◎編集者コラム◎ 『小説 映像研には手を出すな!』著/丹沢まなぶ 原作/大童澄瞳

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『小説 映像研には手を出すな!』著/丹沢まなぶ 原作/大童澄瞳


映像研には手を出すな

『月刊! スピリッツ』(小学館)で絶賛連載中の大童澄瞳のデビュー作、『映像研には手を出すな!』。SNS等で話題になった本作は、湯浅政明監督によってアニメ化もされ、ギャラクシー賞に輝くなど大反響を呼んだ。各界のクリエイターからも熱狂的に支持されているこの作品が、乃木坂46、そして英勉監督をはじめとする日本映画界の最高のクリエイターたちによって実写化される。

舞台は、数百の部活と同好会を抱える芝浜高校。人並み外れた空想力をもつ天才監督だが、小心者で人付き合いが苦手な浅草みどり(齋藤飛鳥)。裕福な家庭で育ち、カリスマ的な読モでありながらアニメーター志望の水崎ツバメ(山下美月)。金儲けが大好きな現実主義者で、プロデューサー的なセンスをもつ金森さやか(梅澤美波)。この個性的すぎる電撃三人娘が出会って「映像研究同好会」を立ち上げるところから、物語は始まる。

映像研のメンバーはアニメ制作に邁進するが、学内の治安維持を担う「大・生徒会」は彼らの問題行動に目をつけて──!? 部活の統廃合や資金繰りなど、さまざまな危機に見舞われながらも、映像研の三人は脳内の"最強の世界"をアニメで実現すべく、奮闘する。

ものづくりに少しでも関わったことがあったり、関心のある人なら共感必至の本作。アニメ制作に限らず、実写映画でも舞台でも一人で作ることはできない。仲間と一緒に汗と涙を流し、チームワークで作り上げていくからこそ到達できる尊い"何か"が、この作品では描かれているのだ。

映像研のどのメンバーに共感するかは人それぞれだと思うが、編集者という立場から自分がどうしても注目してしまうのが、金森さやかだ。一見、冷徹な拝金主義者のような印象も与える彼女だが、現場のクリエイターが困っていることを、当人たちが知らないうちに陰で解決している。そして、汚れ役を引き受けながらクリエイターたちをコントロールし、率いていく。彼女の高校生離れしたプロデューサーとしての手腕には、感動のあまり涙を禁じ得ない。うちの編集部にスカウトしたいくらいである。

コロナ禍に見舞われ、5月を予定していた公開が9月25日に延期された今作。ものづくりの現場が大変な状況に置かれている今だからこそ、ぜひ劇場に足を運んで観てほしい。映画版にもノベライズにも、クリエイターたちの愛と情熱が詰まっています。

──『小説 映像研には手を出すな!』担当者より

『小説 映像研には手を出すな!』

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