ホラー? サスペンス? 不思議で哀しい耽美な翻訳小説集めました

『蝶のいた庭』(ドット・ハチソン著)は、ここ数年で一番のお気に入りです。
書店員名前
ジュンク堂書店三宮駅前店(兵庫) 荒木遥香さん

 翻訳小説ってちょっと難しそうで手に取りにくいイメージがありませんか? でも読まないと勿体ない名作がたくさんあります。私の志向に刺さった作品の中からなるべく読みやすいものを選びました。

『丘の屋敷』シャーリイ・ジャクスン

丘の屋敷

創元推理文庫 定価:760円+税

 知る人ぞ知る古典ホラーの金字塔。幽霊屋敷の調査という名目で丘の屋敷に集められた男女4人。休みなく起きる怪奇現象にじわじわと追い詰められてゆくが、本当に恐ろしいのは幽霊なのだろうか? だんだん読んでいる文字がゆがんでいくような、綿で首を絞められるような優しい狂気と恐怖が読者を蝕みます。

『ぼくが死んだ日』キャンデス・フレミング

ぼくが死んだ日

創元推理文庫 定価:900円+税

 舞台は幼くして亡くなった子どもたちが埋葬される墓地。少年少女たちは自分が死んだ日のことを次々と主人公に語っていく。語られる死んだ日の話は、オカルトチックな呪いの話や友達を守って身代わりになった話、クラスメイトに騙された話、殺された話。ノスタルジックで奇妙で、少し悲しい。みんなどうしようもないけど、受け入れているけど自分の死の話を誰かに知ってほしい。

 とても読みやすく短い本です。読み終わるのがもったいなくて、何度も途中で本を閉じてしまいました。まだまだ続きが読みたい一冊です。

『蝶のいた庭』ドット・ハチソン

蝶のいた庭

創元推理文庫 定価:1200円+税

 蝶を採取して標本にするように、美しい少女たちを拉致しては自身の作り出した庭へ監禁する男《庭師》。そんな監禁事件の被害者の1人、マヤの口から紡がれる事件の全貌。監禁されてきた少女たちはまず背中に蝶の墨を入れられる。そして一定の年齢を迎えると殺され、標本のように美しいままケースに飾られるのだ。

 グロテスクな内容のはずなのに、とても美しく幻想的で哀愁漂う描写で綴られています。囚われた少女たちのお互いを支えあうひっそりとした連帯感、運命と向き合う真摯な姿勢に心打たれます。作品のゴシックな雰囲気に呑まれ一気に読むこと間違いなしです。私はここ数年読んだ本の中でこちらが一番のお気に入りです。

 私は環境または心理的に閉鎖された空間で起こる出来事や、その中で移りゆく人間関係を描いた作品が大好物です。ご紹介した中に誰かの心に刺さる作品がありましたら幸いです。

〈「きらら」2019年11月号掲載〉
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