◎編集者コラム◎『仕掛け絵本の少女』堀川アサコ
◎編集者コラム◎
『仕掛け絵本の少女』堀川アサコ
小学館文庫初登場の堀川アサコ先生。
今回の書き下ろし新作『仕掛け絵本の少女』は、堀川先生の代表作である「幻想」シリーズにも通じる日常とファンタジーの融合世界であり、中学生女子(と、へんてこりんな魔法少女)の青春ロードムービーでもあります。
とにかくヒロイン(というよりも被害者?)の小寺音々ちゃんが等身大中学生かつ的確なツッコミ役すぎて、読み始めるとニヤニヤが止まりません。読者に多い(はずの)アラサー・アラフォー・アラフィフ女子の心の中に常駐する〈中2女子魂〉みたいなものが、ネネちゃんがぼやく地の文の随所に「あるあるあるー」と共感してしまう仕掛けなのです。
そして、何より強烈なのが、錬金術師を自称する「仕掛け絵本から飛び出してきた少女・カイ」の存在。カイは不思議理論で周囲を振り回す、台風の目のような女の子です。口癖は「歯ぁ食いしばれ!」の根性論の体育会系女子なのです。さしずめ「魔法少女(物理)」といったところでしょうか……。
イラストレーターの六七質(むなしち)さんが描くカバーイラストのドヤ顔カイは、あまりにイメージがぴったりすぎて堀川先生が「すごい、リアルカイがいる!!」と絶叫してしまった1枚。このカバーは帯の下に隠れているところまですごい仕掛けになっていて、緻密なイラストを見ながら読みすすめると、ここに描かれている「仕掛け絵本」のモチーフが、完璧に物語を再現していることがわかります。
本文には当然挿絵がないのに、カバーが挿絵も兼ねてしまうという、六七質さんの脅威のイラストパワーもぜひご堪能ください。
また、わかる人だけわかってしまうポイントして、このお話は〈仙台〉が舞台になっていることにも注目です! 堀川先生は会社員時代、仙台でお勤めだったとか。それで今回、愛する仙台の街をネネやカイが活躍する場として選んだのだそう。そして仙台といったら、かの有名な隻眼の戦国武将も……もちろん出てきますので、歴女の皆様も要チェックです!
さて、ここでこぼれ話を。
『仕掛け絵本の少女』には、堀川先生のひそかな〈こだわり〉がいくつも隠されています。
そのうちのふたつをここでコッソリ情報開示いたしますと……。
(1)文庫の背の色は、堀川先生イチオシの色!──小学館文庫の背の色は著者別になっています。初登場の堀川先生が「これ!」と選んだのはちょっと不思議な黄金色。これは『仕掛け絵本の少女』の作中に登場する金銀島のイメージカラーなのです。
(2)物語冒頭のとってもほほえましい、おじいちゃんとネネの「桜肉」のくだり。あれは堀川先生と在りし日のお祖父様との思い出そのまま、ほぼ100%実話なのだそうです。「当時5歳くらいだったんですけど……自分の好物を買ってもらえなくて大泣きした記憶は今でも鮮明です。食べ物の恨みって怖いですね(笑)」と堀川先生。
では最後に、堀川先生からひとこと。
「元気な中学生たちが、全力で冒険している物語です。これは小説の形をした〈遊び〉です。日頃の悩みやうまくいかないことは横へどかして、何も考えずにただ楽しく読んでいただけたら幸いです」
皆さんも、小学館文庫で最高の〈冒険の書〉を手に入れてください!