◎編集者コラム◎ 『徒目付 情理の探索 純白の死』青木主水
◎編集者コラム◎
『徒目付 情理の探索 純白の死』青木主水
小学館時代小説文庫が創刊されて早六カ月──。
当レーベルが自信をもって送り出す二人目の新人は、歴史系の記事を綴るライターという経歴を持つ、青木主水先生。
その青木先生の気になるデビュー作は、最後に大どんでん返しが待ち受ける、本格派の捕物帳です。
人情に厚い剣術遣いである望月丈ノ介と、かたや身体が弱いけれど、抜群の知恵者で甘味が好きな福原伊織という、徒目付の二人組が活躍する物語となりました。
なぜ一人じゃなくて二人組なのかというと、青木先生によりますと、徒目付は二人で役目を遂行しなければならないためなのだそう。
というのも、江戸幕府の役職に対して、幕臣の数が非常に多く、役に就けない者をちょっとでも減らそうという事情があるらしいのです。
これって、幕臣からしたら、「神様、仏様、徳川様」ではないでしょうか。
リストラや解雇といった言葉が聞こえない日はない現代サラリーマンからすれば、江戸時代は天国だったのかも? とさえ思ってしまいます。
ところが、実はもうひとつ理由がありまして、それは、「ひとつの役目に対し、一人の目だけではなく、二人の目を通すことで公正を期す」というもの。
江戸時代の徒目付の目には、現代の法律に携わる人たちがどのように映るのでしょう。
正義を行う人間は疑いの目を持たなければならない──徒目付は、そんな悲しき運命を背負っていますが、この丈ノ介と伊織は人情と道理で悪を裁いて、弱き者を救おうと大奮闘します。
ある日、上司である公儀目付の影山平太郎から、「小普請組前川左近の行状を調べよ」との命を受けた二人は、まずは聞き込みからはじめるのですが、近隣に住む誰もが、左近の双子の弟で、勘当された右近について話が及ぶと口をつぐんでしまうという、壁にはばまれます。
左近から口封じされていると見た丈ノ介は、状況を打開するため、ある秘策を考え付くのですが──。
この後の徒目付二人の活躍は、ぜひ手に取ってご確認下さいませ。
──『徒目付 情理の探索 純白の死』担当者より