エッセイ

ハクマン第61回
今日は、久しぶりに時間が出来たから5兆年ぶりに部屋の掃除と書類整理をするかと思ったところで、この原稿のことを思い出した。
辻堂ホームズ子育て事件簿
2021年5月×日 やられた。とうとうやられた。今、私の目の前には、小説の連載原稿のゲラがある。見開きページの左下半分。文芸誌のレイアウトに合わせて綺麗に並んだ文字の上を、縦横無尽に走る幾本もの黒い線……。無論、犯人は娘である。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
特効薬:リングフィットアドベンチャー 小学校の頃、通知表の体育の評定は大抵ろくなもんじゃなかった。運動が嫌いだったからだ。私の母親の教育方針の中にはいくつか奇妙なものが紛れ込んでいて、その内の一つに「ドッジボールが強ければ小学校生活はなんとかなる!」というものがあった。
若松英輔「光であることば」第5回
感じるものの彼方へ 初期ドイツ・ロマン派を象徴する人物の一人にノヴァーリスがいる。小説『青い花』の作者といった方がよいかもしれない。本名はフリードリヒ・フォン・ハルデンベルクという。一七七二年に生まれ、一八〇一年、二十八歳で世を去った。
ハクマン第60回
何がとはまだ言えないが、漫画が一つ連載終了することが決まった。理由は一点の曇りもない打ち切りなのだが、実は編集者サイドは「打ち切り」という言葉は使わない、「切り替え」や「区切り」と言ったりする。できちゃった婚を授かり婚と言うのと同じで、正直苦しいのだが、その言葉を使うことで殺傷事件を起こさずに済んでいる新婦の父親だっているはずだ。
◇自著を語る◇ 滝田誠一郎 『奥会津最後のマタギ 自然との共生を目指す山の番人』
 猪俣昭夫さん(一九五〇年生まれ)は、江戸時代より前に奥会津・金山町の三条地区に移り住んだ旅マタギの系譜を継ぐ最後の一人。身長一八五センチの長身。すらっと伸びた長い脚。高倉健を彷彿させる男前。流行の服を着せればモデルのようであり、ダークスーツを着せれば大会社の重役のようにも見える。マタギという言葉からイメージする風体と
思い出の味 ◈ 阿部暁子
 普段はあまり自販機を利用しないのだけれど、寒くなってきて自販機に赤マークの温かい飲み物が登場すると、ついつい買ってしまうものがある。昭和っぽいデザインの缶に『おしるこ』と独特の味のある筆書きフォントで描かれた、あんこの粒入りの、でもお餅は入ってない、アレだ。高校生の頃、部活(吹奏楽部でトランペットを吹いていた)を終え
ハクマン第59回
私は漫画家だが、漫画家とは極力関わらないようにしている。漫画家と関わると会うたびに物が2,3個消えるとか、そういう話ではない。私はそもそも、妬み嫉みを擬人化した存在である。これがソシャゲとかだったら、ヤキモチ焼きの美少女にデザインされるのだろうが、現実は厳しい。
夏川草介『臨床の砦』
コロナ最前線の砦から 本書『臨床の砦』は、コロナ診療の最前線を描いた小説である。最前線といっても、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)が登場するような高度医療機関ではない。呼吸器内科医も感染症専門医もいない、地方都市の小さな感染症指定医療機関が舞台である。
長崎尚志『キャラクター』
十年、二十稿のシナリオから生まれた小説 画力は抜群だが、マンガ家として一本立ちするには何かが欠けている青年——万年アシスタントに甘んじていた彼が、たまたま猟奇殺人事件を目撃してしまう。青年はその犯人をモデルにマンガを描き大ヒットするが、一番応援してくれたファンは、当の殺人鬼だった……!?
若松英輔「光であることば」第4回
なぜ、物を書くようになったのか。若松さんにとっての「言葉」体験とは── 書くことの爆発 幼稚園に通うのが嫌だった。そのころから集団行動が苦手だった。それでもどうにか卒園できたのは、その教育方針がある特殊なものだったからかもしれない。カトリック天使幼稚園という名前のとおりの場所で、教会が併設されていた。
辻堂ホームズ子育て事件簿
2021年4月×日 「赤ちゃん」とはいつまでを指すのか、ふと気になって調べてみた。どうやら正確な定義はないらしい。生後28日未満を新生児、それ以降の0歳児を乳児、1歳から小学校入学前までの子どもを幼児と呼ぶことだけが、母子健康法で決まっている。
劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
 劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(原作は小学館文庫)の福岡公演開幕を記念したスペシャル企画の第2弾は、辻村深月さんの観劇エッセイです。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 恋とはどんなものかしら。噂によると、心臓のドキドキが抑えられず、頭からそれが離れない。寝ても覚めてもそれのことばかり考えてしまって、やらなきゃいけないことまで手に着かない。息苦しさが募っていって、だけどそれがあることにホッとしている自分もいる。こういう存在に私は心当たりがある。ずばり、「締め切り」だ!
劇団四季「ロボット・イン・ザ・ガーデン」
 3月に大盛況のうちに東京公演を終えた劇団四季オリジナルミュージカル『ロボット・イン・ザ・ガーデン』(原作は小学館文庫)。今日(4/29)の福岡公演開幕を記念し、演劇をこよなく愛する二人の作家が劇団四季の会報誌「ラ・アルプ」に寄稿した観劇エッセイを、2日間に渡って特別公開します!
佐々木裕一 『義士切腹 忠臣蔵の姫 阿久利』
忠臣蔵の執筆は時代小説作家の義務 題名は、ある編集者さんから言われた言葉です。私は広島県三次市で生まれ育ち、幼い頃から時代劇が大好きでした。四十歳を過ぎた頃に、「読む時代劇」をテーマに時代小説を書きはじめました。時々、小説のネタに詰まることもあります。そんな時知人から、「三次にはいい材料がたくさんあるでしょ」と、ヒントをいただきました。  
ハクマン第58回
先日何回か仕事をさせてもらった広告系の会社から「インフルエンサーマーケティングについてリモートヒアリングをさせてくれないか」という依頼があった。「この依頼内容を理解する知能がこちらにない」という理由で断ろうかと思ったが、世話にはなっているし、次の仕事に繋がるかもしれない。
遠田潤子『緑陰深きところ』
二人の旅が皆様の心に残りますように。 高校生の頃、文化祭で有志が上映した「真夜中のカーボーイ」を観ました。ダスティン・ホフマンとジョン・ボイト演じる、ダメ男二人の友情を描いたロードムービーの傑作です。私は映画に没入し、ラストにはボロ泣きしました。映画を観てあんなに泣いたのは「砂の器」以来です。