◎編集者コラム◎ 『闇という名の娘』著/ラグナル・ヨナソン 訳/吉田 薫

◎編集者コラム◎

『闇という名の娘』著/ラグナル・ヨナソン 訳/吉田 薫


闇という名の娘

「この世でいちばん最初の読者になれること」は、編集者の特権であり、最大の喜びでもあります。本書、『闇という名の娘』の日本語訳を読んだとき、このことを改めて痛感しました。

 読了後の感想はひとこと。「なんだこれ、ヤバい!」

 いやもう、編集者としての語彙力を疑われそうでお恥ずかしい限り。最後のページをめくったときの、これまで体感したことのない感情。「マジか……」と呟かざるを得ない、誰も予想ができない衝撃のラスト。未読の人には、ネタバレ厳禁! そして、読んだ人とだけ、この揺さぶられた心について話したい。そんな本です。

 著者、ラグナル・ヨナソン氏は、アイスランド在住の人気作家。日本では「アリ = ソウル」シリーズで邦訳デビューとなりました。極北の小さな街で起きる事件を、過去と現在を緻密に絡めた構成で描き、欧州では数多くの書評家から高い評価を受けています。

 満を持して刊行された新シリーズ第一弾が、本書『闇という名の娘』です。

 舞台はアイスランド、レイキャヴィーク。フルダ・ヘルマンスドッティルは警察官という仕事を実直に勤め上げ、六十四歳となった今、定年退職を数か月後に控えています。仕事に誇りを持ち、さまざまな事件解決に貢献してきた自負もありながら、“ガラスの天井”に出世を阻まれてきたことにモヤモヤしたものも抱えつつ、第二の人生をどう受け入れるか懊悩する日々。

 そんなある日、年下の男性上司から、二週間後に後輩にデスクを明け渡すよう突然の指示が。彼は、フルダをねぎらうような言葉をかけますが、それは早期退職の勧告でしかありません。あまりの理不尽に、期日までは捜査を続けさせるよう進言したフルダが開いたのは、未解決事件のファイルでした。二十七歳、難民認定申請中のロシア人女性が小さな入江で溺死しているのが発見された事件。彼女の死が、人々の記憶から薄れていくことに心を痛めたフルダは、単独で捜査に乗り出すことに。しかしそれは、フルダのあまりにも過酷な運命の扉を開けてしまうことになるのです。

 捜査活動の合間に挟まれる、シングルマザーの回想と、男女の冬山行が複雑な構成をなし、同時にベールを剥ぐように明らかになっていくフルダの過去。それらのエピソードが絶妙に絡み合い、ついに衝撃のエンディングを迎えます。読了後は、本書のタイトルに、あまりにも多くの意味が込められていることに気づくのではないでしょうか。

 大事なことなのでもう一度。未読の人には「ネタバレ厳禁!」で、お願いします。

(しかしながらこの読後感、誰かに話したくてしょうがなくなってしまうんですよね……)

──『闇という名の娘』担当者より
 
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