やりきれなさが感動に変わる3冊
日々の生活の中で、やりきれない思いを感じることはございませんか? わかっているけど、認めたくない。そんなこと知ったこっちゃない。なんで自分ばっかり? など、そんな自分をもてあましていたら、この3冊を読んでみてください。やりきれなさが感動に変わるかもしれません。
『平場の月』朝倉かすみさんの新刊です。
「青砥」「須藤」と呼び合う二人は中年になって、再会した元同級生です。再会したのは病院の売店、須藤が勤務して、診察を受けにきた青砥が立ち寄ったのです。でも病に侵されていたのは、須藤の方でした。中学卒業から時を経て、二人のつきあいが始まりました。須藤が語る言葉のひとつひとつに重み・芯の太さを感じます。例えば「ちょうどよく幸せなんだ」です。過去に経験した苦い思いを乗り越えて呑み込んで消化した彼女は、例え病に侵されていても、近くにいる身内にも青砥にも頼らずに、自身のことは自分で決めます。互いに想いを寄せてはいても、頼る相手や時と場合は自分で判断できる須藤。彼女の最後の一言に胸を打たれました。
『ノースライト』横山秀夫さんの6年ぶりの新刊です。
警察ミステリではなく、一級建築士が謎を追います。なぜ新築の家に誰も住んでいないのか。施主に望まれて設計したY邸は、建築雑誌にも取り上げられるほどの会心の出来でした。なのに誰も住んでいない……。建築士の青瀬は施主の吉野一家の行方を追います。無人の家に残されていたのは「タウトの椅子」だけ。謎が明らかにされた時、心を揺さぶられました。この本が世に出るまでの長い歳月と、その間に起きた出来事にも感動します。
『木曜日の子ども』重松清さんの新刊には、読むことをためらうほどの衝撃があります。
酷いいじめを受け傷ついた一人息子を抱え、苦労する女性と結婚した「私」。一家は、7年前に無差別毒殺殺人が起きた中学校がある町に引っ越して来ます。息子晴彦が通うことになり、次々と信じがたい事態が「私」を襲います。息子を信じたい思いと、真実を知る恐ろしさの間で、身も心も砕けそうになります。妻にこれ以上の苦労をさせたくない夫、最愛の母に心配をかけるのを何としても防ぎたい息子。二人の息詰まるやりとりの先に何が起こるのか!