おはようおかえり 京は猫日和

武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
昔からジェットコースターが苦手だった。高いところから急降下する時の、あのふわっとする感じが好きじゃない。でも、屋内のジェットコースターは好きだ。「武田の乗れるやつと乗れないやつの基準ってなんなん?」と友人に聞かれた時には、「落ちた時に死にそうなやつは乗れない」と答えた。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 ──おとなは、だれも、はじめは子どもだった。(しかし、そのことを忘れずにいるおとなは、いくらもいない。)初めてこの文章に触れたのは、確か小学生の高学年の頃だった。フランス人飛行士であり作家でもあったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの名作小説『星の王子さま』の一節だ。
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 正常性バイアスという心理学用語がある。自分にとって都合の悪い情報を軽視したり、何か予想外のことが起きた時にあくまで日常生活の延長上の出来事だと思い込もうとしたりする人間の特性のことだ。私は
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
「響け!ユーフォニアム」のアニメが放送されていた2015年、私は人生の岐路に立たされていた。そう、就職活動である。アニメ化したら専業作家で問題ないだろうという気持ちと、いやいや人生そんなに上
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 子供の頃、バタービールを飲んでみたかった。バタービールとは「ハリー・ポッター」に登場する飲み物で、映画の中ではハーマイオニーが口元に泡でひげを作っていた。ビールジョッキに並々とつがれた温か
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 偽電気ブランをご存じだろうか。森見登美彦さんの小説『夜は短し歩けよ乙女』に登場する架空の酒である。私はそもそも電気ブランを知らなかったので、初めて小説を読んだ時には偽のつかない電気ブランも
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 大学生の時に美術サークルを選んだのは、人数がほどほどに多くて、活動もほどほどにあって、尚且つ趣味が合いそうな人間が多いからだった。サークルでは定期的に展覧会を開いたり、合宿などのイベントが
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第4回「思い出の京の味」
 東京に引っ越して数年が経つが、ふとした瞬間に故郷の味が恋しくなる時がある。  実家に住んでいた頃は当たり前に得られていたものが、実は得難いものだったと気付いたのは最近になってからだ。  今回は京都
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第3回「金閣寺コンプレックス」
〈金閣寺〉  生まれてから今まで、金閣寺に行ったことがない。パンフレットの写真は何度も見たことがあるし、教科書に載っていた足利義満の顔を忘れたことはないし、三島由紀夫の書いた小説を繰り返し読む学生時
武田綾乃「おはようおかえり 京は猫日和」 第2回「文豪の猫」(下)
 東京でイラストレーターの友達とルームシェアすることになったのは、大学卒業のタイミングだった。デビュー時からお世話になっている編集さんの勧めで、ノリで上京した。東京での暮らしは楽しかったが、バロンと
おはようおかえり 京は猫日和 武田綾乃 
 エッセイの連載が始まった。こういう連載は初めてなので何を書くか悩んでいたが、そういえば大学生作家時代のことなんかはあまり文字にしたことがなかったな、と今更ながら思った。なので学生時代の思い出なんか