読みもの

NEW
思い出の味 ◈ 中山祐次郎
第39回 「馬鹿野郎、辛すぎんだよ」  およそ医者とは思えぬ罵声で叱られたのは、駆け出し外科医だった30歳のころ。東京下町の救急病院で3ヶ月の修業をした。血の気の多い救急医たちに混じって、毎日運ばれて
NEW
上流階級 第12回
「あんたが店で働いてるところ、よくこっそり見に行ったけど、お客さんにぺこぺこしてるのよう見たわ」 「いやあ、それはまあ、こういう仕事だったらさ」 「お母さんもスーパーでよくぺこぺこするけど、それはおか
西川美和『スクリーンが待っている』
旅の記録  2015年の秋に佐木隆三さんが亡くなったのをきっかけに、1990年に刊行された『身分帳』に出合いました。新聞の追悼記事で、親友だった作家の古川薫さんが佐木さんの著書の中で『復讐するは我にあ
スピリチュアル探偵
本物の霊能者を探し求めて東奔西走。こんな活動を15年以上も続けていますと、霊能者と普通に友達関係ができあがってしまうことがしばしばあります。数年前に深夜の歌舞伎町で出会った、通称「魔女っ子」さんもその
        1  コンビニのドアが開いて、一人の少女が店内に入ってくる。夏物のカジュアルを着た、中学生くらいに見える華奢(きゃしゃ)な少女だ。彼女は急ぐ様子もなく、店内を見渡して、右手に向かって歩
上流階級その3
  「すごいところまで行きましたね」  事情を聞いて助太刀を頼んだ桝家は、やや呆(あき)れたような声で顔からシートパックを剥がした。 「この後に及んで引けないですね、それ」 「引けないし、たぶん自分で
ハクマン第51回
これが今年一発目の記事である。 しかし私の仕事は12月31日の17時に納まり、1月1日の0時18分には始まっていた。 これは仕事が忙しいからというわけではなく、もっとタイトにやれば正月休みなどいくらで
上流階級その3
「そういえば、私がもっと若い頃は、いまより音楽番組がもっとたくさんあった気がします。いつのまにかなくなりましたけど」  CDの売り上げがミリオンセールスを記録することもなくなり、皆 youtube で
上流階級その3
 結局、またしても実家に帰り損ねた。   いつものことだと母は笑って流してくれたけれど、こう帰る帰る詐欺が続くと、単なる親不孝を通り越して信頼関係に支障が出ているのではという気がする。 (ああ、働いて
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第9回
「それは恐らく、真面目な話なんでしょうけれど、でもごめんなさい、笑っちゃう」  そう言いながらアンティヌッティは笑みを浮かべた。しかしそれは決して嘲弄しているようではなかった。 「約束をしたんです」や
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第121回
   その試合から九日後、鴇田は星栄中ソフトボール部7番の彼女──死体発見後の報道で綿貫絵里香(わたぬきえりか)という名を知った──を犯した上で殺害した。  試合の翌日から、会員となったカーシェアリン
上流階級3
 次の日は、コーヒーを飲む時間もなく、朝から電話にメールにと対応に明け暮れた。 「わかりました。本日必ず伺いますので。大丈夫です。……はい。失礼します」  電話を切って思わずため息をつく。こんな日に限
上流階級3
 せっかく本店に来たからということで、芦屋川店には入っていないブランドにも立ち寄った。静緒と同じマンションに住む百合子(ゆりこ)・L・マークウェバーに頼まれた、ルイ・ヴィトンの新作のパーカーとキャップ
上流階級3
 NIMAさんにご紹介したのは、元町本店のすぐ側にある老舗の弁護士事務所Rで、オーナー弁護士の一人であるT先生が代理人を引き受けてくださることになった。  アシスタントにはIT関連に詳しい若手のM先生
辛酸なめ子「電車のおじさん」第23回
 気付いたら苦手な人のことを延々と考えてしまう。玉恵はそんなことでエネルギーを消耗したくなくて、電車のおじさんの語ったアドバイスを心の中でリピートしました。 「メガネには罪はない」  思い出しましたが
上流階級3
 弁護士にもいろいろある。本当にいろいろある。 「いや、一般人としては、国家試験通った人はみんなできる人で、ましてや司法試験なんて難関を突破した人はスーパーマンだって思うじゃない? でも実際はピンキリ
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
「響け!ユーフォニアム」のアニメが放送されていた2015年、私は人生の岐路に立たされていた。そう、就職活動である。アニメ化したら専業作家で問題ないだろうという気持ちと、いやいや人生そんなに上手くいかな
上流階級3
  NIMAさんは、あれこれ聞いてこず、黙って必要なだけ情報を渡してくれる静緒を気に入ったらしい。徐々に自分のことを話してくれるようになった。 「昔いじめられっ子でねー。中学で不登校になって家で絵ばか