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温かいコーヒーを飲みながら読みたい「ほっこり」本

言葉で表せないことを伝えたい。
絵本『どんなにきみがすきだかあててごらん』は、クリスマスの贈り物にも最適です。

平坂書房MORE’S店(神奈川)疋田直己さん

 秋といえば「読書」の秋です。書店に勤務していると毎日がこのような季節であることを切に願うのですが。

 今回は「ほっこり」をテーマにおススメしたい本を児童書中心に紹介したいと思います。

『ハリー・ポッター』の続編が世間を賑わせている「児童書」業界。大人でも「ほっこり」泣ける本がたくさんあるんです。

 最初はサム・マクブラットニィ文/アニタ・ジェラーム絵『どんなにきみがすきだかあててごらん』(評論社)。チビウサギとデカウサギが野原でお話ししている場面から話が始まります。チビウサギは自分がどれだけデカウサギを好きなのかを表現していきます。

 それに対抗するデカウサギ。チビウサギは体の大きいデカウサギにどうしても勝てない。チビウサギがぼくのほうがすきだと必死になって伝えようとしている姿に愛おしさを覚えます。

 大切な気持ちを伝えるのは人も動物も同じです。うまく言葉で表現できないことを伝えたい。これからのシーズンであるクリスマスプレゼントにも最適な一冊です。

 続いては『100万回生きたねこ』(講談社)です。ご存知佐野洋子さんの作品で大ベストセラーの書籍です。

 100万回死んでも生き返りその度に100万人の人に愛された野良猫が白い猫と出会い、初めて恋に落ちた。

 ある日白い猫は動かなくなり、死んでしまう。愛することを初めて知った野良猫は100万回泣いた。そして二度と生き返ることはなかったというストーリー。

 愛することを知らなかった猫は愛されることの大切さを知らなかったから生き返れなかったのではとの解釈も出来ますが。最後の野良猫が野原で白い猫を抱いて泣く挿絵に涙します。

 最後は文芸作品です。中村航さんの『100回泣くこと』(小学館文庫)です。

 彼女との生活の中にいろいろな発見があり、そして告げられる彼女の余命。病と闘い懸命に生きようとする彼女と主人公のラブストーリーです。これは本当に泣ける話です。

 今回はテーマを「ほっこり」に絞って紹介してみましたが、書店に行って新しい発見をしてくれることを楽しみにしています。

本当は教えたくないけどこっそり教えちゃう「ふところ」本

読み進むのがもったいない作品もありますが、池井戸潤さんの
『陸王』は寝るのが惜しいほど先が読みたくなります。

紀伊國屋書店富山店(富山)小作昌司さん

 まずは、六冬和生さんの『松本城、起つ』です。早川SF出身の作家さんですが、ご出身が長野県なので力が入っていると感じる作品。舞台は長野県、松本城。大学受験を前に希望大学進学はおろか国立大学受験も覚束ない女子高生とバイト先で知り合い、家庭教師に選ばれた信州大学現役大学生が目を覚ますと、時は貞享3年。未曾有の大凶作の中、松本藩が増税を決めたため、村人が一揆を起こした挙句、強訴をした庄屋は磔に。その呪いが松本城を傾けた。ここから物語が始まります。読み始めてすぐに江戸時代にタイムスリップしますが長野弁の読み方がわからないところは飛ばす。大学生は時の松本藩、鈴木伊織となり女子高生は二十六夜神となり……。輪廻転生? タイムスリップ? 280頁ありますが一気に読み進めます。

 次は、池井戸潤さんの『陸王』。創業100年を超える老舗足袋屋「こはぜ屋」。4代目が主人公。これから先細っていく業界の中で得意先回りの途中、娘に頼まれていたスポーツシューズを見に入ったスポーツ店でランニングシューズが数多く売れている現実に直面。大手スポーツ企業を相手に新規事業を立ち上げるが奇しくも3代目が開発してお蔵入りとなったランニング地下足袋「陸王」を発見。コンセプトは変えず走る人の身になって商品作りに挑む男の挑戦。読み進むのが“もったいない”作品ってのもありますが、これは寝るのが惜しいほど先が読みたくなります。寝不足間違いなし。

 最後にご紹介するのは田村潤さんの『キリンビール高知支店の奇跡』です。発売された時から気になっていた書籍ですがこちらも創業100年を超える老舗企業のお話。『海賊と呼ばれた男』のようにノンフィクションですが文芸作品のように面白いです。1885年、在留外国人らが岩崎弥之助らの資本を得てジャパン・ブルワリー・カンパニーを設立。ドイツ人技師を招聘し本格的ドイツ風ビールの醸造を目指す。1907年に岩崎家によってその後を引き継いで麒麟麦酒鰍設立。「品質本位」を追究し、最高のビールをつくるという理念を守って業界1位のシェアを独走してきたが、売れる時代が長く続いたため苦労や工夫というものがわからず、アサヒ「スーパードライ」の躍進で低迷に喘ぐ。高知県でのシェア奪回の部分が読み応えあり。

 

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