エッセイ

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ハクマン第86回
私はこのようなコラムや漫画など、いわゆるエッセイ系をクソほど書いている。最近エッセイ業界に激震が走る出来事があった。詳細は省く、というか怖過ぎて書けないが、エッセイ漫画のネタにされていた作者の親族側が実はすごく嫌だった、という話である。しかしこのエッセイに書かれた側が激おこ脱糞丸という現象はそこまで珍しくなく、前までジ
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青柳碧人『ナゾトキ・ジパング』
ジパング誕生秘話 元号が令和に変わる少し前のこと。仕事場の本棚に並ぶエラリー・クイーンの「国名シリーズ」の背表紙を眺めていて、「旧国名シリーズ」というアイディアが浮かんだ。旧国名というのは、伊勢とか備中とか、かつて日本で使われていた、歴史の教科書で見るような地名。『ローマ帽子の謎』『フランス白粉の謎』のように、『伊勢え
作家を作った言葉〔第6回〕三浦しをん
 小説って本当に自由ですごいものなんだなと痛感した最初の一冊は、丸山健二の『水の家族』だ。中学生のころに読み、だからといって「私も小説家になりたい!」とはまったく思わず、その後もボーッと日々を過ごしていたけれど、小説という表現方法の奥深さ、魅力に気づかされ、ますます読書大好き人間と化すきっかけになったのはたしかだ。長じ
降田 天『さんず』
まえがきのようなもの この作品を「どのように」PRするかについて、担当者と何度も話し合ってきました。本作は自殺幇助業者という架空の業者を扱ったフィクションであり、我々は根っからのフィクション作家です。不道徳なこと、不謹慎なことを含む非現実の出来事を頭の中で想像し、作品として出力する仕事をしています。とはいえ、作品ごとに
ハクマン第85回
恐ろしいことにまた締め切りが近づいているのだが、当然のように書くことがない。あまりにも書くことがなさすぎて何かネタになるようなことがないかとグーグノレで「漫画家」と検索してしまった。漫画家が書くことがなさすぎて「漫画家」でググってしまうというのは、セックスのことを知りたすぎて辞書でセックスと引いた上に蛍光マーカーでチェ
# BOOK LOVER*第6回* 広末涼子
 人生で悩んでいた時期は、いつも哲学の本を手に取っていた気がします。高校・大学時代は常にドラマや映画の台本を3、4冊持ち歩き、それぞれの物語に感情移入する日々でした。だからこそ、心をクールダウンさせてくれる何かを無意識に求めていたのかもしれません。人の心を揺さぶるストーリーの対極にあって、自分が言葉にできない感情に形を
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年5月×日 辻堂ホームズ子育て事件簿、などというタイトルをつけているからには、たまにはミステリっぽいことを書かねばなるまい。先日、洗濯機を回そうとして、思いのほか中身がいっぱいであることに気がついた。洗濯物の量がやけに多く、蓋すれすれまで溜まっている。「昨日天気が悪くて洗濯しなかったからかなぁ、干すの面倒だな…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
めいちゅう30% 先日、前撮りに行ってきた。前撮りというのは、結婚式より前の日にドレスや着物、衣装に身を包んで記念写真を撮影することだ。式で使うウェルカムボードやムービーなどに写真データを使用することも多いため、式の数か月前に撮る人が多いらしい。今回私は屋外での撮影を予定していたので、二週間前から天気予報を睨めっこす…
ハクマン第84回
締め切りが終わったと思ったらもう次の締め切りである。この連載を始めて痛感したのは、隔週で漫画家の生活に特筆すべきことが起こるわけがない、ということである。漫画家でなくても、大体の人間はそうだろう。多重債務者でもない限りはそう毎回ジャンプ漫画みたいなアツい展開は訪れない。逆に言えば、今からあらゆる消費者金融から金を借り、
作家を作った言葉〔第5回〕李 琴峰
 文学を志し始めた十代、様々な作家を読み漁った。中でも張愛玲に惹かれた。正直、彼女の小説は当時の自分には難しかったが、いくつかの名言が印象に残った。「有名になるのは早いに越したことはない」。中国語圏を代表する女性作家もそう言っているのだ。その言葉は十代の自分に深く刺さった。実際、張愛玲はかなり早くから文名を揚げた。十八
若松英輔「光であることば」第12回
学びと勉強 足掛け四年勤務した大学を辞めた。最初から腰掛のつもりだったのではない。前職に区切りをつけた転職だった。十五年ほど前に起業した会社の負債を完済したうえで、経営のバトンもしかるべき人に渡して、大学の門をくぐった。環境を整え、決意を自分に言い聞かせようとしたつもりだったが、それでも辞職の決断をしたのにはそれなりの
# BOOK LOVER*第5回* けんご
 大学3年の夏。鬱陶しいほど暑い夏。身体も心も腐り切った夏だった。小学3年から野球を続けていた僕は、13年目にして努力を忘れていた。やる気は皆無だった。何かと理由を付けて練習をサボる毎日。それがどれだけ恥ずかしいことか、この文章を書きながら痛感している。当時から、小説を読むのは好きだった。暇があれば書店に足を運び、学生
乗代雄介『パパイヤ・ママイヤ』
もっと光を! 小説の舞台である小櫃川河口干潟は、木更津駅から十分ほどバスに乗り、そこから徒歩で三十分という場所にある。足を運びやすい場所ではないが気に入って、手帳によると二十回行ったらしい。潮の満ち引きが見たくて朝から出向き、風景を書きとめ、蟹と戯れ、ゴミを漁り、飲み食いし、浜で遊び、昼寝して、夕焼けを見て帰る。一日い
ハクマン第83回
これを書いているのは5月6日であり、人によってはGWが終焉、今日から出社という者もいるだろう。「GW」を「ガッデムウィーク」と読むのは漫画家他、定休という概念がない職業の者にとって常識である。懲役経験者が「2ヶ月」を「ニゲツ」と読むぐらい自然なことだ。だが最近、識者の間で「ゴッサムウィークでは」という新説が提唱されてい
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年4月×日 最近『サザエさん』のアニメを見るのにハマっている。子どもではなく、夫が。しかもわざわざ録画しておいて、それを金曜日や土曜日の夜に再生する。どうしてリアルタイムで見ないのかというと、本来なら日曜の夕方に放送されている番組を〝先取りして〟視聴することで、「『サザエさん』がやってるのに明日も休みだ!」と爽快な…
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
幸福を呼ぶ猫 実家には現在猫が二匹いる。マンチカンの「ムタ」とさび猫の「ナナ」だ。年は大体二歳差ほどあり、ムタの方が先住猫だ。「ムタ」という名前はジブリ映画『猫の恩返し』に登場するムタさんからとった。身体が大きく、ちょっとぽっちゃりしていたからだ。前に飼っていた猫も「バロン」と名前を付けていて、我が家ではジブリ映画のキャラクターから...
ハクマン第82回
先日Ⓐ先生がお亡くなりになられた。ここでうっかりF先生作品の話を始める痛恨のミスは犯したくないのでちゃんと調べたが、Ⓐ先生といえば、オバケのQ太郎、プロゴルファー猿、笑ゥせぇるすまん、怪物くんなど、どれも我々世代が幼少期一度はテレビで見た作品を生み出したレジェンド作家である。しかし Twitter に流れてきたⒶ先生エ
新庄 耕『夏が破れる』
詮ない抵抗の末に あとがきでも少し触れたようにこの「夏が破れる」は、当初の構想では、清涼飲料水のコマーシャルフィルムのごとき爽やかな青春群像劇をイメージしていた。にもかかわらず、終わってみれば、青春とは真逆のサスペンススリラーに様変わりしていたのはどういうわけだろう。連載中は、物語の風呂敷をたたむのに精一杯で作品を俯瞰