今月のイチオシ本

今月のイチオシ本【ノンフィクション】
 新型コロナウイルスの流行で世界中が注目し、日本の底力を見せた商品が「マスク」だ。一年前、自分と他人の感染予防に、日本人の多くは当たり前にマスクをつけた。そのため品薄になり買いだめが起こったのは記憶に新しい。そのマスクの一種に、ダチョウの並外れた免疫力によって生成された抗体を処方した製品がある。
『脳男』シリーズ待望の新作。といっても、今一つピンとこない方もいるかも。それもそのはず、前作から何と一四年ぶりの第三作なのである。 『脳男』は二〇〇〇年の第四六回江戸川乱歩賞受賞作で、愛宕市という中部地方の架空の都会を舞台にした話。市警の茶屋警部は街を震撼させている爆弾魔を逮捕しにアジトへ乗り込むが、つかまえたのは犯人
 主人公は、高校一年生の漣。父親の海外赴任に伴い、保育園の年長の時から中二で帰国するまで、八年間タイのバンコクで暮らしてきた。漣には歳の離れた姉・まどかがいて、彼女は漣がバンコクにいる間に結婚し、離婚していた。今は実家に戻っているまどかは、漣の記憶にある彼女とは別人のようになっていて、両親も漣も、まどかに対しては腫れ物に触るように接している。
今月のイチオシ本【歴史・時代小説】
 デビュー作『虎の牙』、二作目『落梅の賦』と戦国時代の武田家にこだわってきた武川佑は、三作目となる本書で、架空のヒロインを主人公に、先行作が少ない室町六代将軍・足利義教の時代を舞台に選んだ。迫力の戦闘シーンや重厚なテーマを継承しつつも作風を広げたところは、新境地といっても過言ではない。
今月のイチオシ本【ミステリー小説】
 たとえばリーガル・サスペンスでは、ひとを裁くことの難しさが繰り返し採り上げられ、このジャンルにおける永遠のテーマのひとつになっている。つまり人間とは、容易に割り切れない存在である「ひと」をはかることに決して長けてはいない証左といえよう。けれど社会で生きていく限り、ひとはひとからはかられ、評価づけされることからは逃れら
今月のイチオシ本【デビュー小説】
 茜灯里『馬疫』は第24回日本ミステリー文学大賞新人賞の受賞作。パンデミックもののサスペンスは数あれど、馬が主役というのは初めてではないか。しかも、その設定が大胆不敵。時は2024年1月。欧州で新型コロナがふたたび猛威をふるい、パリ五輪が見送られて、2回連続の東京五輪(!)が開かれることに。
今月のイチオシ本【ノンフィクション】
 少子化、高齢化が進む日本で、これから先、喫緊の問題になるのは労働力不足であることは間違いない。2018年12月、国会では入管難民法の改正が参議院本会議で強行採決された。これまで低賃金の単純労働を強いられてきた外国人技能実習生を、新たな在留資格「特定技能」に移行させ、一定条件を満たせば家族の帯同を認めるという。この時点
今月のイチオシ本【警察小説】
 芸能界の事件を捜査する警察小説は数あれど、本書のように芸能そのものにまで突っ込んだ作品は稀少ではないか。警視庁捜査一課殺人犯捜査七係の伴奏は上司の命で、向こう一ヵ月ほど別捜査に当たることに。沖縄県警の手伝いをしろというのだ。上京してきた刑事、渡真利猛は一九年前、人気ロックバンド・メアリーのギタリスト、
今月のイチオシ本【エンタメ小説】
「料理が好きな人」三年前の春に出会った時、好きな人のタイプを尋ねた優花に、真島は即答した。以来、ことあるごとに同じ質問をするものの、「料理が上手な人」「料理好きな人」と、言い回しは変わっても、答えはいつも同じ。この真島の言葉が、優花にとって呪縛となる。何故なら優花は料理が嫌いで苦手、だからだ。それでもなんとか三年越しの
今月のイチオシ本【歴史・時代小説】
 実在した上海自然科学研究所の研究者が、戦時下の上海で細菌兵器の謎を追う『破滅の王』が直木賞候補になった上田早夕里の新作は、やはり戦前の上海を舞台に日中戦争の和平交渉を描いている。一九三九年、今井武夫陸軍大佐らが中心となり、蒋介石と和平交渉をする「桐工作」が進められた。当時の中国は親日派の汪兆銘と対日強硬派の蒋介石が争
今月のイチオシ本【デビュー小説】
 クリープハイプの尾崎世界観が候補になったこともあり、メディアでも派手に報道された第164回芥川賞。下馬評通り、宇佐見りん『推し、燃ゆ』が受賞したが、デビュー作ながら同じ回の候補になったのが、すばる文学賞受賞の本書。題名はポルトガル語で〝配偶者〟の意味(著者によれば、コンタクトと同じく、「コン」にアクセントがあるらしい)。
今月のイチオシ本【ミステリー小説】
 それが、現実──。ままならない日々を、そう割り切って受け入れていく生き方も、ひとつの処世術といえるのかもしれない。けれどそうすることで、目を背け、距離を置き、冷遇しているなにかを忘れてないか。丸山正樹『ワンダフル・ライフ』は、複数のケースを提示し、ミステリの手法を用いて読み手に、その〝なにか〟の一端をのぞかせようと
今月のイチオシ本【ノンフィクション】
『医療現場は地獄の戦場だった!』 大内 啓 ビジネス社  著者は米マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学医学部の助教授で終末期医療の研究者である。同時に内科と救急科両方の専門資
今月のイチオシ本【警察小説】
『ドッグデイズ 警部補 剣崎恭弥』 柏木伸介 祥伝社  ハードボイルド・ヒーローといえば、卑しい街を一人ゆく騎士的存在だったが、一九七〇年代、アメリカではベトナム戦争で心身に傷を追った
今月のイチオシ本【エンタメ小説】
『ババヤガの夜』王谷 晶 河出書房新社  読んでいる間中、胸の奥から名状し難い興奮が突き上げてくる。冒頭、ぼっこぼこにされた状態で、新道依子が暴力団の会長宅に連れてこられた場面。組員の
今月のイチオシ本【デビュー小説】
『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』 竹田人造 ハヤカワ文庫  最高にポップでテッキーな最新型のAIコンゲーム小説が登場した。その名も、『人工知能で10億ゲットする完全犯罪
『妖しい刀剣 鬼を斬る刀』東郷 隆 出版芸術社  博覧強記で時代考証にも定評がある東郷隆は、文物の故事来歴を掘り下げる江戸時代の考証趣味に通じる『戦国名刀伝』『本朝甲冑奇談』などを発表
『放課後の嘘つきたち』酒井田寛太郎 ハヤカワ文庫  ライトノベルのフィールドから、青春ミステリの有力な書き手が颯爽と現れた。  酒井田寛太郎『放課後の嘘つきたち』は、全校生徒五千