◎編集者コラム◎ 『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』水谷竹秀

 ◎編集者コラム◎

『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』水谷竹秀


脱出老人

 高齢化社会が進む日本で、老後をどうやって幸せに過ごすかは、日本国民全員の大きなテーマとなっています。「老後破産」「下流老人」「孤独死」など暗い言葉が、ニュースでも話題になるいまの世の中、「日本で寂しく貧しい老後を過ごすなら、一年中温暖、物価は日本の3~5分の1、年の差婚は当たり前、やさしく明るい国民性、原発もゼロのフィリピンで、幸せな老後を送りたい!」と、日本脱出の道を選んだ「脱出老人」が、実はたくさんいます。

 はたして、フィリピンに「老後の楽園」はほんとうにあるのでしょうか?

 脱出した日本人たちはどんな暮らしをおくっているのでしょうか?

『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮法人」』で、開高健ノンフィクション賞を受賞したノンフィクション作家・水谷竹秀さんは、「老後の幸福とは何か」をテーマに、フィリピン、日本で体当たり取材して書き上げたのが本書です。

 恋人候補200人のナンパおじさん。19歳の妻と1歳の息子と、スラムで芋の葉っぱを食べて暮らす、元大手企業サラリーマン。東日本大震災を機に、東北から原発ゼロのフィリピンに移住した夫婦。ゴミ屋敷暮らしだった母親をセブ島に住まわせる娘。90歳の認知症の母親をフィリピン人メイドと介護する夫婦。「美しい島」で孤独死を選んだ元高校英語女性教師……。様々な「脱出老人」のジェットコースター人生を、3年間に渡り徹底取材した衝撃のノンフィクションです。

 移住したからといって必ず幸せになるわけではないでしょう。しかしこの本に登場する日本人たちは、閉塞した日本のなかで、我慢し続けて、悔いの残る人生を送るよりは、日本を脱出するというポジティブなアクションを起こした人たちです。あまりにドラマチックな生きっぷりに、ぐいぐい引き込まれてしまうこと間違いありません。

 本書が元になったテレビ番組「ザ・ノンフィクション」(フジテレビ系)も5月26日に放映予定です。解説はこのテレビ番組化にも関わった、映画監督の崔洋一さんです。

──『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』担当者より

syoei

【「令和」の典拠】万葉集の“変な歌”セレクション
連載対談 中島京子の「扉をあけたら」 ゲスト:林家たい平