連載小説

◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第157回
『……ありがとうございます』キャスターが沈痛な面持ちで声をかけた。『天宮さん。四日後に初公判を控える裁判について、弁護士でありフェミニストでもあるお立場からご意見を』『はい。報道によれば増山被告はジュニアアイドルのDVDを多数所持している。おおむね十五歳以下の低年齢の女子が、大人と同じように水着など露出の多い恰好
◇長編小説◇白石一文「道」連載第8回
3 起こされたのは深夜だった。「ねえ、功一郎さん、起きて」肩を揺さぶられて目を開けるとパジャマ姿の渚がベッドの脇に立っていた。いつの間にか部屋の明かりが灯っている。「美雨の様子がおかしいの」一瞬で意識がクリアになる。身体を起こし、サイドテーブルの上に置かれた目覚まし時計の針を読む。午前二時十五分。日付は変わり、すでに土
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第156回
 事件についての報道をまとめた映像が流れた。『この事件で最初の犠牲者となった浅見萌愛さんのお母様が、浅見奈那さんです。一人娘の萌愛さんをあのような形で奪われてまだお辛(つら)いと思いますが、今日はようこそおいでくださいました』浅見は身を固くしたまま小さくうなずいた。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第155回
第十章──審理 1 『私の仕事は、依存症の人の治療をすることです』テロップで〈精神保健福祉士〉と紹介された男性が言った。『性犯罪を犯した人の再犯防止治療も行っています』『逮捕され服役している受刑者や、保護観察を受けている人への再犯防止プログラムですね?』司会を務める女性キャスターが補足する。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第7回
2  六時過ぎに起き出し、ベッドから降りて軽い体操を行っていると看護師が検温にやってくる。熱は平熱、血圧も異常なし。身体を動かしながら、どこかしら身軽な感じがして、最初は爽快な気分のせいだろうと思っていたが、血圧が普段よりずいぶんと低いのを知り、気分のためではなく本当に身体が軽くなったからだと気づいたのだった。確かに、
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第154回
「……はは」がらんとした事務所で力ない声が出た。笑えない文章だ。まったく笑えない。以前も抱いた疑問が浮かんだ。これを書いているのはどういう人物なのだろう。このサイトを教えてくれた三浦俊也(みうらしゅんや)によれば「マエストロ」はロースクールに通ったこともある人物らしいが、プロフィールの記載はない。三浦は記事のどこかで
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第153回
 裁判官たちが立ち上がり、志鶴や傍聴人も起立し、一礼した。星野はよろよろとこちらへ戻ってきた。二人の刑務官をおそろしげに見る。彼らの間の席に戻るべきか迷っているようだ。刑務官たちは彼女など存在しないかのように正面を向いて廷吏を待っている。「大丈夫ですよ、星野さん。あなたは自由の身です」志鶴は声をかけた。「拘置所には戻り
「ワラグル」スピンオフ小説
2月27日 from 瀬名 ……あれから十年後(なんかこんなんあった方がいいかなと思いまして)。ラリーさん、お久しぶりです。瀬名です。ラリーさんに送っていた日記を十年ぶりに読み返してみて、あの頃のことが鮮明に頭をよぎりました。優勝する前のときって、俺もう芸人辞めようかと思うほど追い込まれていたんですね。何か当時の切羽詰まった気持ちを思い出しました。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第6回
第二部 1 「本部長、そろそろ時間ですよ」耳元に響く声で、功一郎(こういちろう)は我に返った。「ああ……」と反射的に返したものの、頭がぼんやりしていて目の前に立っている人間もかすんで見える。長い時間、深く眠っていたところをいきなり起こされたような感じだった。何か大事な夢を見ていた気がする。「本部長、あと五分です」ようや
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第152回
 3  気がつけば十二月も終わりが押し迫っていた。年末年始の休みを挟んで、星野沙羅の控訴審第三回公判期日は一月八日と決まった。増山の審理計画を策定する公判前整理手続も東京地裁で持たれる中、ばたばたと年を越した。母親が実家へ連れて行った妹の杏(あん)は、正月も帰ってこなかった。「正月くらいは一緒にと言ったんだけど」父親が
「ワラグル」スピンオフ小説
6月13日 from 瀬名 ……ラリーさん、これはないですわ。よし太が読んでるってわかってたらこんなこと書きませんよ……まあでもこの日記のおかげで、あのネタができたんですもんね……複雑な気分ですが、ありがとうございます。
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第151回
「わかりました。職場でのお酒についてお訊ねします。あなたは普段、接客の際、自分もお酒を飲んでいますか?」「はい」「その量というのは、日によって多かったり少なかったりするものでしょうか」「いえ。だいたい同じような量です──ていうか、上限が決まってます」「上限が決まっている? どういう意味か説明してもらえますか」 
「ワラグル」スピンオフ小説
5月28日 from 瀬名 ……わかりました。じゃあ周りのスタッフに牧野のことを訊けという指示にだけは従います。でも俺はもうラリーさんに付いてもらわないと決めたんで。
警視庁レッドリスト2
CASE2 マインドスイッチ : 駆け出し巡査はストーカー!?(4) 11 生田が尾行の被害届は出さないと言うので、続きは明日ということにして生田、水野ともに帰宅させた。多々良は柴崎と高橋への対応に向かい、みひろと慎は会議室に戻った。
◇長編小説◇白石一文「道」連載第5回
5 「開始」の声で我に返った。周囲で問題用紙を一斉に表に返す音がする。功一郎は、そのザッザッという音を聞きながら啞然とした思いで前後左右をキョロキョロと見回す。自分の身に一体何が起こっているのか分からない。教室全体に張り詰めた空気がみなぎり、すぐに受験生たちが鉛筆を走らせる音が聞こえ始めた。それを耳にして、功一郎も
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第150回
「はい──」酒井が法壇を見た。「普通なら信じられなかったと思います。でも私は沙羅──星野さんの言ったことを信じました。栗原さんは星野さんに怖いくらい執着していたし、怒るとすぐ暴力を振るうような人だとひと月前の事件で思い知ったので」十和田は異議を唱えたくてじりじりしていそうだった。栗原未央はものすごい目で酒井をにらみつけ
「ワラグル」スピンオフ小説
4月29日 from 瀬名 この感じで書けと言っていただき胸をなでおろしました。もしかしたらラリーさんに激怒されるかもと危惧(きぐ)していたんで。ただこんなことをしていてKOMの決勝に行けるんでしょうか? この日記を書くのも時間がかかります。その時間をネタ作りにあてた方がいいんじゃないんでしょうか?
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第149回
 2 「審理を始めます」法壇で法衣姿の寺越が告げた。星野沙羅の控訴審第一回公判期日。東京高裁の法廷は、第一審と同様公開されている。傍聴席には一般の傍聴人の他、酒井夏希など星野沙羅の友人たちもいた。第一審では乳飲み子の孫を抱えた栗原学の母親もいたが、今日は彼女の姿は見えなかった。二人の刑務官に付き添われて