◉話題作、読んで観る?◉ 第23回「屍人荘の殺人」
監督:木村ひさし/脚本:蒔田光治/出演:神木隆之介 浜辺美波 葉山奨之 矢本悠馬 佐久間由衣 山田杏奈 大関れいか 福本莉子 塚地武雅 ふせえり 池田鉄洋 古川雄輝 柄本時生 中村倫也/配給:東宝
12月13日(金)より全国ロードショー
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ミステリー文学界の新人賞「鮎川哲也賞」を受賞、「このミステリーがすごい!」2018年度第1位に選ばれるなど、国内ミステリー賞を総なめした今村昌弘のデビュー作の映画化。本格的な謎解きに加え、従来の推理ものになかった特殊な設定を用いたことで話題を呼んだ原作を、神木隆之介、浜辺美波、中村倫也ら人気キャストを配し、幅広い層が楽しめる娯楽作に仕立てている。
大学で「ミステリ愛好会」に所属する明智恭介(中村倫也)と葉村譲(神木隆之介)は、難事件を次々と解決してきた美少女探偵の剣崎比留子(浜辺美波)に誘われ、ロックフェス研究会の夏合宿に参加することに。フェス研は昨年の合宿後に女子部員が失踪する騒ぎがあり、今年は合宿前に謎の脅迫状が届いていた。事件の匂いを感じた3人は、真相を探り始める。
謎解きの舞台となるのは、避暑地に建てられた古めかしい別荘「紫湛荘」。合宿初日から想像を絶する非常事態が起き、別荘は陸の孤島と化してしまう。さらには別荘内で密室連続殺人事件が発生。悠長に推理などできない状況ながら、葉村たちは密室の謎に挑む。
仲間由紀恵と阿部寛の迷探偵コンビが活躍した『TRICK』(テレビ朝日系)の脚本家・蒔田光治、松本潤主演ドラマ『99・9 刑事専門弁護士』(TBS系)の木村ひさし監督がタッグを組んでおり、原作よりもコメディ度はかなり高め。顔立ちの整った浜辺が白目をむくシーンが、なんともかわいらしい。
ミステリー用語でいうところのクローズド・サークル(外界から遮断された状況)に別荘が陥る特殊な設定は、パニック映画ではおなじみのものだが、本作は別荘内での謎解きがメインなこともあり、別荘の外は控えめな描写にとどまっているのが残念。とはいえ、アイデアは出尽くしたとされる密室トリックも、本作のような新趣向を盛り込むことでまだまだ可能性は広がりそうだ。
オダギリジョー主演のコメディミステリー『時効警察はじめました』(テレビ朝日系)が深夜枠ながら好視聴率を記録していることからも、多くの人が名探偵の名推理を待ち望んでいることが分かる。美少女探偵・剣崎比留子の今後の活躍に期待したい。
(文/長野辰次)
〈「STORY BOX」2019年12月号掲載〉