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下村敦史『アルテミスの涙』
20作目 『闇に香る嘘』(講談社)で第60回江戸川乱歩賞を受賞してデビューしてから早くも7年。『生還者』(講談社)、『真実の檻』(KADOKAWA)、『黙過』(徳間書店)、『刑事の慟哭』(双葉社)、『悲願花』(小学館)、『同姓同名』(幻冬舎)、『ヴィクトリアン・ホテル』(実業之日本社)等々、各社で警察小説や医療ミステリー、山岳ミステリー、冒険小説と様々なジャンルの作品を書いてきました。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第157回
『……ありがとうございます』キャスターが沈痛な面持ちで声をかけた。『天宮さん。四日後に初公判を控える裁判について、弁護士でありフェミニストでもあるお立場からご意見を』『はい。報道によれば増山被告はジュニアアイドルのDVDを多数所持している。おおむね十五歳以下の低年齢の女子が、大人と同じように水着など露出の多い恰好
ハクマン第67回
ようやくコロナウィルスのワクチンの予約が出来た。ネット予約争奪戦に挑んでは惨敗してきたが、一足早く予約が取れ、打ちに行った家人から「今予約受付しているらしい」という情報があり、本当にそれで難なく予約できた。
一木けいさん
物語の舞台が異世界だろうと実在する場所だろうと、私は創作で現実を思い知らされたいのだと思う。この十年で衝撃的に面白かった漫画は『先生の白い嘘』と『ぷらせぼくらぶ』。鳥飼茜さんはちょっともさくて200%セクシーな男を描く天才。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第8回
3 起こされたのは深夜だった。「ねえ、功一郎さん、起きて」肩を揺さぶられて目を開けるとパジャマ姿の渚がベッドの脇に立っていた。いつの間にか部屋の明かりが灯っている。「美雨の様子がおかしいの」一瞬で意識がクリアになる。身体を起こし、サイドテーブルの上に置かれた目覚まし時計の針を読む。午前二時十五分。日付は変わり、すでに土
 フェアか、後出しか、それが問題だ。いや、問題じゃないかもしれないけど。何の話かと言えば、どんでん返しの仕掛けの話だ。フェアつまり公正などんでん返しとは、きっちり伏線が張られており、種明かしされたときに「なるほど!」と膝を打てるようなどんでん返し。後出しは、その逆で伏線なしの意外な展開で驚かせるどんでん返し。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第156回
 事件についての報道をまとめた映像が流れた。『この事件で最初の犠牲者となった浅見萌愛さんのお母様が、浅見奈那さんです。一人娘の萌愛さんをあのような形で奪われてまだお辛(つら)いと思いますが、今日はようこそおいでくださいました』浅見は身を固くしたまま小さくうなずいた。
大どんでん返し第6回
乗代雄介「客人の思惑」 別荘地をさらに離れた山の麓に、その別邸はある。主人が九月に急逝して以来、傷心の夫人は都内の邸宅から思い出多いこちらへ引っ込んで暮らしている。
思い出の味 ◈ 河野 裕
父と鱒寿司 私は徳島県の出身で、幼いころは長期休暇の度に、大阪で暮らす祖母のところまで遊びに行った。当時はまず船で和歌山に渡ってから電車で大阪に向かうルートが定番だった。船内には座席の他に、寝転がって過ごせるよう、床が絨毯張りになっている区画があった。その絨毯の上で、なんとなく即席の縄張りみたいなものを確保すると、父が
辻堂ホームズ子育て事件簿
2021年8月×日 我が家のテレビのチャンネルは、ほとんど常時、NHKのEテレに固定されている。娘が起きている間、子ども向け以外の番組を見ることはない。娘が生まれる前までは...
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
作家、家を探す。 家探しって、楽しいけどめんどくさい。大学を卒業して上京するまで、私はずっと京都府宇治市の実家に住んでいた。宇治はかなり住みやすい街だ。買い物には困らないし、自然も多いし、近くには文化遺産もあるし。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第155回
第十章──審理 1 『私の仕事は、依存症の人の治療をすることです』テロップで〈精神保健福祉士〉と紹介された男性が言った。『性犯罪を犯した人の再犯防止治療も行っています』『逮捕され服役している受刑者や、保護観察を受けている人への再犯防止プログラムですね?』司会を務める女性キャスターが補足する。
「どんでん返し」に欠かせないものといえば、やはりフィニッシング・ストローク――最後の一行で物語をひっくり返すのが一番の妙味でしょう。おすすめ作品を挙げるなら、テリー・ビッスンの「マックたち」(中村融訳)。文庫本で20ページ足らずの短編ですが、ラストの一行(正確には一語)できれいに落ちる。
直島 翔『転がる検事に苔むさず』
自己都合的な仮説「読めれば書ける」は本当か 本の話です。かれこれ三十数年前、東京で学問に身の入らない大学生をしていたころ、図書館で挫折を味わったことがあります。
長岡弘樹『教場X 刑事指導官・風間公親』
記憶に残る指導官 これまでの人生で、「指導官」と呼ばれる人物から何か教えてもらった経験があるだろうか……。しばらくのあいだ考えてみたが、心当たりは一つだけだった。自動車学校での教習である。
若松英輔「光であることば」第8回
たましいの燈火――たましいとは何か Ⅰ 「たましい」とは何か。そんなことをずっと考えている。答えがでないことは分かっているのだが、長く続く危機の時代にあって、「たましい」をはたらかせなければならない、そう感じることが多いからかもしれない。ここでいう「たましい」は、先の戦争で叫ばれた大和魂とはまったく関係ない。また、どこ
『ロートレック荘事件』筒井康隆。「どんでん返し」をコンセプトにしたストーリーを考える際、もっとも大事なのは「派手にどんでん返すこと」ではなかったりします。派手に返すのは当たり前でして、返しただけでは「いまいち」以上の水準にならないからです。問題なのは「返したあとにどんな景色が広がるか」。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第7回
2  六時過ぎに起き出し、ベッドから降りて軽い体操を行っていると看護師が検温にやってくる。熱は平熱、血圧も異常なし。身体を動かしながら、どこかしら身軽な感じがして、最初は爽快な気分のせいだろうと思っていたが、血圧が普段よりずいぶんと低いのを知り、気分のためではなく本当に身体が軽くなったからだと気づいたのだった。確かに、