ハクマン 部屋と締切(デッドエンド)と私 第154回

私はどうやら
「体質的にサクセスに
向いていない」ようだ。
「正直ドラマ放送が楽しみという気持ちより、不安の方が大きい」
これは自分の漫画原作のドラマの放送を前にした、原作者の本音、ではなく、その配偶者のお言葉である。
放送より一足先に、1話目の映像を見させてもらった。
まず自分の作品がはじめて実写化したということに感動であり、有名俳優陣が自分のキャラを演じてくれていることがとにかく嬉しい。
自分的には満足であり、すでに5億回ぐらい繰り返し見ているのだが、逆に言えば客観的に判断することが全くできないのである。
原作者として満足ならそれでいいじゃないかとも思えるが、私も漫画家という「読者がどう思うかが最重要」な世界に結構な期間在籍してきた身であり「批判以前に誰も読んでないが、自分的にいいものが描けたので満足」とは思えないのだ。
ドラマも作り手ではなく、視聴者がどう思うかが大事なのだ。
だからと言って放送前のドラマ映像をXに上げて「みんなはどう思う?」とやるわけにはいかない。
放送前に全てをぶち壊して放送の不安を払拭する画期的根治とも言えるが、残念ながらぶち壊されるのは私の人生だけでなく、各方面にも迷惑がかかってしまうだろう。
結局安全に見せられるのは同居家族である夫ぐらいのものなのだ。
しかし、正直ドラマを夫に見せるか否かは相当迷った。
夫は私に比べて社会性が高く、私が漫画家をここまで続けてこられたのも夫のおかげだと断言できるのだが、彼には「私が期待する言葉を一切言わない」という欠点すぎて逆に長所な面があり、特に私の仕事関係の話にはその才能が遺憾なく発揮される。