編集者コラム
『異人の守り手』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作品の編集を担当しましたA田と申します。本作の舞台は幕末、慶応元年の横浜。開港から六年、横浜には日々多くの外国人が行き交うも、いまだ日本人と外国人の衝突はなくならず、外国人の中には、身の安全に不安をおぼえる人も多くいたとか。そんな中、人知れず闇から闇
今から10年前、山口県の集落で起きた連続殺人放火事件の真相に迫る『つけびの村』は、2019年に刊行され、事件ノンフィクションとしては異例のベストセラーになりました。同作はもともと、『週刊ポスト』で記者として活動していたライターの高橋ユキさんが小学館ノンフィクション大賞に応募した原稿がもとになっています。しかし、結果は
人は老いる。40代で実感する人は少なかろうが、50代の半ばも過ぎれば多くが実感しはじめるだろう。60代なら、なおさらだ。人は老いて、いずれ人生の表舞台から下りなければならなくなる。いくら足掻いても無駄なのだ。しがみついても醜さが増すだけだ。ヴィスティングも引退を意識する年齢になっている。人の名が思い出せなくなっている
「この本を読んで、死ぬのが怖くなくなったわ。ありがとう」本が大好きだった私の母は、その言葉を遺し、数ヶ月後になくなりました。それは私にとってとても大切な思い出で、故にこの小説は私にとって、とても大切な作品です。これは私が体験した小さなエピソードですが、この作品が多くの人の心に響き「救われた」「死生観が変わった」など多く
4+1回、本当に泣きました。『ほどなく、お別れです それぞれの灯火』単行本で謳われていた「4+1回泣けます」のコピー。「ほーん……?」とひねくれた目線を投げかけながら一読し、ものの見事に涙ぐんでしまいました。1.交通事故で高校生の息子を亡くした母親の心を解く、僧侶・里見の言葉に。2.自死を選んだおばあさんの、赤裸々な
『鴨川食堂ひっこし』の編集者コラムをご覧いただき、ありがとうございます。本作品の編集を担当しましたA田と申します。『鴨川食堂』は依頼人の「もう一度食べたい」を叶えるべく、料理人の流と探偵のこいしが「思い出の味」探しに奮闘する物語です。「次の巻はいつでるの?」という読者様からのお問い合わせも多い人気シリーズですが、10作
2009年に単行本が刊行された故・高山真さんの自伝的小説「エゴイスト」が今年2月に映画公開されました。映画化されるという情報が発表されたことをきっかけに原作もスポットライトを浴び、瞬く間にベストセラーになっています。14歳で母を亡くし、田舎町で本来の自分の姿を押し殺して生きてきた同性愛者である主人公の浩輔。しらがみの
1970年代「赤ちゃんあっせん事件」の当事者としてマスコミによって「悪人」のレッテルが貼られた産婦人科医・菊田昇。その後、多くの命を救うこととなる「特別養子縁組」の法律が1980年後半に制定されたのだが、この事件のおかげだったということを知る人は少ない。あっせん事件後も国を相手に不屈の闘志で闘い抜き、法を勝ち取った一
「大石誠之助を書きたいんです」開口一番、柳広司さんは言った。初めての打ち合わせの席だった。「大石誠之助」という名前を聞いて、どれくらいの人がピンとくるだろうか? 恥ずかしながら私も「ええと……、その方は一体どんな……」としどろもどろの反応しかできなかった。そんな情けない編集者に対し、柳さんは、誠之助がどういう人物であ
どんなに巨大な困難にぶち当たっても、絶対に諦めない不屈の老弁護士トム・マクマートリーの熱い闘いを描き、本家アメリカのみならず日本でも多くの読者の心を鷲摑みにした、胸アツ法廷エンタメ『ザ・プロフェッサー』シリーズ。四部作完結編の刊行から約一年。読者のみなさま、お待たせしました! シリーズの中でもトムと並ぶ人気を誇る、ト
偽札について語られる不穏な冒頭。ここから時空を超えた壮大な物語へと突き進み、予想を遥かに超える結末が待ち受ける。ロケットの打ち上げが行われる島に住む高校生・光二の話はもちろん、偽札に絡む仙台の大学教授・平沼についても語りたい。だが、この作品は熱く語り始めると思いがけずネタバレになってしまう恐れがあるので、とにかくこの
〈ヴァルナー&クロイトナー〉シリーズ第4作、『急斜面』が刊行されました! ドイツ推理作家協会賞(フリードリヒ・グラウザー賞)新人賞を受賞したデビュー作『咆哮』から続く、警察小説の注目作です。舞台は南ドイツ。ミースバッハ警察署の敏腕警部ヴァルナーと、なぜこの人が警察官なの……? という疑問が常につきまとう問題児クロイトナ
突然ですが、私、中学受験を失敗した者です。いや、今になって振り返ってみれば、〝しかたなく〟進学した公立中学校で得た出会いや、公立高校で経験したこと、すべて私の血肉となっていて、否定するものなどひとつもありません。なんなら中学受験の経験そのものも記憶の彼方に埋もれていたくらいですから、「失敗」は言いすぎな気もします。な
〝イヤミスの女王〟の異名を持ち、数々の衝撃的なミステリー作品を生み出してきた真梨幸子さん。でも、すごいのは、小説の内容だけではありません。毎作、書店でつい二度見してしまうほど装丁にインパクトがあるのです。『6月31日の同窓会』(実業之日本社文庫)では、美しくセッティングされた真っ白なテーブルに置かれたリンゴがナイフで突
「『口福のレシピ』といえば、これなんだよなあ」と個人的に思っているレシピがある。竹の子の料理だ。2019年の連載時は、原稿をいただいた時がちょうど旬の終わりで間に合わず、単行本化の準備をしていた2020年の4月、ようやくそれを作ることができた。新型コロナウィルス感染症の対策で仕事は在宅になって、スーパーでの買い物も人数
『都立水商!』は、室積光さんのデビュー作です。2001年に刊行されるや、水商売専門の高校という斬新な設定が大きな話題となり、猪熊しのぶさんによるコミック化が決定。累計250万部を超えるベストセラーになりました。それから年月は経過し、昨年12月に『都立水商! 2年A組』を、今年1月に連続刊行を実施した本作が、シリーズの完
昨年7月、長くお世話になっているドイツ・ミステリのエージェントに、翻訳家・浅井晶子さんをご紹介いただいたのが、この企画の始まりでした。浅井さんには当初、2012年にハヤカワ・ミステリの一冊として刊行されたオリヴァー・ペチュ〈首斬り人の娘〉シリーズの第二作のリーディングをお願いしました。17世紀、南ドイツの小都市ショー
この作品を初めて読んだとき──。一つ一つの短編がバラエティーに富んでいて、次にどんな物語がくるのかと、わくわくしながらページをめくったことを思い出します。彼氏の過去へと遡り、前の女とつきあわせないように画策したいって気持ち、よくわかる!! と共感したかと思えば、小学生男子のシビアな人間関係に胸が締め付けられたり。全く