今日のメシ本 昼ごはん
お昼は貴重な読書タイムである。本を読む時間や買うお金を捻出するためにも、食べるものは手軽に安く済ませられるものがいい。そのうえ、おいしければ言うことはない。
以前はコンビニで弁当などを買うことが多かったが、いまは週1~2回スーパーに足を延ばして買い物をしている。
ただ、当店の事務所には、電子レンジとポットはあるがガスがない。そこで重宝しているのが、レンジで麺類をゆでることができる調理器。便利なものだ。
○月×日
今日はうどん。ゆでうどんはお値打ちなので出番が多い。スキマ時間をつないで、松崎有理『架空論文投稿計画』(光文社)を一気に読了する。研究と論文をめぐるユーモアとサスペンス。おもしろい本を読むと、その本を軸にしたフェアを作りたくなる。キーワードが連鎖して浮かび、あれこれ選んで発注すると、あっという間に棚1段分くらいにはなる。こういう本に出会うことは、読書の醍醐味のひとつだろう。
○月×日
当店は、JR高槻駅から歩道橋で直結のショッピングセンター・アクトアモーレの一階にあり、お隣は昭和レトロな雰囲気を醸す素敵な洋食屋さん「洋食のいろは」である。必然、昼食はここの日替わりランチを頂く事が大半だ。へれカツにエビフライ、唐揚げにハンバーグにコロッケ……。毎日、主役の交代するランチは絶品で、飽きが来ない。
そして、ランチタイムの読書はというと、新刊やゲラ、プルーフが中心となる。毎月、20冊ほどの読書数である。
○月×日
すごい新人がデビューした! 『さよなら、田中さん』(鈴木るりか著)。高校2年生が小説すばる新人賞でデビューした時も大概魂消たが、いやはや中学生ですとぉー! もう、次回作が待ち遠しくてたまらん。
○月×日
○月×日
今日のお昼は休憩室でコンビニのツナマヨおにぎり、ハムレタスサンド。最近この組み合わせにはまっている。私は気に入ったらひたすらそれだけを食べる。そして、飽きたら一切食べなくなるという変な食べ方をするので、友人から冷ややかな目で見られる。さて今日カバンに入っている本はカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』。ノーベル文学賞受賞もあり、本棚から探し出しての再読。やはりカセットテープの件は、何度読んでも切なくなる。
○月×日
昼からの出勤で時間があったので、お弁当持参。作り置きしてあるのを詰めてきただけなので、中身はご容赦を。お弁当を食べ終わった後、自宅本棚の一番左端にあった『きもの文化と日本』(伊藤元重、矢嶋孝敏 著)を読む。最近着物が気になりはじめ、ふと目に入った真っ白なレースの着物の表紙に惹かれて購入した本。着物のおしゃれの本かと思いきや、中身は着物文化の話が初心者にもわかりやすく書かれている。「堅苦しい」イメージから「着物を着てみたい」と思えるのはとても嬉しい。
○月×日
○月×日
本屋で働くことほど辛いことはないと、強く思うことがある。女性誌の大量発売日などはとくに辛い。お洒落をして銀座かどっかでデートをしたいと思う。あとはレシピ本。はらぺこグリズリー『世界一美味しい煮卵の作り方』も、読んでいると本当に辛くなってくる。怒りすら湧いてくる。どれも死ぬほどおいしそうなのだ。思わず唾を飲み込む。昼休み、即座に店を飛び出し「天下一品」へ。迷わず煮たまご入りラーメンを注文。無心でラーメンを食べ終えたところで、これだから永遠に銀座でデートなどできないのだと気がつく。
○月×日
今日こそは女子力を取り戻そうとおろしたての服で出勤。お店の入っている「WACCA池袋」には綺麗な女性が多い。そんな人たちの接客をするのに、お洒落をしないでどうすると活を入れ神崎恵『読むだけで思わず二度見される美人になれる』を読む。しかし今日は服選びに時間を取られすぎて朝ごはんを食ベ損ねた。今のうちにスタミナをつけてこようと「松屋」のネギ塩豚カルビ丼をかき込んだ。満たされて戻ると、キラキラ女子たちがタピオカミルクティーを飲んでいる姿が。焦って口紅を塗り直しながら思う。私の女子力、こんなんでいいのか。
○月×日
新潟市の北書店でハロー!ブックス(以下H!B)という佐渡島で行われるイベントを知りました。ゲスト陣の豪華さに驚き、手伝いに行って住み始め、早二年。現在はドーナツ屋をしつつ、「カフェ日和山」を共同運営しています。その店内に設置した北書店・佐藤雄一店長による出張本棚が南書店です。南佐渡と呼ばれる地域にあり、北書店の支店であることから名付けました。今年のH!Bは九月十七、十八日。山あいの廃校で開催する本のお祭り。すばらしい作家さんたちと親しくなれる、たぬきに化かされたのかと思うような夢の二日間です。
○月×日
古い一軒家を借りています。入居してまず購入したのはコーヒーミルとドリッパーでした。H!Bに来た友人を、椅子しかないがらんとした部屋の中、コーヒーでもてなしたのがこの家の最初の思い出です。近くに喫茶店のない島暮らし、コーヒーは自分で淹れるものになりました。山川直人作品の登場人物になったつもりで、台所で一人、ゴリゴリ豆を挽き、ポタポタ湯を落とし、とるるるん、とカップに注ぎます。淹れたてのコーヒーを傍らに、『シリーズ 小さな喫茶店』の物語の中へ。古い喫茶店でひととき交差する、市井の人びとの人生や機微に思いを馳せるのです。
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