◎編集者コラム◎ 『そして陰謀が教授を潰した~青山学院春木教授事件 四十五年目の真実~』早瀬圭一
◎編集者コラム◎
『そして陰謀が教授を潰した~青山学院春木教授事件 四十五年目の真実~』早瀬圭一
本作とのそもそもの出会いは、2018年、週刊ポスト編集部にて私が担当していた新刊著者インタビュー連載での取材でした。
親本での作品名は『老いぼれ記者魂』。
元毎日新聞社会部記者で、大宅賞作家でもある著者が、青山学院大学を舞台に起きた「春木猛教授による女生徒強姦事件」の真相を追った執念のノンフィクションです。
ただ、タイトルに「記者魂」と入っていて、しかも「老いぼれ」という自嘲とも謙遜ともとれる言葉がついていたこともあり、「かつて第一線で取材を続けてきたベテラン記者が『最近の若い記者はなっとらん! 取材とはスマホで調べることではなく、こうやって愚直にやるものだ!』と説教する内容だったら、ちょっと怖いなぁ……」と、作品を読む前から内容に対して勝手なイメージを膨らませて、緊張していました。
実際読み終えると、当たり前ですが、説教などでは一切なく、著者の早瀬さんが現役記者時代からどこか腑に落ちずにいた事件の背景を丹念に調査する様子や、80歳を目前にしてなお自身の足で取材を重ねる「記者魂」そのものに触れ、インタビュー取材も大盛り上がりのうちに終えたのでした。
その後、本書の書評として、姫野カオルコさんによる原稿が『週刊文春』に掲載されたのですが、その内容は、著者取材をした私には伝わりすぎるほど伝わるものでした。
以下、引用します。
〈ハルキといえば、村上でも角川でもなく、この事件を真っ先に思い出す人がきっといる〉――そうなんですか!? 早瀬さんが取材で辿り着いた「真相」は、まだまだ大勢に読んでもらいたい!
〈タイトルは地味きわまりなく、「なんでこんなタイトルにしたんだよ」とさえ腹が立ってくる〉――やっぱりそこ、気になりますよね!? でも早瀬さんがこのタイトルにした意味も分かるだけに、悩ましいんですよね……!
……と、脳内で姫野さんと会話するうちに、この作品が扱っている事件がいかに重要なものだったのかを遅ればせながら噛みしめ、そして本書の重大性に比してタイトルの謙虚さが読者を狭めてしまっていてもったいないと、感じるように。
今回、縁あって文庫化を私が担当させていただくことになった際は、最初にまず早瀬さんには改題についてご相談しました。
しかし、著者にとって、作品タイトルは苦労して産んだ我が子の名前。簡単に変えられるようなものではありません。
こちらも「ひよっこ編集者魂」を賭してご相談を重ね、『そして陰謀が教授を潰した』という改題に至りました。ぜひ、タイトルの意味を咀嚼しながらお読みください。
また本書の解説文は、姫野カオルコさんに寄稿いただきました。本稿と合わせて解説文もぜひお楽しみください。
──『そして陰謀が教授を潰した』担当者より
『そして陰謀が教授を潰した
~青山学院春木教授事件 四十五年目の真実~』
早瀬圭一