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今月飲むのを我慢して買った本

殺人鬼ファンなら絶対はずせない綾辻行人さん『殺人鬼 覚醒篇』は、
残虐シーンどんとこい! という方におすすめ。

ブックポート203中野島店(神奈川)渡辺美由希さん

 気づけば春はもうすぐそこまできている、そんな季節。私の中の「春」のイメージはガラス瓶の蓋を開けたら夢や希望をつめこんだ宝石が一気に飛び出してくるような新しい何かが始まる季節。そんな宝石が空から降りそそぐような素敵な春に読んでほしい、読めば思わず外に駈け出して行きたくなるキラキラでワクワクな「殺人鬼小説」3冊をご紹介いたします!

 まずは殺人鬼ファンなら絶対はずせない綾辻行人さんの『殺人鬼 覚醒篇』。題名にまんま殺人鬼をもってくるとおり、こんなにも残虐な殺人鬼がはたしているのか!? というぐらいの非道っぷりです。人間たちを杭で串刺しするだけでは飽き足らず、獲物を見つけてはバラエティに富んだ方法で次々と仕留めていく様は、一体どんだけ日常にストレスを溜めてたの? って心配になっちゃうくらい過激です。ですがラストに待ち受ける衝撃は必読。残虐シーンどんとこい! という方にはぜひ一度は読んでほしい作品です。

 小林泰三さんの『アリス殺し』も上記の作品同様、多少の残虐さは否めません。題名のとおり舞台はあの有名な「不思議の国のアリス」です。そんなアリスの世界で、住人たちが次々に殺される夢を見る主人公が登場するところから物語は始まります。さらに夢の世界で殺された不思議の国の住人は、実は現実世界の人間とリンクしていて、そこでも殺人事件が起きます。どんな時にも、途中で投げださず執念深く標的を追いつめていく根性ある殺人鬼に、ヒヤヒヤせずにはいられません。ミステリーとSFが融合した一気読み必至のダークファンタジー小説です。

 最後は、詠坂雄二さんの『遠海事件 佐藤誠はなぜ首を切断したのか?』に登場する佐藤誠という男。普段書店の店長をしながら、なんと80人を超える人間を証拠も残さずに殺してきたという、かなりハイスペックな殺人鬼です。残念ながらそんな彼も、ある事件でついにボロを出してしまいます。普段は穏やかで周りからも慕われる彼の一挙一動に、いつの間にか夢中になってしまうことは間違いありません!

 さてこの中にあなた好みの殺人鬼はいましたでしょうか? この春、素敵なあなただけの殺人鬼をぜひ探してみてください。

当店の売れ行き30位前後にいる小説

中山七里さんの『嗤う淑女』は、主人公・美智留の影響力の大きさと
彼女が隠し通した悪意の根深さに呆然としました。

三省堂書店京都駅店(京都)鶴岡寛子さん

 最近立て続けに面白い本を読んで、さぁなんとかしてお客様にこの本を届けないといけない! という使命感に燃えていたところなので、この企画は渡りに船でした!

 小学館さんありがとう!

 まずは伽古屋圭市さんの『からくり探偵 百栗柿三郎』をご紹介します。

 もう、タイトルからしてずるい。笑いをとりにきています。そして私、うっかり笑いのツボにはまってしまって手に取ったら!! これがまた面白いのです。

 大正を舞台にしたミステリーなのですが、タイトルに似合わずすんごいしっかりした骨格を持ったミステリーで驚嘆しました。

 ユーモラスな文体とユニークな登場人物でさくさく読めて楽しめますし、驚きの仕掛けがしてあってなんと! ってなること請け合いです。

 ミステリーとしても楽しめて、キャラクター小説としても楽しめて、さらに大正の雰囲気も楽しめて……、という一冊で三回楽しめるステキ本なのです。

 今までノーチェックだったのが、悔やまれる作家さん。ぜひぜひご一読を!

 二冊目に紹介するのは中山七里さんの『嗤う淑女』。

 実は先に紹介した本も出版社さんは実業之日本社さん。最近の実日さんは面白い本をこれでもかっていうくらい出してくるので、油断ならない。で、そんな飛ぶ鳥を落とす勢いの実日さんから出されたこの本。やっぱり面白いのです!!

 美智留という一人の美しい少女。そして彼女の仕掛ける罠。彼女の人に与える影響力の大きさと彼女が隠し通した悪意の根深さに呆然としました。なんて恐ろしいんだろう。そしてなんて面白いんでしょう。抜群の読み応えでぐいぐい読めちゃいますよ!

 最後になりましたが、そしてまだ読んでなかったの!? と言われてしまいそうですが、原田マハさんの『本日は、お日柄もよく』をお薦めします。スピーチライターという仕事はもしかしたら世界を変えてしまうかもしれない。言葉にはそんな魔力があるのかもしれない、と思えるお話でした。人生の宝物になりそうなそんな一冊です。結婚式のスピーチを頼まれたらまずはこの本を読んでみてください! ヒントがいっぱいですよ!

私はこの本を1日1冊1すすめ

好きな作家の一人・向田邦子さんの作品は、
日常でふと感じることのひとつの答えを示してくれているような気がします。

喜久屋書店神戸学園都市店(兵庫)北村紀子さん

 書店でぶらぶらしていて、これ面白そうと手にとる時が幸せだと思っていたのですが、最近では雑誌や新聞書評で気になる本に出合う楽しさを感じることのほうが多いような気がします。嬉しいような悲しいような。選んでみたら、自分のなかでちょっと気にしているのかもしれない「結婚」を意識した選書になっていました。同じように気になっている女性に面白いと思ってもらえる本があればいいなと思います。

 最初の1冊は書評で知った小池昌代さんの『たまもの』です。

 ひょんなことで昔お付き合いしていた人の子どもを育てることになったお話。

 主人公がだんだんその子どもを自分の子どものように思えてくる感覚を読むと、自分も子どもを育ててみたいと思うようになりました。念願の一人暮らしを手放してもいいなと思ってしまうぐらいです。

 次の1冊は雑誌の紹介欄でみつけた橋本治さんの『結婚』です。

 デートや婚活、親と兄夫婦との旅行など、いろいろな日々を過ごしていく中で、主人公の最後に選んだ道が描かれます。これは読んでいただければ、自分がやりたいことの先に結婚という選択もあるのかもしれません。

 最後の1冊は好きな作家の一人である向田邦子さんの『隣りの女』です。

 気になる人を追いかけてニューヨークに行く主婦や、嫁き遅れた女の日々の思いを描いたお話、気になる人が自分の家に週末になると遊びにくる話など、いろんな女性が出てきます。

 向田さんの作品は日常でふと感じることのひとつの答えを示してくれているような気がします。いろんな登場人物をみていくうちに結婚をしてもしなくてもいろいろ思い感じることはある。そんなことを改めて思いました。

 面白い作品に出合うとその作家さんの別の作品が気になってしまいます。読みたい本が尽きなくなるのが嬉しい悩みの種です。

 ミステリーやSFのような先がきになるというわくわく感も読書の醍醐味ですが、読後に自分の感じ方や考え方の変化が起こり、心が揺れるような感覚も読書の醍醐味のひとつのように思います。これからもそのゆれを感じていきたいなと思っています。

 

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