◎編集者コラム◎ 『浄瑠璃長屋春秋記 紅梅』藤原緋沙子
◎編集者コラム◎
『浄瑠璃長屋春秋記 紅梅』藤原緋沙子
先日ようやく、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による緊急事態宣言が全国的に解除されましたが、読者のみなさまは、つつがなくお過ごしでしょうか。
なかには、つらい思いをされた方もいらっしゃると思いますが、どうかあまりご自身を責められず、また無理されず、ゆっくりと少しずつ立ち直られますよう切に念じております。
さて、人気シリーズ「浄瑠璃長屋春秋記」の第三弾『紅梅』が無事に刊行を迎えました。
こうして書店さんに並ぶのも、ひとえにみなさまのお力添えと、心より感謝しております。
その最新刊『紅梅』の第二話に題された「いのこずち」って、なんのことかご存じですか?
「いのこずち」とは、漢字では「牛膝」「猪子槌」と書く、多年草のことなのです。
根っこを乾燥させて漢方薬にしたり、第二次世界大戦時には「夏の七草」として、若葉が食用にされていたそう。
実は、ほかにも特徴があるのですが、ここでは秘密。
なぜなら、「いのこずち」のある特徴が、物語の重要な役割を担っているため。
そう、楽しみは最後まで取っておきましょう──って、やはり気になりますよね。でも、ごめんなさい。
もうひとつ気になるのは、本シリーズの最大の謎、陸奥国からはるばる江戸へやってきた主人公の青柳新八郎が探している、愛妻・志野の行方でしょう。
ですが、志野の行方が解き明かされる前に、新八郎の友・仙蔵が危機に見舞われます。
ある日、『よろず相談承り』の看板を下げている新八郎の家の前に、北町奉行所の見習い同心・長谷啓之進がやって来ます。
近頃、仙蔵が顔を見せないため、心配になったというのです。
仙蔵の隣に住む大工の女房・おくまの話によれば、十日ほど前に長屋を訪ねてきた、口元に小豆ほどの黒子のある、美しい女と関わりがあるらしいのですが……。
仙蔵といえば、いつも新八郎を手助けしてくれている、元巾着切りの岡っ引。いったい彼に何があったのでしょうか?
第一弾『照り柿』が発売即重版となった本シリーズは、次の第四弾『雪燈』で、ついに最終巻を迎えます。
2020年8月の発売日まで、しばしお待ちくださいませ。
──『浄瑠璃長屋春秋記 紅梅』担当者より