◉話題作、読んで観る?◉ 第27回「映画 ドラえもん のび太の新恐竜」
監督:今井一暁/脚本:川村元気/キャラクターデザイン:小島崇史/CGアニメーションスーパーバイザー:森江康太/音楽:服部隆之/主題歌:Mr.Children/声の出演:水田わさび 大原めぐみ かかず ゆみ 木村昴 関智一 木村拓哉 渡辺直美/配給:東宝
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藤子・F・不二雄原作の長編アニメシリーズ第1作『ドラえもん のび太の恐竜』の劇場公開から40年、シリーズ40作目を迎えたメモリアル作。観客動員470万人とシリーズ最高記録となった『ドラえもん のび太の宝島』の川村元気プロデューサーが2年ぶりに脚本を担当し、より幅広い世代が楽しめるSFファンタジーとなった。
のび太が恐竜の卵の化石を見つけ、ドラえもんの「タイムふろしき」を使ったところ、卵から恐竜の赤ちゃんが孵化。赤ちゃん恐竜は次第に大きくなり、のび太たちはタイムマシンに乗って、白亜紀へ帰しにいくことになる。
声優陣が一新したタイミングでも、『のび太の恐竜2006』が公開されており、ファンにとってはお馴染みのストーリーだ。いつもはドラえもんに助けてもらってばかりいるのび太が大自然の中で人間的成長を遂げていく様子が、今回もドラマチックに描かれている。
過去2作では卵から生まれるのは首長竜だったが、今回はまだ発見されていない新種の恐竜で、しかも双子のミューとキューという設定となっているのが脚色ポイント。元気で活発なミューに比べ、キューは大人しく内向的な性格で、その分だけのび太は世話を焼き、つらい別れが待つことになる。
卵から双子の恐竜が生まれるシーンは、東宝の懐かしい怪獣映画『モスラ対ゴジラ』を彷彿させる。またクライマックスは、大ヒットSFアニメ『君の名は。』を手掛けた川村プロデューサーならではのサプライズな展開が用意されている。
アロサウルス、ステゴサウルスといった大型恐竜たちが生存競争を繰り広げるシーンは、これまで以上に迫力ある映像となった。平和な時代から訪れたのび太たちは、弱肉強食のルールの中で恐竜たちが繁栄し、そして絶滅していく過程をまざまざと目撃することになる。
遠い過去の世界に生きた恐竜との交流をテーマにした『のび太の恐竜』だったが、現代的にアップデートされた『のび太の新恐竜』では厳しい格差社会の中で競争を強いられている現代人とあっけなく滅んでいった恐竜たちの姿とが重ね合わせて描かれている。家族で鑑賞することで、いろんな発見ができるだろう。
(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2020年4月号掲載〉
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