読みきり小説

大どんでん返し第22回
第22話 直島 翔「試験問題」 ホテル・ニューオークラの秘密の会議室に足を踏み入れるなり、円遊亭歌介は首をすくめた。師匠の罵声が飛んできたからだ。「十分も遅れるやつがあるか!」「いえね、歌楽師匠、ボディーチェックが厳しいんですよ。この部屋に通されるまで体中触られて、高座のネタ帳まで取り上げられちまったんでさあ」歌楽はあ
大どんでん返し第21回
第21話 横関 大「オンライン家族飲み会」 博(父)「……いやあ、なかなか盛り上がったな。せっかくこうして集まったんだから、何か面白いことをやらないか? うーん、そうだな。こういうのはどうだ? それぞれ家族にも話していない秘密の一つや二つ、あるんじゃないか。それをこの場で発表するんだよ」昌子(母)「面白そうね」七瀬(妹
大どんでん返し第20回
第20話 谷津矢車「幻景・護持院原の敵討」 今日は非番ゆえ、日がな一日ここで畑仕事のつもりぞ。はは、なにを言う。あの一件で随分と報奨を頂いたがあくまで陪臣身分、主家から頂く切米で暮らしておるゆえ、内職は欠かせぬよ。今、肥溜めをこさえておって臭うが、許してくれい。敵討の話を聞きたい? よかろう。今、休もうと思っていたとこ
大どんでん返し第19回
第19話 真梨幸子「二人のマリー・テレーズ」 十年ほど前、有休をとって三泊五日でパリに行ったことがある。はじめての一人旅。特に目的があったわけでもパリにこだわりがあったわけでもないが、格安ツアーのその価格に惹かれて、つい申し込んでしまった。恋人のことで、姉と喧嘩したのも理由のひとつだったかもしれない。二日目だったか。フ
大どんでん返し第18回
第18話 柚月裕子「契約書の謎」 額に浮かんだ汗を、森垣はハンカチで拭った。ショッピングモールのテラス席を指定したのは自分だが、真夏の屋外は思っていた以上の暑さで、年金暮らしの年寄りにはかなり堪えた。森垣は暑さに耐えながら、飲みたくもないのに頼んだホットコーヒーを、じっと見つめた。兼子コーポレーションの社員──下田がや
大どんでん返し第17回
第17話 結城真一郎「昼下がり、行きつけのカフェにて」 「──で、夏海に相談っていうのはね」凜と顔をあげた彼女の黒髪が、肩口のあたりでふんわりと揺れた。店内BGMやキッチンの喧騒が遠ざかり、コーヒーカップに伸ばしかけていた私の手は止まる。なんだろう、と紡がれる言葉に耳を澄ます。「ストーカーされてると思う」「えっ!?」「
大どんでん返し第16回
第16話 澤村伊智「井村健吾の話」 「禿げたな」「黙れメタボ」振り返ると男性二人が、グラスを片手に笑い合っていた。禿げた方の名札には「木元浩平」、太った方には「斎藤琢磨」と書かれている。名札を見なければ誰が誰だか分からない。僕は斎藤くんに訊ねた。「元気?」「言うなよ。煙草止めたらこのザマだ」「俺も」と木元くん。
大どんでん返し第15回
第15話 澤村伊智「令和のショートショート」 浮気がバレた男は妻から離婚届を突き付けられ、多額の慰謝料を請求された。男は妻を殺すことにした。同時に、男は同僚も殺すことにした。入社して二十年近く、男は事あるごとに同僚に差を付けられ、先日も社内コンペで完敗を喫したからだ。男と妻の間には息子が一人いたが、独り立ちするまで養うだけの蓄えはあった。
大どんでん返し第14話
第14話 森 晶麿「すずらんの妻」 「なんでもっと早く帰ってこんかったん?」すずらんの花が咲き乱れる庭先に立ち尽くしていると、縁側から鋭い声が降ってきた。美那の妹だ。五年前はまだあどけなさの残る高校生だった。
大どんでん返し第13話
第13話 伊吹亜門「或る告白」 ある男を殺してやろうと思ったのがそもそもの始まりでした。いえいえ、お笑いになってはいけません。本当なのです。その男は古くからの知り合いでして、詳しい身上は伏せますが、兎に角私にとっては道義上許せない出来事があり、必ずこの手で息の根を止めてやるのだと固く心に誓ったのです。
大どんでん返し第12回
第12話 芦花公園「幽霊屋敷」 はい、来ました、ゆがみんオカルトちゃんねる。今日のゲストは林檎坂46のゆみみ。豪華ですね〜。おっ、霊能者の霧島葉子も来てくれた。中野で一番有名な心霊スポットということですからね、気合も入ります。
大どんでん返し第11話
第11話 織守きょうや「侵入者」 好みのタイプの女が通り過ぎたので、後をつけることにした。年齢は、三十代前半といったところか。女は、駅とは反対方向に向かって歩いている。時間帯を考えると、仕事を終え、自宅へ帰るところだろう。女は途中でコンビニに寄った。レジ袋が透けて、缶ビール一本と、つまみの小袋が見えている。
第10話 小川 哲「矜持」 「記事を書いたのはお前だな」タクシーを降りたところで、背後から男にそう声をかけられた。深夜まで続いた入稿作業を終えて、会社から帰宅したところだった。僕は後ろを振り返った。コートを着た体の大きい男が立っていた。
大どんでん返し第9話
 侍女が恭しく部屋の清掃の許可を求めた。姿見の前に立つ男は一瞥もくれずに促す。掃除などどうでもよかった。頭の中は今なお続く戦争の始末と、自身の進退でいっぱいであった。
大どんでん返しスペシャル第8話
第8話藤崎 翔「夢の小説」  都内の一等地に建つ豪邸。その客間で、家の主である若手作家と、担当の編集者が打ち合わせをしている。その作家は、公募の新人文学賞を二十代半ばで獲って華
大どんでん返し第7回
竹本健治「訪ねてきた女」 吾平という者、大の酒好きで、その日も寄合の酒宴に与り、したたかに呑んで、ようやく帰途についたのはとっぷりと日も暮れた頃だった。
大どんでん返し第6回
乗代雄介「客人の思惑」 別荘地をさらに離れた山の麓に、その別邸はある。主人が九月に急逝して以来、傷心の夫人は都内の邸宅から思い出多いこちらへ引っ込んで暮らしている。
大どんでん返しspecial
浅倉秋成「イズカからユウトへ」【イズカじゃなくてシズカへ(笑)】メール読んだよ。てかなんでメール? 普通にスマホのメッセージアプリ使えばよくね……って思ったけど、そういえばシズカはスマホよりパソコンのほうが文字打ちやすいって言ってたな。