深明寺商店街の事件簿
6 戻ってきたスタッフの車を追跡する中、福太は無言だった。美音の最後の一言が、強烈に頭に残っていたからだ。山根さんが、亡くなったお袋の友達……? 学太も同じく無言。車内には、退屈してついにダウンした良太の寝息と、能天気な藤崎の鼻歌だけが響く。「あの人がお袋の友達って……学太、覚えてるか?」小声で訊ねると、学太は首を横に振った。「いや。全然。
「だからさ、西洋料理店というのは、ぼくの考えるところでは、西洋料理を、来た人にたべさせるのではなくて、来た人を西洋料理にして、食べてやる家とこういうことなんだ。これは、その、つ、つ、つ、つまり、ぼ、ぼ、ぼくらが……。」がたがたがたがた、ふるえだしてもうものが言えませんでした。「その、ぼ、ぼくらが、……うわあ。」がたがたがた
5 「私、長谷川さんとあまり面識ないんですよね」そう言って、ブルーのトレーニングウェアを着た女子が苦笑いをする。翌日の早朝、河川敷のランニングコース。話しているのは、例の書道部員の容疑者の一人、三年の井手走華だ。やや大人びた、中性的な顔立ちのショートカットで、すらりと背も高いので颯爽としたトレーニングウェアが似合っている。書道部というより陸上部のエースといった趣がある。
「下のほうに広場がある」と幸福の王子は言いました。「そこに小さなマッチ売りの少女がいる。マッチを溝に落としてしまい、全部駄目になってしまった。お金を持って帰れなかったら、お父さんが女の子をぶつだろう。
(前編のあらすじ)深明寺坂で交通事故が起きた。運転手は焼き鳥の串を喉に刺し死亡。唯一の目撃者は小学生の良太で、事故直後、車の屋根越しに人影を見たという。良太の様子に不審を覚えた兄の福太と学太
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「なんだ、この唐揚げ。めちゃくちゃ旨え」
弁当箱の蓋を開けるなり、貴重な唐揚げの一つが横からかっ攫われた。
声を上げる間もなかった。それどころか、盗っ人が