連載小説

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上流階級 第13回
 今日は雨なのでランニングにも行かず、家で英語のスカイプレッスンをしていたという桝家は、静緒がバッグの中から物件の資料を出すと、驚いた顔をした。 「ほんとに家買うんですか?」 「いい物件があればね」
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第10回
   そしてベッドから起き上がって服を着終えた時から、ニコデモの生活は一変した。靴紐(くつひも)を結び終えてもいないうちからノックの音がして、三つ揃えの背広を着たやせぎすの男が入ってきたかと思うと、楽
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第123回
「③の目撃証言、これ、怪しいよなあ」都築が言った。「増山さんが逮捕されたあと、改めて現場付近で聞き込みをしたら、女子中学生をつけている増山さんを見た人物が現れたって──増山さんが逮捕されたの、最初の事
上流階級 第12回
「あんたが店で働いてるところ、よくこっそり見に行ったけど、お客さんにぺこぺこしてるのよう見たわ」 「いやあ、それはまあ、こういう仕事だったらさ」 「お母さんもスーパーでよくぺこぺこするけど、それはおか
        1  コンビニのドアが開いて、一人の少女が店内に入ってくる。夏物のカジュアルを着た、中学生くらいに見える華奢(きゃしゃ)な少女だ。彼女は急ぐ様子もなく、店内を見渡して、右手に向かって歩
上流階級その3
  「すごいところまで行きましたね」  事情を聞いて助太刀を頼んだ桝家は、やや呆(あき)れたような声で顔からシートパックを剥がした。 「この後に及んで引けないですね、それ」 「引けないし、たぶん自分で
上流階級その3
「そういえば、私がもっと若い頃は、いまより音楽番組がもっとたくさんあった気がします。いつのまにかなくなりましたけど」  CDの売り上げがミリオンセールスを記録することもなくなり、皆 youtube で
上流階級その3
 結局、またしても実家に帰り損ねた。   いつものことだと母は笑って流してくれたけれど、こう帰る帰る詐欺が続くと、単なる親不孝を通り越して信頼関係に支障が出ているのではという気がする。 (ああ、働いて
◇長編小説◇藤谷 治「ニコデモ 風は思いのままに吹く」連載第9回
「それは恐らく、真面目な話なんでしょうけれど、でもごめんなさい、笑っちゃう」  そう言いながらアンティヌッティは笑みを浮かべた。しかしそれは決して嘲弄しているようではなかった。 「約束をしたんです」や
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第121回
   その試合から九日後、鴇田は星栄中ソフトボール部7番の彼女──死体発見後の報道で綿貫絵里香(わたぬきえりか)という名を知った──を犯した上で殺害した。  試合の翌日から、会員となったカーシェアリン
上流階級3
 次の日は、コーヒーを飲む時間もなく、朝から電話にメールにと対応に明け暮れた。 「わかりました。本日必ず伺いますので。大丈夫です。……はい。失礼します」  電話を切って思わずため息をつく。こんな日に限
上流階級3
 せっかく本店に来たからということで、芦屋川店には入っていないブランドにも立ち寄った。静緒と同じマンションに住む百合子(ゆりこ)・L・マークウェバーに頼まれた、ルイ・ヴィトンの新作のパーカーとキャップ
上流階級3
 NIMAさんにご紹介したのは、元町本店のすぐ側にある老舗の弁護士事務所Rで、オーナー弁護士の一人であるT先生が代理人を引き受けてくださることになった。  アシスタントにはIT関連に詳しい若手のM先生
辛酸なめ子「電車のおじさん」第23回
 気付いたら苦手な人のことを延々と考えてしまう。玉恵はそんなことでエネルギーを消耗したくなくて、電車のおじさんの語ったアドバイスを心の中でリピートしました。 「メガネには罪はない」  思い出しましたが
上流階級3
 弁護士にもいろいろある。本当にいろいろある。 「いや、一般人としては、国家試験通った人はみんなできる人で、ましてや司法試験なんて難関を突破した人はスーパーマンだって思うじゃない? でも実際はピンキリ
上流階級3
  NIMAさんは、あれこれ聞いてこず、黙って必要なだけ情報を渡してくれる静緒を気に入ったらしい。徐々に自分のことを話してくれるようになった。 「昔いじめられっ子でねー。中学で不登校になって家で絵ばか
上流階級3
「塾でも、K大付属豊中中は難しいから、ランクを落として付属茨木中はいかがですかっていうのよ。私はまあ、結局最終的にK大に入れるならいいか、と思っていたんだけど」 「なにか問題が?」 「お姑さんが、反対
上流階級3
「なんて?」 「だから、転職」 「うそでしょ」 「できる人間が、もっといい待遇を求めるのはあたりまえでしょ。会社が困るなら、もっと給料払って引き留めれば良い」  彼の発言は、どこからどうつついても正論