◇自著を語る◇ はらだみずき『海が見える家 それから』
移住先でどう生き延びるのか
小説の最後のページのその先は、本来、読者に委ねるべきもの。僕も同じ意見ですが、時にそれは言い訳のように聞こえる場合もあります。その先、続きを書くことは、それが予定されていない場合、かなり勇気のいる作業になります。
とはいえ、『海が見える家』については、続きを書いてみたいと僕自身強く思いました。入社1ヶ月で会社を辞めた主人公の文哉は、東京を離れ、父が遺した南房総の海が見える家で暮らし始めます。そんな文哉の元へ、あなたは田舎に逃げたに過ぎない、楽な道を選んだだけ、と非難する元彼女からのメールが届きます。
果たしてそうなのだろうか? この疑問は、書き手である僕に突きつけられたテーマでもありました。
憧れや定年後の悠々自適な田舎暮らしではなく、移住先でどう生き延びるのか。文哉と共に悩み、模索しながら書き上げた本作は、物語の主人公だけでなく、書き手の僕自身にも少なからず成長を与えてくれたと感じています。