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◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第16回
第16話 15日目の冷や汁 絶望的なまでに話が通じない人というのは世の中に一定数存在する。日常生活の中でたまさかそういう人物に遭遇したら、とにかく慎重に距離を取って、以後なるべく近付かないことだ。それしかない。しかし運悪くそれが仕事で関わらざるを得ない人、しかも大口のクライアントだったらそうも言っていられない。どんだけ
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◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第198回
12 五月二十九日。増山の第五回公判期日。傍聴席には抽選に当たった増山の母・文子の姿があった。彼女を見た増山の目が潤んだ。それを見た文子の顔が歪んだ。能城が開廷を告げた直後、志鶴は立ち上がった。「裁判長、本日の証人尋問に先立って、弁護人から要請があります」能城が険しい目で見下ろしてくる。「何か」「綿貫絵里香さんのソフト
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ゲスト/ジェーン・スーさん◇書店員が気になった本!の著者と本のテーマについて語りまくって日々のモヤモヤを解きほぐしながらこれからの生き方と社会について考える対談◇第14回
 二〇一三年にコラムニストとして鮮烈なデビューを飾って以来、中年女子のリーダーとして発信を続け、共感と憧れをもって圧倒的に支持されているジェーン・スーさん。そんなスーさんも、以前は〝美魔女〟と呼ばれる自分の欲望に忠実に生きる女性たちを馬鹿にしていたのだという。「年甲斐もなく」という社会の呪縛から解き放たれ、自分らしく歳
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 丸善 お茶の水店 沢田史郎さん
 全日本音楽著作権連盟、通称・全著連は、音楽教室でレッスン中に演奏される音楽にも著作権使用料が発生するとして、その徴収に乗り出した。しかし、全国大小の音楽教室で組織される音楽教室友の会は、「レッスンは〝公衆に対する演奏〟には当たらない」として、提訴する構えを見せる。という枠組みは、モデルになった裁判が現実に存在するのだ
辻堂ホームズ子育て事件簿
2022年6月×日 「毎回俺の名言から始まる子育てエッセイってどうかな?」と、夫が突然提案してきた。何を言っているんだ。却下。どうも夫、そういうところがある。自分たちの日常がこうして発信されているのが面白いらしい。私にとっては喜ばしいことだ。家族のことを書く仕事は、家族の応援なしには実現しえないのだから。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
おめめの天敵 コンタクトレンズがこわい。これは非常に切実な悩みである。コンタクトレンズがとにかくこわいのだ。だって、目を触ってる! コンタクトレンズをつけるという行為は、先端恐怖症の私にはとてもじゃないが耐え難いものなのである。正直に言うと、私はコンタクトレンズから逃げて来た。大学の卒業式も裸眼。両目0.2のぼや...
千葉ともこさん『戴天』
私が書くなら、自己犠牲の英雄にはしたくない 二〇二〇年に松本清張賞を受賞したデビュー作『震雷の人』で骨太な中国歴史絵巻を披露し注目された千葉ともこさん。待望の新作『戴天』は前作に続き、唐の時代の安史の乱がモチーフ。前作とは登場人物も切り口も異なる本作で描こうとしたものとは? 唐の時代と今の日本を重ねて まだデビュー二作
採れたて本!【海外ミステリ】
 シャーロック・ホームズ。かの名探偵に憧れを捧げた作品は数多い。しかし、それだけにハードルの高い分野だ。今また、香港とインド、二つの場所から時を同じくして、ホームズへの新たなるラブレターが届いた。前者は莫理斯『辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿』、ホームズの事件と香港の時代性をクロスさせて、原典を一風変わっ
 もしも、あの時ああしていたら、自分の人生、どうなっていたんだろう。誰しも思い当たる節があるそんな瞬間に本当に戻れたら、いったいどんなことになってしまうのか。そのあとは、思い描いたように新たな時を刻んでいってくれるのだろうか。ひとことでいえば、本作はタイムリープのジャンルに入るはずですが、「もしも、あの時」というこの一
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第197回
「遺体遺棄現場について聞き出すのに少なくとも二十分かかったと今証言されました。あなた方が増山さんを犯人と断定して、殺害時の状況を聞き出すのに約一時間十分ほどかかった。そういうことになりますね」 そこで目を左右に泳がせた。自分がそれと知らず誘導されていたと気づいたのかもしれない。「まあ、きっちり計測していたわけじゃないで
評者=辻 真先(推理作家・脚本家) 読者も作者とおなじ土俵に立って 日本昔話のミステリ化でヒットを放った作者の新作です。あの有名なお話をどうひねってつないで殺人や密室がからむ話に変奏するのかと、さぞ読者のみなさん(ぼくを含む)は思案しながらお読みになったことでしょう。それに比べれば、今度の趣向はいくらかハードルが低そう
ハクマン第86回
私はこのようなコラムや漫画など、いわゆるエッセイ系をクソほど書いている。最近エッセイ業界に激震が走る出来事があった。詳細は省く、というか怖過ぎて書けないが、エッセイ漫画のネタにされていた作者の親族側が実はすごく嫌だった、という話である。しかしこのエッセイに書かれた側が激おこ脱糞丸という現象はそこまで珍しくなく、前までジ
週末は書店へ行こう! 目利き書店員のブックガイド 今回の目利きさん 三省堂書店 成城店 大塚真祐子さん
 手話通訳士を主人公に、ろう者と手話をめぐる現実を描いた『デフ・ヴォイス』シリーズ、居住の実態が把握できない「居所不明児童」の問題から、親とは、家族とは何かを問う『漂う子』、在宅介護、特別養子縁組制度、障害者差別など、人間の尊厳に関わる題材に正面から切り込み、四つの物語を鮮やかに交差させた『ワンダフル・ライフ』と、目ま
青柳碧人『ナゾトキ・ジパング』
ジパング誕生秘話 元号が令和に変わる少し前のこと。仕事場の本棚に並ぶエラリー・クイーンの「国名シリーズ」の背表紙を眺めていて、「旧国名シリーズ」というアイディアが浮かんだ。旧国名というのは、伊勢とか備中とか、かつて日本で使われていた、歴史の教科書で見るような地名。『ローマ帽子の謎』『フランス白粉の謎』のように、『伊勢え
採れたて本!【デビュー】
 2003年に創刊された東京創元社の《ミステリ・フロンティア》は、新鋭を中心とする国産ミステリ専門叢書。梓崎優『叫びと祈り』、深緑野分『オーブランの少女』はじめ、新人のデビュー単行本をたくさん刊行しているのが特徴。最近だと、榊林銘『あと十五秒で死ぬ』や、笛吹太郎『コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎』、明神しじま
浅倉秋成『俺ではない炎上』
俺は悪くない? 就職活動を題材にした『六人の噓つきな大学生』が二〇二二年本屋大賞をはじめ各種文学賞にノミネートされた浅倉秋成は、いま最も勢いのある作家である。レジェンドの小畑健とタッグを組み、自身は原作を手がけた漫画『ショーハショーテン!』も大きな話題になっている。最新作『俺ではない炎上』は、ネット炎上を題材にした逃亡
◇長編小説◇里見 蘭「漂白」連載第196回
「読み上げますので見ていてください。『実施日時 令和×年三月二十四日午前九時〇分から三月二十四日午後四時三十分まで』──今私は正しく読み上げましたね?」「はい」「増山さんが留置されていた足立南署から、引き当たり捜査を行った荒川河川敷の現場まで、片道の移動時間はどれくらいですか?」「……諸々(もろもろ)、準備などを含める
◇ショートストーリー◇稲田俊輔「キッチンが呼んでる!」連載第15回
第15話 14日目の鰻重 ドアのチャイムが鳴って、わたしはモニターを確認した。そこには懐かしい顔があった。今日は正真正銘、懐かしい顔だ。数年ぶりに見る母は相変わらず派手好みで、還暦を超えているようにはとても見えない若々しさだった。最近彼女はとあるボーカルグループに夢中だそうで、今日はそのライブのための「遠征」ついでにこ