社ノベルス)
待ちに待った新作です! トリックも謎解きもないと椹野道流先生は仰っていますが、法医学教室で働く院生の伊月崇君が指導教官である著者と同じ名前の伏野ミチルさんや都筑教授や幼馴染の新米刑事筧君たちと遺体と向き合い事件を解決する糸口を見つけたり時には捕らわれてしまったり元監察医の著者ならではの切り口と登場人物が投げかけるメッセージがドシンとズシンと心に響き毎回号泣してしまう作品なのです。そして出てくる料理も美味しそうでただ重いだけではなく会話のやりとりがセンス良いのです。今回のキーワードは女子高生とホットケーキとミイラ……前作に引き続いてるテーマでした。警察側ではないのでこの作品を読んでおくと警察小説もわかりやすいと思います。
◎『サイメシスの迷宮 完璧な死体』アイダサキ著(講談社タイガ)
警視庁特異犯罪分析班の神尾と変人と言われている上司・羽吹允が銀色の繭のような樹脂に包まれた美しい死体を捜査する。羽吹は過去のある事件から経験したことを忘れることができない超記憶症候群でその記憶で捜査をしていく。前半はソリッドでストイックな文章だったが、気づけば著者の熱量に読む私も熱くなっていた。243ページで私は著者にストレート負けし胸が熱くてこの作品をもっと読みたい。続きが読みたいと思った。 羽吹に振り回されながらぶつかっていく神尾のコンビに注目。スゴイ作品に出合えてよかった。
◎『MIX 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』内藤了著(角川ホラー文庫)
今回猟奇犯罪、異常犯罪捜査をお薦めしてみたが、私は小説において理由がない犯罪はナンセンスだと思っている(あくまでも私は)。一見死体のどぎつい描写や犯人は理解できないようで普通であったり理由があったりする。このシリーズは普通に見える比奈子が成長し厚田班のチームプレイで犯人を追い詰めていくところが大好きだ。検死官の死神女史こと石上妙子や鑑識官の三木など魅力的な登場人物が良く動いている。今回は人魚が狭山湖に揚がったところから始まる……人魚? と不思議に感じた方はぜひ悲しく恐ろしい事件の全貌をご覧いただきたい。とてもパワーを感じる作品だ。