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警視庁レッドリスト2
CASE1 シークレット・ガーデン : 男社会の女の園(2) 4 吉祥寺署は、吉祥寺の街の賑やかさから少し離れた五日市街道沿いにあった。五階建ての古く大きなビルで、約三百名が勤務している。一階の駐車場にセダンを停め、みひろは慎と署内に入った。受付で慎が名乗ると、一階の奥の署長室に通された。署長と会計課長に挨拶を済ませたところに用度係長の前田が来たので、彼の案内で二階に向かった。
ハクマン第61回
今日は、久しぶりに時間が出来たから5兆年ぶりに部屋の掃除と書類整理をするかと思ったところで、この原稿のことを思い出した。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第2回
2 フクホク食品黒崎工場は、一九八五年(昭和六十年)操業開始という年季の入ったカップ麺製造工場だが、管理の行き届いた実に清潔な工場だった。フクホク食品との縁は、この会社の品質管理担当を務めている西嶋常務が功一郎の著した『食品の品質管理 ここがツボ!』(小学館)の改訂版を読んで
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第143回
「そうだ」都築が言った。「公判前整理手続の段階で裁判官は心証を形成してはならない。裁判官が証拠を見ちゃいけないってことだ。そもそも受訴裁判所が公判前整理手続を担当する制度自体が間違ってる。あんたら裁判官はそれをわきまえるどころか、制度に便乗して公判前から平気で証拠に手を突っ込んでくる。本当は当事者追行主義なんて認める気
警視庁レッドリスト2
CASE1 シークレット・ガーデン : 男社会の女の園(1) 息を殺し、阿久津慎(あくつしん)は向かいを見つめた。体の前に両手でファイティングポーズを作った男が、じりじりと間合いを詰めて来る。男は無表情だが、全身から殺気を漂わせていた。
辻堂ホームズ子育て事件簿
2021年5月×日 やられた。とうとうやられた。今、私の目の前には、小説の連載原稿のゲラがある。見開きページの左下半分。文芸誌のレイアウトに合わせて綺麗に並んだ文字の上を、縦横無尽に走る幾本もの黒い線……。無論、犯人は娘である。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第142回
「検察官が主張する間接事実について、どの点をどのように争う?」公判前整理手続は公判の日程など審理計画を決めるために行う。あくまで公判の準備をする場で、公判中心主義という原則に従えば、裁判官がこの段階で心証を形成するようなことがあってはならない。だがとくに裁判員裁判では、裁判員の負担を軽減するためとして公判の日程を少しで
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
特効薬:リングフィットアドベンチャー 小学校の頃、通知表の体育の評定は大抵ろくなもんじゃなかった。運動が嫌いだったからだ。私の母親の教育方針の中にはいくつか奇妙なものが紛れ込んでいて、その内の一つに「ドッジボールが強ければ小学校生活はなんとかなる!」というものがあった。
若松英輔「光であることば」第5回
感じるものの彼方へ 初期ドイツ・ロマン派を象徴する人物の一人にノヴァーリスがいる。小説『青い花』の作者といった方がよいかもしれない。本名はフリードリヒ・フォン・ハルデンベルクという。一七七二年に生まれ、一八〇一年、二十八歳で世を去った。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第1回
第一部 1 二〇二一年二月十九日金曜日。帰宅は午後十一時過ぎだった。今週はシフトをずらして、夕方には帰宅できるようにしていたが、今朝、出勤してみると三日前に出荷したデコレーションケーキのクリームに糸くず状の異物が混入していたとのクレームが発生しており、慌ててラインをストップしてスタッフ総動員で原因究明に当たらなくてはな
ハクマン第60回
何がとはまだ言えないが、漫画が一つ連載終了することが決まった。理由は一点の曇りもない打ち切りなのだが、実は編集者サイドは「打ち切り」という言葉は使わない、「切り替え」や「区切り」と言ったりする。できちゃった婚を授かり婚と言うのと同じで、正直苦しいのだが、その言葉を使うことで殺傷事件を起こさずに済んでいる新婦の父親だっているはずだ。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第141回
「暑い中、二人にはよく頑張ってもらった。今日は存分にやってくれ」都築はジョッキを掲げた。志鶴と三浦もジョッキを合わせる。「くぅ~~」きんきんに冷えた生ビールが喉から胃へ染みわたる。ミディアムレアの熟成肉をナイフで切って嚙(か)み締めると口の中で肉汁と幸福感が溢(あふ)れた。ニューヨークに本店を持つステーキハウス。平野の
大どんでん返しspecial第1話
新釈『蜘蛛の糸』 一生懸命のぼった甲斐があって、さっきまで自分がいた血の池は、今ではもう暗の底に何時の間にかかくれて居ります。それからあのぼんやり光っている恐ろしい針の山も、足の下になってしまいました。この分でのぼって行けば、地獄からぬけ出すのも、存外わけがないかもしれません。
◇自著を語る◇ 滝田誠一郎 『奥会津最後のマタギ 自然との共生を目指す山の番人』
 猪俣昭夫さん(一九五〇年生まれ)は、江戸時代より前に奥会津・金山町の三条地区に移り住んだ旅マタギの系譜を継ぐ最後の一人。身長一八五センチの長身。すらっと伸びた長い脚。高倉健を彷彿させる男前。流行の服を着せればモデルのようであり、ダークスーツを着せれば大会社の重役のようにも見える。マタギという言葉からイメージする風体と
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第140回
 3 『大きな収穫だな、川村君』電話の向こうで都築が言った。「沼田さんへの聴取はすぐ証拠化します」志鶴は事務所へ戻ってパソコンの前に座っていた。「それと、23条照会をかけようと思うんですが」『23条──?』「沼田さんの話を聞いてひらめきました。Xのネオエースはカスタマイズされている。ネオエースにはカスタムの愛好者が多く
思い出の味 ◈ 阿部暁子
 普段はあまり自販機を利用しないのだけれど、寒くなってきて自販機に赤マークの温かい飲み物が登場すると、ついつい買ってしまうものがある。昭和っぽいデザインの缶に『おしるこ』と独特の味のある筆書きフォントで描かれた、あんこの粒入りの、でもお餅は入ってない、アレだ。高校生の頃、部活(吹奏楽部でトランペットを吹いていた)を終え
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第139回
「記憶に残ってたのは、あの二人、どういう関係なんだろうな、って気になったからだ。親子くらいの年の差に見えたが、どうもそんな感じじゃない。女の子は初対面みたいな固さだった。何か訳ありの親子なのか、それとも──そのあと晩飯の席でかあちゃんに、あれ、ひょっとして援交ってやつだったりしてな、なんて酒の肴(さかな)にしてたんだ。
ハクマン第59回
私は漫画家だが、漫画家とは極力関わらないようにしている。漫画家と関わると会うたびに物が2,3個消えるとか、そういう話ではない。私はそもそも、妬み嫉みを擬人化した存在である。これがソシャゲとかだったら、ヤキモチ焼きの美少女にデザインされるのだろうが、現実は厳しい。